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更新日:2026 / 03 / 23
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同一労働同一賃金で有期社員の待遇差はどう判断されるか|社労士 日隈 久美子の視点

同一労働同一賃金で待遇差は制度ごとにどう判断されるのか

この記事への視点を提供する社労士

    社会保険労務士 日隈久美子(とどろき社会保険労務士法人/東京都豊島区)

この記事を読んで分かること

  • 同一労働同一賃金の裁判では、待遇差が制度ごとに判断される基本構造が分かる
  • 賞与、扶養手当、休暇制度など、待遇ごとに判断が分かれる視点を整理できる
  • 企業が待遇差を設ける際に、制度の目的と説明のあり方をどう整えるべきかが見えてくる

賃金や手当、休暇制度の設計は、採用時の条件提示や契約更新の場面で説明できるかが問われやすい論点です。今回の焦点は、正社員と有期社員の待遇差がどのような基準で判断されるのかという点にあります。

賞与不払い 不法行為は成立せず

大手電子部品メーカーの日東電工㈱で働く日系ブラジル人の非正規労働者60人が、正社員との間の労働条件の差を不合理と訴えた裁判で、最高裁判所第二小法廷(岡村和美裁判長)は賞与の不払いを不法行為と認めた二審判決を変更し、賞与にかかる同社の敗訴部分を破棄した。賞与不払いという債務不履行は不法行為法上の権利利益を侵害するものではなく、不法行為は成立しないと判断している。扶養手当とリフレッシュ休暇、特別休暇、年次有給休暇の半日取得の差を不合理とした二審判決が確定した。
記事提供:労働新聞社

- 記事提供企業 -

 

賞与について会社側の主張が認められた点だけを見ると、企業に有利な判断と受け止められるかもしれません。ただ、同じ判決の中で扶養手当や休暇制度の差は不合理とされており、待遇差の評価は一つの結論では整理できません。ここでは、待遇差がどのような枠組みで判断され、企業実務では何を整えておくべきかという点から整理します。

同一労働同一賃金は「待遇ごと」に判断される

今回の判決では、正社員と有期社員の待遇差をめぐり、基本給、賞与、扶養手当、休暇制度など複数の制度が争点となりました。その結果、賞与や基本給については原告の請求は認められませんでしたが、扶養手当やリフレッシュ休暇などについては不合理とする判断が維持されています。
同じ裁判の中でも、待遇項目ごとに結論が分かれた点が特徴です。

この結果から分かるのは、同一労働同一賃金の判断は「待遇ごと」に行われるという点です。賞与、手当、休暇といった制度はそれぞれ目的や性質が異なるため、待遇差の合理性も制度ごとに個別に検討されます。
今回の判決でも、賞与は認められず、扶養手当や休暇制度は不合理とされました。制度の目的を踏まえて待遇差を判断するという構造が改めて示された形です。

また、賞与不払いについては、それを直ちに広い意味での損害賠償の問題とみるのではなく、まずは賃金や労働条件の定め方・運用の問題として整理されています。つまり、「賞与を払わなくてもよい」ということではなく、企業がどのような制度設計と運用をしていたのかが先に問われるということです。

企業の制度設計では、正社員、契約社員、パート社員といった雇用区分ごとに待遇をまとめて整理していることが少なくありません。しかし同一労働同一賃金では、その区分だけでなく制度の目的との関係で合理性が判断されます。そのため、雇用区分を基準に設計された制度は、制度の趣旨との関係で説明が難しくなることがあります。

実務で迷いやすいのは、これまで続けてきた待遇差を説明しようとしたときです。賞与や手当を正社員のみ支給してきた場合でも、その制度が何を評価し、誰に対して設けられているのかが曖昧だと、採用時の説明や契約更新の場面で整合性が取りにくくなります。
以前は労使双方で慣行として受け止められていた待遇差でも、いまは現場で説明を求める声が上がりやすくなっています。

今回の判決から見えてくる実務上のポイントの一つは、賞与制度の位置づけです。賞与の差が直ちに不合理とされるわけではありませんが、それは賞与がどのような目的で設けられた制度なのかが整理されていることが前提になります。

賞与を「正社員のみ支給」としている場合でも、その制度が何を評価し、どのような役割を想定しているのかが明確であれば説明はしやすくなります。賞与の論点で企業が考えておきたいのは、支給の有無そのものより、賞与制度の目的と支給対象の考え方を説明できる状態にしておくことです。

同一労働同一賃金では、待遇差の有無だけでなく、その差をどの制度の目的で説明できるかが問われます。

今回の判決も、自社の賃金、手当、休暇制度がどのような考え方で設計されているのかを見直す契機として受け止める必要がありそうです。

執筆者

日隈 久美子

東京都

とどろき社会保険労務士法人
弊所の理念は【人と組織がいきいきできる御社の経営をともにおつくりします】

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