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更新日:2026 / 07 / 17
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無期雇用契約の終了と解雇予告の確認|社労士 青木 幸江の視点

成績不良による雇用終了で、指導の経過と法的手続をどう捉えるか

この記事への視点を提供する社労士

    社会保険労務士 青木幸江(社会保険労務士法人Aoki/東京都中央区)

この記事を読んで分かること

  • 成績不良による雇用終了では、成績だけでなく、会社の指導や本人の対応も判断材料になることが分かる
  • 会社が行った指導や支援の経過を、記録に残しておく理由が分かる
  • 就業規則や契約書に終了事由があっても、解雇予告などを別に確認する理由が分かる

営業成績が基準を下回る従業員への対応では、現場での指導経過と、雇用を終了する際の法的な扱いを切り分けて確認する必要があります。契約書や就業規則に終了事由が定められていても、それだけで必要な手続まで決まるとは限りません。以下の記事ハイライトでは、成績不良を理由とする無期雇用契約の終了が争われた日本生命保険相互会社事件を紹介します。

「日本生命保険相互会社事件・東京地判令7.8.15―営業成績不良を理由とする雇用終了扱いの有効性」皆川宏之千葉大学教授
(『労働法律旬報』2026年6月下旬号(2106号)34-35頁のハイライト)

本稿で扱われている日本生命保険相互会社事件は、無期雇用契約を締結し保険営業に従事していた労働者が、雇用契約や会社の営業職員就業規則の「本人の活動成果等が、営業職員就業規則に定める基準に達しない場合には、選考月の前月末をもって、営業職員としての資格を失い、本契約は終了する。」との規程に基づいて雇用契約が終了された事案です。
本件労働者は、会社から提供されるターゲット顧客情報を活用して営業活動をすることもなく、営業部長が繰り返し指導してもターゲット顧客情報を活用した営業活動を行おうとしなかったとされています。営業成績は会社の成績基準を下回っており、このような状況が続いていました。また、営業部長による定期的な面談ですら拒否しており、営業成績の向上のために会社による支援や指導を積極的に受入れようという姿勢に欠けていたと裁判所は認定しています。
裁判所は、本件雇用終了扱いは労働者の能力不足による解雇に類似するとして、本件雇用終了扱いは、客観的に合理的な理由があり、社会通念上も相当であるとして解雇を有効と判断しました。


この裁判所の判断に対して皆川教授は、この判決が妥当であるとしながらも解雇であれば適用があるはずの労働基準法20条1項(解雇予告手当)について検討すべきであったとされています。すなわち、成績未達を理由に解雇を決定したのであれば、労働基準法20条1項にもとづく最低30日間の解雇予告または30日分の解雇予告手当の支払いを行うべきこととなるからです。
また、裁判例の傾向としては、長期雇用を前提とする労働者の場合、単に成績が不良というだけでなく、企業から排斥すべき程度に至っていることを求めていること、さらに、成績不良にもかかわらず、反省せず改善がみられない場合等に解雇を有効としていることから、本件労働者の姿勢を考えると解雇を有効とした裁判所の判断はやむをえなかったとしています。
記事提供:旬報社

- 記事提供企業 -

記事参照元はこちら:労働法律旬報No.2106 2026年6月下旬号

 

本件では、営業成績だけでなく、会社による支援や指導に対する労働者の対応も踏まえて、雇用終了の有効性が判断されました。一方、皆川教授は、解雇予告についても検討すべきだったと指摘しています。ここからは、無期雇用契約を終了する際に、規程の定めと実際の手続をどのように結びつけて考えるかを見ていきます。

規程上の終了事由だけでなく、解雇としての経過と手続を見る

本件は、営業成績が基準に達しなかったことを理由に、就業規則と雇用契約の定めに沿って無期雇用契約を終了した事案です。裁判所は、その実質を能力不足による解雇に類似するものと捉え、客観的に合理的な理由と社会通念上の相当性を認めました。企業実務では、規程上の終了事由に該当するかだけでなく、無期雇用契約を終了させる法的な扱いまで確認する必要があります。

この判決で重く見られたのは、営業成績が基準を下回っていたことだけではありません。会社が提供したターゲット顧客情報を活用せず、営業部長による繰り返しの指導にも応じず、定期面談も拒否していたことが認定されています。成績という結果に加え、改善に向けた支援や指導を受け入れる姿勢も含めて、雇用終了の合理性が検討されたと読めます。

成績不良を理由に雇用を終了する場合、会社には、基準未達の事実だけでなく、どのような指導や支援を行い、本人がどう対応したのかを説明できる状態が求められます。数値だけを根拠にすると、改善の機会を与えたのか、支援や指導をどのように行ったのかが見えません。面談内容、伝えた課題、支援策、その後の変化を記録しておくことは、判断の経過を後から確認するうえでも欠かせません。

一方で、合理的な理由が認められることと、解雇時の手続を履行することは別の問題です。無期雇用契約の終了が実質的に解雇と評価されるのであれば、契約書や就業規則に「基準未達で終了する」と定めているだけで、解雇予告などの手続を省略できるとは限りません。規程の文言を根拠に自動的な契約終了として処理すると、終了理由には説明がついても、手続面に不備が残るおそれがあります。

実際の対応では、現場の管理職が指導を続け、人事労務担当者が契約終了の可否を検討することも少なくありません。その際、管理職が「規程の基準に達していないから終了できる」と理解していても、人事側が解雇としての要件や手続を確認しなければ、社内の判断が規程の文言だけに引っ張られます。指導の記録と雇用終了時の手続を別々に扱わず、一連の判断として確認することが重要です。

企業がまず立ち返るべきなのは、会社側の判断で無期雇用契約を終了させる場合、原則として解雇の問題になるという前提です。そのうえで、成績基準の合理性、指導や改善機会の内容、本人の対応、解雇予告または予告手当の要否を順に確認します。本件は、厳しい雇用判断ほど、規程への形式的な該当性だけでなく、そこに至る経過と終了時の法的手続をそろえて検討する必要があることを示しています。

執筆者

青木 幸江

東京都

社会保険労務士法人Aoki
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