営業代行の労働者性判断で確認したい外注リスク|社労士 村松 貴通の視点
業務委託のつもりでも、運用次第で労働契約と見られる点を確認する
この記事への視点を提供する社労士
- 社会保険労務士 村松貴通(社会保険労務士法人村松事務所/静岡県浜松市浜名区)
この記事を読んで分かること
- 営業代行を外注で使う際、契約名より実際の拘束の強さが重く見られることが分かる
- 勤務時間や業務の進め方への関与が、業務委託の前提を崩す流れを整理できる
- 現場管理者と経営者が外注の趣旨を共有していないリスクに気づける
人件費や社会保険料の負担が重くなるなかで、雇用ではなく外注を活用したいと考える企業は少なくありません。もっとも、営業代行のように成果を期待する業務では、契約上は外注としていても、実際には会社の指示や時間の拘束が強くなりやすく、その実態が労働者性の判断につながります。東京地裁が営業代行サービスをめぐって労働者性を認めた今回の記事は、その点を考える材料になります。
営業代行の労働者性認める
営業代行サービスを営む東京都内の会社から営業代行業務を請け負っていた男性が、契約解除などを不服とした裁判で、東京地方裁判所(黒木裕貴裁判官)は男性の労働者性を認定し、同社に200万円のバックペイ支払いを命じた。契約により男性は1日8時間、週5日間の業務従事を義務付けられていたと指摘。時間的拘束性の程度は強度であり、両者の契約は有期労働契約と認めるのが相当とした。男性は業務委託契約を前提に訴訟を進めていたが、途中で労働契約とする主張に変えていた。
記事提供:労働新聞社
- 記事提供企業 -
営業代行という名称より、1日8時間、週5日という従事のさせ方に目を向けると、別の見え方が出てきます。ここで整理したいのは、外注を使ったことの是非ではなく、外注として扱う以上は何を会社が決め、何を本人の裁量に委ねるのかという線引きです。
外注として使うつもりでも、働かせ方が雇用に近づいていないか
営業代行を業務委託で依頼すること自体は、企業実務では珍しくありません。背景には、人件費や社会保険料など広い意味での人件費を抑えたいという事情もありますし、必要な業務を機動的に任せたいという考えもあります。けれども、その発想で外注を選んだとしても、実際の運用まで雇用と同じになってしまえば、契約の形式だけでは支えきれなくなります。
今回の記事で重く見たいのは、業務委託という契約名そのものではなく、1日8時間、週5日という拘束の強さです。勤務時間や従事日数を会社が強く決めれば、外注先に仕事を頼んでいるというより、社員と同じように働かせている実態として見えやすくなり、後から労働契約とみなされ、賃金請求や契約解除の有効性が問題になり得ます。
ここで難しいのは、契約時点では外注として整理していても、日々の運用の中で少しずつ雇用に近い扱いへ寄っていくことです。営業の仕事は成果が見えやすい分、会社としても進捗を確認したくなりますし、一定のやり方を求めたくもなります。そのため、外注で依頼しているつもりでも、いつの間にか指示の出し方や管理の仕方が社員向けの運用に近づいてしまうことがあります。
とくに営業の現場では、成果を上げてもらうために、会社が業務の進め方まで細かく指示したくなりがちです。もっとも、営業会議への参加を求めたり、始業終業を決めたり、報告の頻度まで細かく管理したりすると、外注というより労働者に対する指揮命令に近づいて見えやすくなります。
さらに実務では、人事担当者が外注と雇用の違いを理解していても、それだけでは足りない場面が多くあります。実際に日々のやり取りを行うのは現場の管理者ですし、そもそも外注をどう使うかの方針を決めるのは経営者だからです。人事だけが分かっていても、現場が社員と同じ感覚で指示を出し、経営者もその違いを十分に意識していなければ、運用は実態のほうに引っ張られます。
そのため企業が最初に意識したいのは、現場の管理者に外注の趣旨をきちんと伝え、経営者自身もしっかり理解しておくことです。人事担当者しか分かっていない状態では、営業の指示、勤務時間の扱い、報告の求め方といった日々の運用で、雇用に近い扱いへ流れやすくなります。
この問題は、契約書を整えれば足りるというものではなく、誰がどこまで関与してよいのかを会社の中でそろえておく必要がある、という話でもあります。外注として任せるなら、働き方まで細かく拘束しないという前提を、経営者、管理者、人事の間で共有しておかなければ、現場では成果を優先する動きが先に立ちやすいからです。そうした認識のずれが積み重なると、外注のつもりで始めた仕事が、後から労働者性の問題として表面化することになります。
もちろん、個別の事案は事実関係によって見え方が変わりますし、今回の裁判例だけで一律に結論づけることはできません。それでも、外注として使っている業務について、会社がどこまで拘束しているのか、またその前提を経営者と現場管理者まで含めて共有できているのかは、後から説明できる状態になっているかという意味で、一度確かめておきたいところです。

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