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更新日:2026 / 04 / 30
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懲戒処分と注意指導の注意点|社労士 青木 幸江の視点

労働組合活動の事例から考える管理職の指導と改善機会

この記事への視点を提供する社労士

    社会保険労務士 青木幸江(社会保険労務士法人Aoki/東京都中央区)

この記事を読んで分かること

  • 勤務時間中の組合活動について、就業規則や労使間の取り決めとの関係を整理できる
  • 注意指導の履歴が、懲戒処分の前提を説明する材料になることが分かる
  • 黙認と受け取られないために、本人へ何を伝えるべきかが見えてくる

勤務時間中の組合活動をどう扱うかは、就業規則、労使間の取り決め、勤務時間中の協議・交渉を認めているかによって変わります。人事労務担当者がその内容を把握していても、上司が十分に把握しないまま注意指導の機会を逃すと、本人は黙認されていると受け止める可能性があります。大阪地裁が「5カ月以上離席を止めなかった」と指摘した事案を、引用記事で確認します。

注意指導経ない懲戒は無効

大阪府門真市の職員2人が勤務時間中の組合活動を理由とする減給・戒告処分の取消しを求めた裁判で、大阪地方裁判所(中島崇裁判長)は注意指導を経ない処分であり無効とする判決を下した。勤務時間中の従事が認められた適法な組合活動でない可能性を把握していたにもかかわらず、同市は5カ月以上離席を止めなかったと指摘。職員らは勤務時間中の組合活動は黙認されていると認識しており、同市は放置すれば活動が継続すると知っていたとした。職員らの認識を是正する機会を与えず、非違行為を重ねるのを待って懲戒処分に及んでおり、信義則に反すると判断している。
記事提供:労働新聞社

- 記事提供企業 -

 

引用記事では、勤務時間中の組合活動を理由とする減給・戒告処分について、注意指導を経ない処分であり無効と判断されています。実務で受け止めたいのは、組合活動への対応そのものだけではありません。問題になり得る行為を把握した後、上司や人事労務担当者が本人にどう伝え、改善の機会を与えていたかという点です。

注意指導の履歴から考える懲戒処分と改善機会

勤務時間中の組合活動をめぐる今回の判決は、組合活動だけの特殊な事例としてではなく、懲戒処分に進む前の注意指導のあり方として読むことができます。会社や自治体が問題になり得る行為を把握したとき、本人へどの時点で伝え、どのように改める機会を設けたのかが、後の懲戒処分の適否の判断に関わってきます。

労働組合活動については、正当な活動を理由とする不利益取扱いは認められません。一方で、勤務時間中の活動が常に認められるわけでもないため、就業規則、労使間の取り決め、使用者との協議・交渉に当たるかどうかを確認する必要があります。

勤務時間中の組合活動を問題として扱う前に、人事労務担当者は就業規則や労使間の取り決めを確認する必要があります。上司が取り決めを把握していなければ、本人に何を伝えるべきかが曖昧になり、結果として注意指導が行われないまま時間が過ぎることがあります。

記事で重い意味を持つのは、市が適法な組合活動でない可能性を把握しながら、5カ月以上離席を止めなかったとされた点です。職員側は勤務時間中の組合活動が黙認されていると認識しており、その認識を正す機会がないまま処分に至ったことが、信義則との関係で問題になりました。

注意指導の履歴は、単なる記録ではなく、会社側がどの段階で問題を伝えたかを示す材料になります。口頭注意や面談の内容が残っていなければ、懲戒処分を行う場面で、本人に改善の機会を与えていたことを説明しにくくなります。

この点は、遅刻、無断離席、業務命令違反など、一般的な服務上の問題にも通じます。上司が行為を見ていても、注意する基準や人事労務担当者への相談手順が共有されていなければ、本人には会社側の問題意識が伝わらないまま、同じ行為が繰り返されることがあります。

黙認と受け取られないためには、問題に気づいた時点で、どの行為が問題になるのか、今後どう改めてほしいのかを本人に伝えることが大切です。早い段階で対話をしておけば、会社側が放置していたのではなく、認識のずれを正そうとしていたことを説明しやすくなります。

そのためには、上司が労使間の取り決めを知らないまま現場で判断しないよう、人事労務担当者がルールの内容と注意指導の進め方を共有しておく必要があります。組合活動に関わる場面では、不当労働行為と受け取られない配慮も求められますが、何も伝えない状態が続けば、黙認していたと受け取られる余地が大きくなります。

黙認は、ルールの正当性を弱めてしまう対応になりかねません。問題に気づいたその時点で、本人に改善の機会を与える対話を行い、認識のずれを正しておくことが、懲戒処分に至る前の日頃の労務管理として確認しておきたい点といえます。

執筆者

青木 幸江

東京都

社会保険労務士法人Aoki
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