カスハラ対策による企業のリスク管理と従業員保護|社労士 小前 和男の視点
効果的なカスハラ対策の実施とリスク管理の最適化
この記事への視点を提供する社労士
- 社会保険労務士 小前 和男 (社会保険労務士法人あかつき/東京都千代田区)
日本コンタクトセンター協会(CCAJ)が導入した「カスタマーハラスメント対策推進企業認定制度」は、企業が従業員を守るための外部基準として、業界全体の職場環境改善を促進するための重要なステップです。本稿では、この外部基準に基づく制度が企業に与える影響を、社労士の立場から考察し、実務に即した課題と対応策を整理します。
カスハラ対策で認定制度――CCAJ
自社製品・サービスのためにコールセンターを設置・運営する企業や、センター業務を受託する企業など246社を会員とする(一社)日本コンタクトセンター協会(=CCAJ、呉岳彦会長)は、業界全体の職場環境改善・魅力向上を図るため、「カスタマーハラスメント対策推進企業」の認定制度を開始した。基本方針の公開や対策責任者の選任、相談窓口の設置など9項目の誓約を要件とし、初回は15社を認定している。認定企業には認定マークを付与し、公式サイトで企業名を公表するほか、会員企業の総務・法務担当者で構成する総務委員会が各種の相談を受け付ける。
記事提供:労働新聞社
- 記事提供企業 -
カスハラ対策推進企業認定制度は、従業員の保護を目的とした外部基準を提供する重要な取り組みですが、企業がこれを実際の運用にどのように落とし込むかが、成功の鍵を握ります。現場での理解と実践が伴わなければ、制度は形式的に終わり、期待通りの効果を発揮しないこともあります。この課題にどう取り組むべきか、社労士の視点から整理していきます。
カスハラ対策を浸透させる企業文化の構築
外部基準として設定されたカスハラ対策認定制度は、企業が従業員を守るための重要な指針となります。この際に、現場で制度をどのように適用し、運用するかが最も大きな課題となります。
制度を設けることは重要ですが、それが現場で適切に理解され、実行されるためには支援体制の整備が欠かせません。カスハラの問題はしばしば対人トラブルとして発生することから、その内容を一様にマニュアルのようにして文書化しづらいという側面があります。この際に、適切に対応するための基準を現場でどのように運用するかが課題となります。
もしカスハラとなる基準が明確でない場合、従業員は問題をどう認識し、報告するべきかを判断できず、リスクが発生した際に適切な対応が遅れることがあります。運用が追いつかないと、最終的には制度が形骸化し、効果的に機能しなくなります。これにより、対策の実行が遅れ、企業にとって重要なリスクが見過ごされる可能性が高くなります。このことから企業は対策を形式的に整備するだけでなく、その運用方法を明確にし、報告体制を確立することが重要です。
また、従業員が問題を報告しやすい文化を作ることも重要な要素です。報告体制が整っていないと、従業員が問題を訴える際に不安を感じ、報告しづらくなります。この不安が従業員の行動にブレーキをかけ、問題が表面化しないまま放置されることがあります。こうした状況では、問題が深刻化する前に対処する機会を逃すことにも繋がりかねません。これを防ぐために、企業は問題を報告した従業員が不利益を被らないよう、制度を支える文化を根付かせる必要があります。こうした環境が整うことで、カスハラに対する早期対応が可能になります。
企業がまず取り組むべきは、カスハラ対策の基本方針を明文化し、従業員がその基準を日々の業務で適用できるよう支援することです。基準が整備されているだけでは不十分で、現場でどう運用するかが重要です。これは従業員が自信を持って対応できるようにするための第一歩です。また、対策を企業文化として定着させ、従業員全員がその意義を理解し、実践することが求められます。
企業が従業員を守るためには、単にリスク対策を取るだけでなく、「従業員を大切にする」という姿勢を全社的に浸透させることが不可欠です。この姿勢が根付くことで、従業員は自信を持って業務に取り組み、問題を迅速に報告することができます。このような文化は、リスクを早期に発見し、適切に対応できる企業へと導きます。結果的に、従業員保護を強化し、企業全体の成長と持続的発展に繋がるでしょう。

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