シフト制の年次有給休暇|所定労働日数と付与日数の判断方法|社労士 原 彩子の視点
契約上の日数と勤務実績をどのように年休の付与へ反映するか
この記事への視点を提供する社労士
- 社会保険労務士 原彩子(プラセール社会保険労務士法人/東京都杉並区)
この記事を読んで分かること
- シフト制の有給休暇で、付与日数を判断する基準が分かる
- 「週○日程度」の契約で注意することが分かる
シフト制では、契約を結ぶ時点で具体的な勤務日が決まっておらず、「週○日程度」「月○日程度」といった形で勤務日数の目安を定めていることがあります。このような働き方では、年次有給休暇の比例付与に用いる所定労働日数を、どのように判断するかが問題になります。まずは、厚生労働省が明確化したシフト制労働者の年次有給休暇の取扱いを紹介します。
シフト制労働者に対する年次有給休暇の取扱いを明確化
厚生労働省は7月14日、労働政策審議会労働条件分科会を開催し、シフト制の労働者に対する年次有給休暇の付与に関して、付与日数の算出方法の取扱いを明確化したこと等を報告しました。政府の規制改革推進会議の計画案の要請に基づき講じた措置で、令和8年6月19日に都道府県労働局宛に通達を発出し、シフト制により就業する労働者の適切な雇用管理を行うための留意事項を示しました。
https://www.mhlw.go.jp/stf/newpage_22954.html
https://www.mhlw.go.jp/stf/newpage_74576.html
https://www8.cao.go.jp/kisei-kaikaku/kisei/meeting/committee/260629/agenda.html
シフト制の労働契約では、契約締結時点で具体的な労働日や労働時間が確定していないときもあることから、留意事項では、所定労働日数を算出しがたい場合に、過去の労働日数の実績を基準日における1年間の所定労働日数とみなして、付与日数を算出して差し支えないと明記しています。具体的には、①雇入れ6ヵ月経過後の年次有給休暇の付与にあたっては、雇入れから6ヵ月間の労働日数の実績を2倍した日数、②雇入れ1年6ヵ月経過後以降の年次有給休暇の付与にあたっては、前年の労働日数の実績を基準日における1年間の所定労働日数、とみなすことができます。
所定労働日数が少ない労働者(週所定労働日数が4日以下または年間の所定労働日数が216日以下で、かつ週所定労働時間が30時間未満の労働者)には、所定労働日数に応じた日数分の年次有給休暇を与えなければなりませんが、シフト制の場合、契約締結時点で具体的な労働日や労働時間が確定していない場合もあり、年次有給休暇の付与日数の算出に参照する所定労働日数の判断が難しいと指摘されていました。
記事提供:社会保険研究所
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年次有給休暇の比例付与では、基準日時点の所定労働日数が判断の出発点になります。一方、シフト制では「週○日程度」のように勤務日数の目安しか定めておらず、所定労働日数を算出しがたいことがあります。今回の取扱いが、こうしたケースで何を基準に付与日数を決めるものなのかを確認してみます。
シフト制の年次有給休暇|「週○日程度」の契約で付与日数をどう判断するか
年次有給休暇を比例付与する場合、原則として基準日に予定されている週または年間の所定労働日数を使って付与日数を判断します。したがって、労働契約で所定労働日数が明確に定まっているのであれば、まずはその日数が基準になります。
一方、シフト制では、「週3日程度」「月○日程度」のように勤務日数の目安を定め、具体的な労働日は後からシフトで決めることがあります。このように所定労働日数を算出しがたい場合について、今回の留意事項では、過去の労働日数の実績を使って付与日数を算出しても差し支えないことが明確にされました。
ここで注意したいのが、契約書に記載された「週○日程度」という数字の扱いです。「週3日程度」のような記載はあくまで勤務日数の目安であり、実際の勤務状況によっては、その「3日」をそのまま週所定労働日数として付与日数を決めることが適切でない場合があります。
たとえば、「週3日程度」という契約で、雇入れから6か月間に85日勤務していたとします。今回示された方法で85日を2倍すると年間170日となり、比例付与では「年間169日~216日」の区分に当たるため、6か月経過時の付与日数は7日です。「週3日」として計算した場合の5日より多くなります。
このケースで重要なのは、「勤務実績を使うことが義務になった」ということではありません。所定労働日数を算出しがたい場合に、実績を用いる方法が認められたという位置づけです。ただし、契約上の「目安となる労働日数」を使う場合も、その目安から計算した付与日数が、勤務実績から計算した付与日数を上回る場合に限られます。そのため、勤務実績を確認せず「週3日程度だから5日」と処理すると、本来付与すべき日数を下回る可能性があります。
また、所定労働日数は、本来、その日数どおりに働くことを会社と労働者が約束するものです。実際の勤務日数が契約上の所定労働日数と大きく離れた状態が続いているのであれば、年次有給休暇の計算だけではなく、契約内容が実際の働き方に合っているかも確認する必要があります。
実務では、基準日ごとに、まず労働契約上の所定労働日数が明確に定まっているかを確認します。算出しがたい場合には勤務実績を確認し、「目安となる労働日数」がある場合には、それを用いた付与日数と実績による付与日数との関係も確認します。こうした判断手順を決めておくことで、「週○日程度」という記載だけを見て機械的に付与日数を決めることを避けられます。
シフト制では、契約書に書かれた数字だけで判断できないケースがあります。どの数字を基準にするのかを先に確認し、必要に応じて勤務実績まで見ることが、年次有給休暇を適切に付与するためのポイントになります。

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