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更新日:2026 / 03 / 30
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キャリアコンサルタントに求められる役割から企業のキャリア形成支援を考える|社労士 矢萩 大輔の視点

キャリア形成支援を人事制度運用と対話の場面から確認する

この記事への視点を提供する社労士

    社会保険労務士 矢萩大輔(有限会社 人事・労務/東京都台東区)

この記事を読んで分かること

  • キャリア面談を仕事だけで捉える危うさと、配置や両立支援への影響が分かる
  • キャリアコンサルタントの視野の差が、相談運用や育成施策に及ぼす影響を整理できる
  • 対話の機会が、異動や育成の判断を事前にすり合わせる役割を持つと分かる

評価面談や1on1では、本人の希望をどう受け止めるかが、異動や育成の判断に影響します。
今回の引用記事は、キャリアコンサルタントに求められる役割を扱っていますが、企業実務の視点で読むと、社内のキャリア形成支援をどう機能させるかという論点として捉えることができます。以下では、引用記事が触れている厚生労働省の「経済社会情勢の変化に対応したキャリアコンサルティングの実現に関する研究会」報告書も踏まえながら、論点を見ていきます。

キャリアコンサルタント 企業の理解促す能力が必要

厚生労働省は、「経済社会情勢の変化に対応したキャリアコンサルティングの実現に関する研究会」の報告書を公表した。企業や労働者を取り巻く環境が変化するなか、キャリアコンサルタントに必要な能力について提言している。企業においてキャリア形成を促進していくためには、労働者の自律的・主体的なキャリア形成の重要性に対する企業の理解を促す能力が欠かせないと指摘。職場の課題を把握・分析し、経営層や人事部門への提案を関係部門と競業しながら行う能力や、キャリア形成支援に向けた環境づくりに関する能力も求められるとした。
記事提供:労働新聞社

- 記事提供企業 -

 

引用記事が挙げているのは、労働者の自律的・主体的なキャリア形成を企業がどう理解するかという論点です。
さらに引用記事は、経営層や人事部門への提案や環境づくりの必要性にも触れており、個人支援にとどまらず、企業の人事運用にどうつなげるかという視点も示しています。
以下では、その点を踏まえて、キャリア形成支援を組織運営と人事制度の接点から整理します。

キャリア形成支援を組織運営につなぐと何が見えるか

厚生労働省の報告書は、キャリアコンサルタントに必要な能力を示したものですが、企業実務に引き寄せると、資格の話というより、企業が社内でキャリア形成支援をどう機能させるかという組織運営の話として読めます。配属、異動、1on1、両立支援の場面で、社員の考えをどう受け止めるかという論点につながってくるからです。

報告書では、労働者の自律的・主体的なキャリア形成の重要性について、企業の理解を促す力が必要だとされています。ここでいうキャリア形成を仕事や職場だけで狭く捉えると、育児や介護、病気、人生観の変化が判断の前提に入らず、配置や両立支援の場面で見立てを誤りやすくなります。社員の選択を生き方や暮らし全体の中で捉える視点があってこそ、人事制度や面談運用も実情に沿って組み立てやすくなります。

もっとも、現場では「キャリアの相談」と聞いても、一歩を踏み出しにくい社員は少なくありません。評価への影響を気にしたり、話しても理解されないと感じたりすると、相談機能は存在していても使われにくくなります。

加えて、キャリアコンサルタントごとに視野や世界観の広さが異なれば、受け止められる悩みの幅にも差が出ます。同じ異動の迷いや働き方の悩みであっても、仕事上の希望だけで受け止めるのか、本人の生活や価値観まで含めて捉えるのかによって、面談で見える課題は変わります。こうした見立ての違いは、面談の質だけでなく、人材育成施策や社内相談窓口の設計にも影響します。そのため企業が能力要件を考えるときは、知識量だけでなく、社員の事情や価値観を踏まえて話を聴けるかどうかも重要になります。

実務で迷いやすいのは、異動をためらう社員や昇格を辞退する社員を前にした場面です。事情を十分に受け止めないまま、意欲の問題として処理してしまうと、OJTの与え方や配置判断が一律になり、本人にも職場にも負担や認識のずれが残ります。キャリア支援は単なる付随業務ではなく、人事判断に必要な情報を整えるプロセスとして見る必要があります。

その意味で、企業が最初に意識したいのは、社員が自分のキャリアや生き方を自ら考え、それを周囲と共有できる機会を途切れさせないことです。定期面談や1on1の中で、仕事の希望だけでなく暮らしの事情や価値観にも触れられる関係があれば、異動、育成、両立支援の判断は早い段階で方向性をすり合わせやすくなります。制度を増やす前に、どのような前提で対話し、その内容を誰が人事施策に反映させるのかを確認することが、運用の出発点になります。

今回の報告書は、企業への働きかけだけでなく、キャリアコンサルタント自身のあり方も映しているように見えます。すぐに理想形を整えるのは難しくても、自社のキャリア形成支援が仕事の話だけに閉じていないか、そして社員自身が考えた内容を配置や育成の判断にどうつなげているかを見直すことが、実務を見直す手がかりになるはずです。

執筆者

矢萩 大輔

東京都

有限会社 人事・労務
私達のコンサルティング手法は、人事制度・キャリアの専門技術と30年間で出会った500社を超える社長さんやリーダーの方々の体験、そして人生の成功哲学の3つをベースに編み出した社員満足(ES)を高める弊社だけのオリジナルプログラムです。また、350社以上の導入実績を誇る人事制度・賃金制度設計ソフト「賃金士」は産学共同で開発し、企画・開発した従業員満足(ES)診断ソフト「人財士」は第34回日本経営システム学会でも発表されました。ES(従業員満足)トレーナー制度や社内ルールクリエイターなど組織活性化のための新しい施策の普及活動を目指し高く評価されています。

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