フリーランス法のハラスメント対策、運用漏れを防ぐ実務点検|社労士 田邉勇輝の視点
取引関係に広がる防止措置義務とコンプライアンス体制の再設計
この記事への視点を提供する社労士
- 社会保険労務士 田邉 勇輝(タナベ労務管理事務所/栃木県栃木市)
以下は、フリーランス法の施行後、行政が就業環境整備のどこに着目しているかを伝える記事です。まずは引用記事をご確認ください。そのうえで、企業側の運用で抜けやすい点を整理します。
フリー法違反 ハラスメント対策が突出――東京労働局
東京労働局(増田嗣郎局長)は、施行から1年を迎えたフリーランス法の指導状況について、就業環境整備に関する規制のうち、ハラスメント関連の指導が「圧倒的に多い」と明かした。フリーランス向けの相談窓口を整備したが周知していないなど、「対応したつもりでいても抜け落ちている違反が多い」という。同法を含め、労働施策総合推進法などハラスメント対策を求める4つの法で、相談担当者の変更し忘れなど、企業が見落としがちな25項目のチェックリストを作成し、周知を図っている。
記事提供:労働新聞社
- 記事提供企業 -
引用記事が示しているのは、フリーランス法におけるハラスメント対策が、制度の有無よりも「実際に機能しているか」で評価されているという点です。ここからは、運用面でつまずきやすい論点を整理します。
労働者向けの延長では埋まらない、取引関係ならではの運用の抜け
今回の指導状況は、制度の理解不足というよりも、基本的な整備の抜けが積み重なっている実態を示しています。とくに重要なのは、「対象範囲」と「周知の実効性」です。規程の中でハラスメントを定めていても、対象を労働者に限定した記載のままになっていないか。フリーランスを含むことを明記しているか。抽象的に「取引先等」と記しているだけで足りると考えていないか。このあたりは見落とされやすいポイントです。
また、周知の方法も問われます。イントラネット掲載だけで済ませていないか、端末を持たない現場や外部のフリーランスに実際に届く方法になっているか。新たに契約したフリーランスに対し、契約締結時や業務開始時に明示的に伝える仕組みがあるか。過去に一度研修を実施しただけで、その後更新されていないという状態も、実効性の観点では弱いと言わざるを得ません。
相談窓口についても、「設置している」ことと「機能している」ことは別問題です。担当者の退職や異動後に更新されていない、内部通報窓口はあるがハラスメントを対象として明確にしていない、受付後の対応フローや記録方法が定まっていない――こうした状態では、実質的な相談体制とはいえません。加えて、プライバシー保護や不利益取扱い禁止の対象にフリーランスや協力者を含めているかどうかも重要です。ここが曖昧だと、安心して相談できる環境とはなりません。
取引関係の現場では、業務指示や納期調整、品質への指摘、報酬の協議といった場面に強い言動が混在しやすく、それがハラスメントに該当するかどうかの判断が曖昧になりがちです。しかし、相談があった場合には、事実確認、被害者への配慮、行為者への措置、再発防止までを一連で実施する必要があります。ハラスメントが確認できなかった場合であっても、再発防止策を検討する姿勢が求められます。
フリーランス法のハラスメント対策は、新たな制度を積み上げる作業というより、既存の体制を「取引先まで含めて機能させる」再設計の問題です。形式的な整備に安心せず、対象範囲・周知方法・相談体制・事後対応が一本の流れとして回っているかを点検することが、実効性あるコンプライアンスにつながります。

2004年の開業依頼、社会保険労務士、行政書士として、地域の経営者の皆さまと共に歩んで参りました。
私は常に心がけているのは「頼んでよかった」と言っていただける安心感と満足感をお届けすることです。そのために日々研鑽を重ね、法律知識や実務ノウハウを磨き続けております。
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