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更新日:2026 / 08 / 28
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業務委託の労働者性はどう判断する?契約目的と運用実態の確認|社労士 日隈 久美子の視点

GPS・LINEによる管理も含め、契約の目的と日々の運用をどう確認するか

この記事への視点を提供する社労士

    社会保険労務士 日隈久美子(とどろき社会保険労務士法人/東京都豊島区)

この記事を読んで分かること

  • 業務委託の労働者性は、契約名称だけでなく実際の業務や管理の実態から総合的に判断されることが分かる
  • GPSやLINEなどによる時間・場所・行動の管理が、労働者性の判断に関わることが分かる
  • 異なる契約形態を使い分ける際に、契約目的と実際の運用を照らし合わせる考え方が分かる

業務委託契約を活用する企業にとって、契約書の内容と実際の業務の進め方は切り離して考えることができません。契約上は業務委託でも、時間や場所、業務の進め方をどの程度管理しているかによって、労働者性が問題となることがあります。今回の記事ハイライトでは、営業従事者の労働者性が認められたquintet事件が取り上げられています。

「quintet事件・東京地判令8.2.25―業務委託契約による営業従事者の労働者性(労働契約性)が肯定された例」本久洋一國學院大学教授
(『労働法律旬報』2026年8月上旬号(2109号)53-54頁のハイライト)

本稿で扱われているquintet事件は、電気・ガス等の営業代行業務を行う二次下請会社(Y)と個人委託契約を締結した営業担当者(X)が、労働者性を主張して未払賃金等を請求した事件です。Xは稼働日数不足や遅刻によるペナルティ分が委託料から減額されていました。
裁判所は、GPSアプリや朝礼、LINE報告等による強い時間的・場所的拘束や指揮監督関係を認め、Xの労働者性を肯定しました。また、稼働日数不足等に基づく委託料の減額措置および相殺を違法・無効と判断しました。
本久教授は、直行直帰型の営業業務においてGPSアプリやLINE等のデジタル端末を用いた管理手法が労働者性の判断要素(時間的・場所的拘束性および指揮監督性)に与える影響を検討しています。また、多層委託構造における上流企業(発注企業や一次下請けの企業)からの指示や要求が末端の個人委託者に及ぼす規律や、報酬の労務対償性・時間量依存性といった要素が労働者性判断にいかに反映されたかという視点から分析を行っています。


本久教授は、本判決をデジタルツールによる管理下での営業従事者の労働者性を認めた注目すべき先例として位置づけ、多層委託構造における管理の実態を正確に捉え、労働者性を肯定した点を高く評価しています。
また、本判決で裁判所が、「本件契約(業務委託契約)の主たる目的が、契約獲得という結果それ自体にではなく、時間で測られる契約獲得労働そのものにあることを上流(企業)の契約内容から説得的に示唆して」いる点も高く評価されています。
労働法逃れのための偽装請負や偽装フリーランスが問題になるなか、重要な判決であると思われます。
記事提供:旬報社

- 記事提供企業 -

記事参照元はこちら:労働法律旬報No.2109 2026年8月上旬号

 

本記事では、GPSアプリ、朝礼、LINE報告等による時間的・場所的拘束や指揮監督関係が、労働者性を判断する事情として扱われています。業務委託契約を採用する企業であれば、契約の名称だけで判断するのではなく、業務委託としてどのような仕事の任せ方を想定していたのかと、実際の指示や管理の方法にずれがないかを確認することが大切です。

業務委託契約の目的と運用実態をどう確認するか

業務委託という名称で契約を結んでいても、労働基準法上の労働者性は契約の形式だけで決まるものではありません。仕事の依頼に対する諾否の自由、業務遂行上の指揮監督、時間・場所の拘束、報酬の労務対償性などを踏まえ、実態から総合的に判断されます。契約書上の「業務委託」という位置づけと、実際の業務の進め方や管理方法が整合しているかを確認する必要があります。 労働者と判断されれば、賃金や労働時間など労働基準法上のルールが適用されるため、この区別は契約管理に直結します。

今回の記事ハイライトでは、GPSアプリ、朝礼、LINE報告等が、営業担当者の時間的・場所的拘束や指揮監督関係を示す事情として扱われています。デジタルツールを使うこと自体に問題があるわけではありませんが、稼働状況や行動をどこまで把握し、業務の進め方にどの程度指示を出していたのかは、契約の実態を見るうえで重要です。 直行直帰の営業でも、管理方法によっては会社の指揮監督下で労務を提供していると評価される余地があります。

契約締結時には、まず何を目的としてその契約形態を選ぶのかを明確にしておくことが大切です。成果物や業務の完成を委ねるのか、それとも一定の時間働くこと自体を求めるのかでは、想定される管理のあり方も異なります。報酬が成果への対価なのか、稼働日数や時間と密接に連動するのかも、労働者性を判断する事情の一つです。契約時に想定した目的と、稼働日数、遅刻、報告方法、行動管理、報酬の決め方といった日々の運用がずれていくと、契約名称と就労実態の不一致が生じ、労働者性をめぐるリスクにつながり得ます。

多層の委託関係では、直接契約している会社だけでなく、上流企業からの指示や要求が個人の働き方にどこまで及んでいるかも確認する必要があります。自社では裁量を認めているつもりでも、上流から届く具体的な指示をそのまま個人へ伝えることで、実際の業務の進め方が細かく決められていることもあります。発注企業や下請会社など複数の事業者が関わる場合には、誰からどのような指示が出され、それが個人の業務にどこまで及んでいるのかを見ることが重要です。

異なる契約形態を適切に使い分けるには、雇用契約と業務委託契約の違いを理解したうえで、契約締結時の目的と実際の運用を継続して照らし合わせることが欠かせません。 契約書を整えた時点で終わりにせず、現場での指示、報告、時間管理、報酬の扱いが当初の契約関係と整合しているかを確かめることが、あいまいな運用による労務リスクを抑える手がかりになります。

執筆者

日隈 久美子

東京都

とどろき社会保険労務士法人
弊所の理念は【人と組織がいきいきできる御社の経営をともにおつくりします】

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