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更新日:2026 / 02 / 27
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同一労働同一賃金の待遇差をどう整理するか|社労士 久保田慎平の視点

非正規雇用との待遇差を「説明できる状態」にするために確認すべき前提

この記事への視点を提供する社労士

    社会保険労務士 久保田 慎平 (社会保険労務士法人GOAL/神奈川県川崎市川崎区)

以下に紹介するのは、同一労働同一賃金ガイドラインの改正に関する報道です。制度改正の内容を確認したうえで、後段では企業実務の視点から考えていきます。

改正同一賃金指針 記載拡充し10月施行――厚労省

厚生労働省は、非正規労働者の待遇を改善するため、同一労働同一賃金ガイドラインや関係省令を改正し、今年10月に施行する方針だ。1月20日に開いた労働政策審議会の分科会で明らかにした。改正は、労政審同一労働同一賃金部会の報告を受けたもの。同ガイドラインでは、働き方改革関連法施行後の裁判例を踏まえ、家族手当や住宅手当などに関する原則的な考え方を追加。省令では、待遇に関する労働者への説明義務の運用改善を図る。雇入れ時の労働条件明示事項に、「正社員との待遇の相違などに関する説明を求めることができる」旨を盛り込む。

記事提供:労働新聞社

- 記事提供企業 -

 
今回の改正は、同一労働同一賃金をめぐって「どう説明するか」を、あらためて整え直す動きといえます。ここからは、待遇差の理由づけについて、実務のどこでつまずきやすいのかを見ていきます。

雇用区分の本質を理解したうえで待遇差を判断する

この記事はガイドライン改正の内容を伝えるものですが、企業の現場で問題になるのは、正規雇用と非正規雇用をどのような考え方で区分しているかという点です。待遇差があるかどうかということよりも、その差が職務内容や配置転換の範囲、責任の程度と結びついているかが、より具体的に問われることになります。

本来であれば、正規雇用労働者と非正規雇用労働者の間には、職務や責任の違いがあり、その違いに応じて待遇差が設けられることが想定されています。しかし実際には、日々の業務がほとんど変わらず、役割や期待水準も重なっているケースが少なくありません。その状態で雇用区分だけが形式的に分かれていると、待遇差の合理性を説明することは難しくなります。

今回、雇入れ時に「正社員との待遇差の説明を求めることができる」と明示されたことは、採用の段階から区分の理由と待遇の違いを言葉で示すことが求められるという意味を持ちます。就業規則や賃金規程が整っているかどうかだけでなく、なぜその雇用区分で採用し、なぜその待遇になるのかを一貫して説明できるかが重要になります。

また、形式的に非正規雇用、とりわけ有期契約にしておけば柔軟に雇止めできるという誤解があるならば、雇用形態の選択自体がリスクにつながります。雇用区分の実態と制度上の位置づけがかみ合っていないと、同一労働同一賃金の問題だけでなく、更新判断や契約終了をめぐる紛争にも発展しかねません。

非正規雇用であるという形式だけを理由に待遇差を設けることは認められません。重要なのは、区分の本質的な違いがどこにあるのかを明らかにし、その違いに沿った待遇となっているかを確認することです。

企業が最初に意識すべきなのは、規制を避けるために後付けで理由を整えることではなく、正規雇用と非正規雇用の役割や責任の違いをあらためて見直すことです。その結果として、合理的に説明できる待遇差であれば維持すればよく、説明が難しいのであれば差を設けないという選択もあります。

同一労働同一賃金は、差の理由が職務や責任と結びついているかを確かめる枠組みです。今回の改正を機に、いま一度、採用から配置、評価、手当に至るまで、区分の前提が現場でずれていないか、ずれているならどこでずれたのか。その確認を積み重ねておくと良いでしょう。

執筆者

久保田 慎平

神奈川県

社会保険労務士法人GOAL
【プロフィール】
1983年8月横浜生まれ、横浜育ち。2011年4月に都内の社会保険労務士事務所へ入職、4年間の実務経験後、2015年4月独立開業。2018年9月に行政書士法人GOALと合流し、社会保険労務士法人GOALを設立。

東京・神奈川・埼玉・千葉の中小企業を中心に企業型DC(確定拠出年金)導入支援や人材の採用・定着支援、クラウドシステム導入支援、労務トラブル防止、企業研修による人材育成に力を入れている。就業規則の関与実績約300件以上、商工会議所や金融機関等のセミナー講師、執筆も実績多数。


【略歴】
2011年 4月 社会保険労務士事務所エスパシオ入職
2014年11月 社会保険労務士試験合格
2015年 4月 社会保険労務士事務所人事労務アシスト設立(独立開業)
2018年 9月 社会保険労務士法人GOAL設立(法人化)
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