会員社労士 7,006名
更新日:2026 / 06 / 08
記事画像

労働基準法改正を見据えた労働時間管理の確認点|社労士 久保田 慎平の視点

労働基準法改正を見据えた労働時間管理の確認点

この記事への視点を提供する社労士

    社会保険労務士 久保田慎平(社会保険労務士法人GOAL/神奈川県川崎市川崎区)

この記事を読んで分かること

  • 見送られた改正論点と労働時間管理の関係が分かる
  • 連続勤務、休日の振替、終業後連絡など、勤務実態を見る観点を整理できる
  • 中小企業で勤務管理が現場任せになりやすい理由を確認できる

労働基準法の見直しをめぐっては、2026年の通常国会への提出が予定されていた改正案が見送られました。しかし、連続勤務の上限、法定休日の特定、勤務間インターバルなど、働く時間と休み方に関わる項目は、今後の企業実務でも意識しておきたい内容です。

「2026年労働法制の分岐点―「馬車馬」社会への逆行か、実効ある労働者保護か」佐々木亮日本労働弁護団幹事長
(『労働法律旬報』2026年5月下旬号(2104号)講演記録 ハイライト)

本稿は、2026年3月12日に開催された社会的労働運動研究会の講演の記録です。
この講演では、2023年3月の厚労省「新しい時代の働き方に関する研究会」(働き方研)の発足から現在にいたるまでの労働基準法の改正の動きについて解説され、今後、どのような流れになっていくのかをまとめられています。
今年(2026年)の通常国会で提出される予定であった労働基準法の改正案が、見送られましたが、その主要な改正点は以下の7つとなっていました。
①連続勤務13日上限規制(14日以上禁止)、②法定休日の特定義務、③勤務間インターバル制度義務化、④有給休暇賃金算定統一、⑤つながらない権利確立、⑥週44時間特例廃止、⑦管理監督者労働時間把握義務化
現在、さらに労働者性の見直しや裁量労働制の拡大なども議論をされています。
佐々木弁護士は、40年ぶりとも言われる労働基準法の大規模の見直しについて、労働者の過重労働を招くという観点から警鐘をならしています。
記事提供:旬報社

- 記事提供企業 -

記事参照元はこちら:労働法律旬報No.2104 2026年5月下旬号

 

記事ハイライトでは、労働基準法の大規模な見直しについて、その方向性が議論されていることが示されています。企業実務では、法改正が見送られたことに安堵するのではなく、遠くない将来に法改正が行われることを前提として準備を進めていきたいところです。見送られた改正案の中には、連続勤務や休日、勤務間インターバルなど、日々の労働時間管理に関わる項目も含まれていました。

労働基準法改正を踏まえた労働時間管理の見直し

今回の改正案は提出が見送られましたが、通常国会への提出が予定される段階まで進んでいた論点です。企業が押さえておきたいのは、この内容から労働時間管理がどの方向へ向かっているかです。

連続勤務の上限、法定休日の特定、勤務間インターバルは、働く時間が長くなりすぎないようにし、休む時間を確保するための項目です。行政の議論にも、働き方の変化に対応しながら、過重労働を防ぐ仕組みを実際に機能させたいという流れが見えます。企業側も、その方向を外からの規制として受け止めるだけでなく、自社の勤務実態に照らして早めに整えていく姿勢が求められます。

その流れを踏まえると、企業も同じ方向で自社の勤務実態を見直していくことが大切です。条文が固まってから対応するという考え方もありますが、労働時間管理は、就業規則を直せばすぐに現場が変わるものではありません。勤務表の作り方、休日の振替の判断、終業後の連絡への対応は、日々の業務の中で積み重なっていきます。勤怠データを取っていても、連続勤務や休日の振替がどの部署・時期に偏っているかまで見なければ、実務上の見直しにはつながりにくくなります。

この点は、採用や定着にも関わります。働く側は、給与や仕事内容だけでなく、無理な勤務が続かないか、休みを取りやすいか、業務時間外の連絡が当たり前になっていないかも見ています。法改正が先送りになったとしても、働きやすさを求める従業員側の意識まで先送りになるわけではありません。

一方で、中小企業では、制度改正の内容を知ることと、現場の働き方を変えることの間に距離があります。経営者や人事労務担当者が改正の動きを把握していても、勤務表を作る管理職や、残業を承認する上長まで同じ理解で動けるとは限りません。行政による周知や監督があっても、中小企業一社一社のシフト、休日出勤、業務配分まで細かく確認されるわけではありません。だからこそ、会社自身が現場に必要な情報を伝え、日々の運用を見直していくことが大切です。

特に負担が出やすいのは、現場の調整を管理職が抱え込んでいる職場です。人手が足りないときに休日出勤を頼む、繁忙期に連続勤務を組む、裁量のある社員へ仕事を集める。こうした判断が繰り返されると、制度上は大きな問題に見えなくても、従業員の疲労や管理職の調整負担が積み重なっていきます。

最初から大きな制度変更をする必要はありません。まずは、連続勤務が起きやすい時期、休日の振替が多い部署、終業後の連絡が増える業務、管理職に業務が集中していないかを確認することです。実際の勤務の偏りを経営者、人事労務担当者、管理職で共有できれば、どこから見直すべきかが具体的になります。

改正法の提出が見送られたとしても、今回示された改正論点は、企業が自社の労働時間管理を見直す手がかりになります。制度改正の動きを意識しながら、勤務時間、休日、休息の実態を早めに見ておくことが、これからの労働時間管理を考える出発点になります。

執筆者

久保田 慎平

神奈川県

社会保険労務士法人GOAL
【プロフィール】
1983年8月横浜生まれ、横浜育ち。2011年4月に都内の社会保険労務士事務所へ入職、4年間の実務経験後、2015年4月独立開業。2018年9月に行政書士法人GOALと合流し、社会保険労務士法人GOALを設立。

東京・神奈川・埼玉・千葉の中小企業を中心に企業型DC(確定拠出年金)導入支援や人材の採用・定着支援、クラウドシステム導入支援、労務トラブル防止、企業研修による人材育成に力を入れている。就業規則の関与実績約300件以上、商工会議所や金融機関等のセミナー講師、執筆も実績多数。


【略歴】
2011年 4月 社会保険労務士事務所エスパシオ入職
2014年11月 社会保険労務士試験合格
2015年 4月 社会保険労務士事務所人事労務アシスト設立(独立開業)
2018年 9月 社会保険労務士法人GOAL設立(法人化)

人気のタグ

人気の記事

人気のタグ

人気の記事

Loading

LOADING