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更新日:2026 / 06 / 15
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本採用拒否の判断で確認したい試用期間の運用と記録|社労士 日隈 久美子の視点

採用直後からの見極めを形だけにしないために、管理職と人事がそろえる確認事項

この記事への視点を提供する社労士

    社会保険労務士 日隈久美子(とどろき社会保険労務士法人/東京都豊島区)

この記事を読んで分かること

  • 本採用拒否を、試用期間満了時に慎重に扱うべき判断として整理できる
  • 試用期間中の注意や違和感が、その場限りになりやすい理由を確認できる
  • 採用直後から共有しておきたい見極めの前提を考えるきっかけになる

中途採用では、資格や経験を要件として、入社後すぐに一定の役割を期待することがあります。ただ、その期待に応えられているかを確認する試用期間が、実際には「何となく様子を見る期間」になってしまうこともあります。今回は、一級技士として採用された労働者の本採用拒否が争われた引用記事を紹介します。

一級技士の本採用拒否有効

造船・海運や建築・土木などを営む愛媛県内の企業で、一級技士として中途採用された労働者の本採用拒否が争点となった裁判で、東京地方裁判所(木地寿恵裁判官)は本採用拒否を有効と判断した。労働者は資格と経験を買われ、現場管理を任せられる人材として採用されたが、社用車の鍵をまったくの他人であるコンビニ店員に預けたり、業務中に居眠りをするなど常識を欠く行動を繰り返していた。同地裁は期待された能力がないことは明らかと指摘。同社が適格性・資質が欠如していると判断したのはやむを得ないとした。
記事提供:労働新聞社

- 記事提供企業 -

 

引用記事では、一級技士として採用された労働者について、試用期間満了時の本採用拒否が有効と判断されています。資格や経験を前提に採用した場合、会社が一定の役割を期待することは自然です。
一方で、その期待と実際の働きぶりをどのように確認し、本採用の判断につなげるかは、試用期間の運用として整理しておきたい点です。

試用期間を「見極めの期間」として機能させるために

一級技士として中途採用された労働者について本採用拒否が有効と判断された事例は、採用時の期待と、入社後の実際の働きぶりをどう確認するかという問題として読むことができます。資格や経験を要件として採用する場合、会社が一定の役割を期待すること自体は自然です。ただ、その期待に応えられているかを、試用期間中にどのように見極めるかが企業実務では問われます。

試用期間は、採用時点では見えにくい能力、仕事への向き合い方、職場での行動を、実際の勤務を通じて確認する期間です。一方で、本採用拒否は、採用を見送る手続きではなく、すでに始まっている労働契約を終わらせる判断に近い重さを持ちます。そのため、制度として試用期間を設けるだけでなく、担当業務、期待する役割、注意すべき勤務態度、指導内容、改善状況を、現場と人事の間で共有できる形にしておく必要があります。

試用期間が形だけになりやすいのは、日々の注意や違和感が、その場限りの対応で終わりやすいからです。現場の管理職が仕事ぶりに不安を感じたときは、本人に何を伝え、改善を求めた後にどのような変化があったのかを記録に残しておくことが大切です。その経過が残っていなければ、試用期間満了時に「なぜ本採用に進めないのか」を後から整理し、会社として説明しにくくなります。

今回の記事では、社用車の鍵を他人に預けたことや業務中の居眠りなど、現場管理を任せる人材として見過ごしにくい行動が示されています。こうした出来事が起きた場合でも、会社はその都度、事実を確認し、本人に伝え、改善の機会を設けたかを整理しておく必要があります。行為の重大さだけでなく、採用時に期待した役割と、入社後に確認された行動との関係を説明できることが、本採用拒否を検討する際の土台になります。

本採用拒否は、試用期間が終わった時点で自由に選び直す手続きではありません。だからこそ、採用直後から、どの業務を任せ、どの行動を重く見るのか、注意や指導を誰が人事に共有するのかを決めておくことが大切です。管理職だけに見極めを任せると、判断が属人的になり、後から会社として説明する材料が不足しやすくなります。

企業が最初に意識したいのは、試用期間を「何となく様子を見る期間」にしないことです。採用直後の一定期間は、本人の適性を見極める期間であると同時に、会社が期待する役割を伝え、働きぶりを確認し、必要な指導や記録を積み重ねる期間でもあります。どの行動を問題として扱うのか、改善の有無をどのように見るのかを現場と人事で共有しておくことで、本採用に進めるかどうかの判断も、場当たり的なものになりにくくなります。

執筆者

日隈 久美子

東京都

とどろき社会保険労務士法人
弊所の理念は【人と組織がいきいきできる御社の経営をともにおつくりします】

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