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更新日:2026 / 03 / 30
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ストレスチェック実施後に問われる安全衛生体制|社労士 久保田 慎平の視点

ストレスチェック実施後の扱いを安全衛生体制の中で整理する

この記事への視点を提供する社労士

    社会保険労務士 久保田慎平 (社会保険労務士法人GOAL/神奈川県川崎市川崎区)

この記事を読んで分かること

  • 衛生委員会の審議記録が、どのような意味を持つのかが分かる
  • ストレスチェックを休職予防と組織運営にどうつなげて考えるかが整理できる

ストレスチェックの報告状況が低調であるという今回の記事は、その状況そのものよりも、報告がない事業場に対して何が行われるのかに着目したい内容です。個別指導では、衛生委員会の審議記録の提出を求めるなど、安全衛生管理を広く調査するとされています。まずは引用記事を確認します。

ストレスチェック 報告低調受け危機感

神奈川労働局(児屋野文男局長)は、ストレスチェック実施後の報告状況が低調なことに危機感を抱いている。令和6年は、報告のあった事業場が前年比で約400件減少しており、このほど、報告を呼び掛けるリーフレットを作成した。報告がない事業場には優先的に個別指導を展開していく。個別指導では、衛生委員会の審議記録の提出を求めるなど、事業場の衛生管理体制を広く調査する。

記事提供:労働新聞社

- 記事提供企業 -

報告の有無だけでなく、安全衛生体制全体が確認対象となる点に、この動きの特徴があります。では、ストレスチェックの実施後は、安全衛生の中でどのように扱われていることが前提となるのでしょうか。

ストレスチェックは「実施後の扱い」で意味が変わる

ストレスチェックは、実施して終わる制度ではなく、高ストレス者への対応や集団分析の活用といった実施後の取扱いまで含めて設計されています。したがって、安全衛生の取組みとして位置づけるのであれば、結果が必要なメンバーに共有され、有効的な活用を検討されているかが重要になります。

しかしながら、実務では「実施」と「その後の扱い」が分かれてしまいやすい側面があります。ストレスチェック自体は定例業務として進められる一方で、その結果をどの程度まで安全衛生の議論に組み込むかは企業ごとに差が出るためです。

そのため、実施はしていても、その後の扱いがストレスチェックの趣旨に叶っていないという状態も起こり得ます。このような構造がある以上、報告状況だけで企業の取組みを一律に評価することはできません。

衛生委員会の審議記録が確認対象とされるのは、その扱い方が形として残る場所だからです。実施の有無ではなく、その後の議論の中でどのように位置づけていたかが見えるところといえます。

また、ストレスチェックの扱いが難しいのは、効果が見えにくい点にあります。実施しても、すぐに職場が改善されたり、数値として成果が表れたりするわけではありません。

ただ、メンタルヘルス不調は、顕在化してから対応するほど負荷が大きくなります。ストレスチェックは、その前段階の兆候を把握するための材料として位置づけることで、休職に至る前の対応につなげることができます。

また、日常のコミュニケーションや研修だけでは把握しきれない負荷を、一定の根拠をもって捉えられる点にも意味があります。見えにくいものを可視化することで、個人対応や職場環境の見直しの判断材料を増やす役割を持っています。

こうした早期把握の積み重ねは、結果として休職の予防につながります。休職を防ぐことは、単に個人の問題にとどまらず、業務の継続性や人員配置の安定にも関わります。

その意味で、ストレスチェックは直接的に成果を示す制度というよりも、組織運営の前提を支える制度として捉えるほうが実務にはなじみます。負荷の偏りや不調の兆候を早く捉えることで、結果として安定して生産性の高い運営につながるという見方です。

こうして見ると、「義務として実施する」にとどめるのではなく、「なぜ行うのか」という観点から、その後の扱いまで含めて位置づけておくことが重要になります。ストレスチェックの結果をどのように共有し、どのように活用するのか。その流れが整理されているかが、安全衛生体制の中での位置づけを左右することになります。

執筆者

久保田 慎平

神奈川県

社会保険労務士法人GOAL
【プロフィール】
1983年8月横浜生まれ、横浜育ち。2011年4月に都内の社会保険労務士事務所へ入職、4年間の実務経験後、2015年4月独立開業。2018年9月に行政書士法人GOALと合流し、社会保険労務士法人GOALを設立。

東京・神奈川・埼玉・千葉の中小企業を中心に企業型DC(確定拠出年金)導入支援や人材の採用・定着支援、クラウドシステム導入支援、労務トラブル防止、企業研修による人材育成に力を入れている。就業規則の関与実績約300件以上、商工会議所や金融機関等のセミナー講師、執筆も実績多数。


【略歴】
2011年 4月 社会保険労務士事務所エスパシオ入職
2014年11月 社会保険労務士試験合格
2015年 4月 社会保険労務士事務所人事労務アシスト設立(独立開業)
2018年 9月 社会保険労務士法人GOAL設立(法人化)

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