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更新日:2026 / 08 / 27
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試用期間の本採用拒否はできる?勤務態度不良の社員への対応事例|社労士 原 彩子の解決事例

<編集協力:社労士ナビ編集部>

解決した社労士

  • 社会保険労務士 原 彩子 氏(プラセール社会保険労務士法人/東京都杉並区)

※本記事は、実際の対応事例をもとに、企業等が特定されないよう一部内容を調整しています。

この記事を読んで分かること

  • 試用期間中の本採用拒否が、当然の契約終了ではなく解雇として扱われる理由が分かる
  • 勤務態度不良の社員に対応するとき、問題行動や指導経緯のどこを確認すべきかが分かる
  • 雇用終了を急ぐ前に、採用、指導、日常のマネジメントをどう見直すべきかが分かる

試用期間の満了だけでは本採用を拒否できない

試用期間中であっても、会社が自由に雇用を終了できるわけではありません。試用期間中も、会社と社員との間にはすでに労働契約が成立しています。そのため、試用期間満了時の本採用拒否は、採用前の不採用とは異なり、会社から労働契約を終了させる解雇として扱われます。
勤務態度に問題がある場合も、試用期間の満了だけで判断するのではなく、問題行動の内容、これまでの注意や面談、就業規則に基づく対応、改善の状況を整理することが必要です。

対象企業の情報

  • 所在都道府県:東京都
  • 業種:製造業
  • 従業員規模:200名
  • 組織の特徴:熟練の高齢者が多い老舗企業

試用期間は適性を確認し、育成するための期間

試用期間は、採用した社員について、実際の勤務を通じて業務能力、勤務態度、職場への適応状況などを確認するための期間です。

ただし、会社に適性を確認する機会が認められているからといって、理由を示さず本採用を拒否できるわけではありません。会社には、どのような点を問題と捉え、どのような改善を求めたのかを説明できる対応が求められます。

試用期間は、社員を退職させやすくするための期間ではなく、会社が採用時の判断を確かめ、必要な指導や育成を行うための期間として運用することが重要です。

遅刻や居眠りを繰り返す社員への対応に困っていた

私に相談を寄せたのは、東京都内で製造業を営む、従業員約200名規模の老舗企業でした。入社して数カ月の社員が遅刻を繰り返し、ときには勤務中に居眠りをするなど、勤務態度に問題が見られていました。

会社は本人と面談し、注意をしていました。本人はその都度「これから気を付ける」と話していましたが、勤務態度が改善されることはありませんでした。本来採用した業務を任せることも難しくなり、会社は本人に比較的容易な作業だけを担当させていました。

会社は、この社員に試用期間の満了をもって退職してもらいたいと考えていました。しかし、本採用拒否が解雇に当たるという認識はなく、試用期間が終われば当然に退職してもらえると考えていました。また、会社都合の退職にはしたくないという意向もあり、どのように対応すべきかという相談でした。

問題行動と会社の指導を一つずつ確認した

私はまず、遅刻や居眠りが、いつ、どの程度発生していたのかを確認しました。あわせて、会社が本人にどのような注意や面談を行ったのか、どのような改善を求めたのか、その後の勤務状況に変化があったのかを整理しました。

会社は口頭による注意や面談を行っていましたが、就業規則に基づく制裁は行っていませんでした。本人に改善を求めてはいたものの、問題となる行動と会社が求める改善内容を、段階的に示す運用にはなっていなかったのです。

また、本来採用した業務を任せられず、容易な作業だけを担当させていた経緯についても確認しました。勤務態度と業務上の適性を分けて整理し、会社が何を問題と考え、本人に何を改善してほしいのかを明確にする必要がありました。

試用期間の考え方と指導方法を会社に伝えた

本採用拒否は解雇に当たることを説明した

私はまず、試用期間満了時の本採用拒否は、単なる期間の終了ではなく解雇に当たることを説明しました。試用期間中であっても、社員はすでに採用され、労働契約は成立しています。そのため、「試用期間が終わったから」という理由だけで退職してもらうことはできません。

勤務態度に問題がある場合には、その内容や程度、業務への影響、注意や面談の経緯、改善の機会を与えたかどうかを踏まえて判断する必要があります。試用期間は、退職させるかどうかだけを判断する期間ではないという点を、会社に理解してもらうことから対応を始めました。

就業規則に基づく段階的な対応を提案した

本人が面談のたびに「気を付ける」と答えても、その後の行動が変わらなければ、同じ注意を繰り返すだけになってしまいます。私は、問題となる行動の内容によっては、就業規則に基づく制裁を行うことも重要だと説明しました。

制裁を行うこと自体が目的ではありません。会社が問題と考えている行動、求める改善内容、改善されなかった場合の対応を本人に明確に示すためです。口頭注意、面談、記録、就業規則に基づく対応を段階的に進めることで、本人に改善を促すとともに、会社としての判断根拠も整理しやすくなります。

個人を尊重したマネジメントを管理者に伝えた

勤務態度に問題がある社員に対して、悪い点だけを指摘し続けても、行動の改善につながらないことがあります。私は、本人を一人の人として尊重し、注意が必要な場面だけではなく、普段から関わりを持つマネジメントを提案しました。

日常的な温かい関わりによって人間関係が育まれ、本人が職場で尊重されていると感じられることは、問題行動を減らす方向にもつながります。この考え方を一部の担当者だけにとどめず、管理者間で共有するため、管理者向けの研修会も実施しました。勤務態度不良への対応を、本人だけの問題として処理するのではなく、管理者の指導方法や日常の関わり方を見直す機会としました。

試用期間の役割と使い方が社内に共有された

今回の対応を通じて、会社には、試用期間が社員を簡単に退職させるための期間ではないことを理解してもらいました。試用期間中は、社員の問題点を見つけるだけでなく、会社として求める基準を示し、必要な指導を行い、改善の状況を確認する必要があります。

また、管理者向け研修を通じて、問題行動を指摘するだけではなく、本人を尊重し、日常的な関わりの中で成長を支えるという考え方も共有されました。

その結果、試用期間の使い方だけでなく、採用後の指導やマネジメントについても、会社として見直すきっかけになりました。

なお、この社員について契約内容をあらためて確認したところ、会社が試用期間だと認識していた期間は、実際には契約期間として定められていました。そのため、本人に契約期間満了による退職であることを丁寧に説明し、期間満了をもって退職となりました。

試用期間の運用で押さえたい3つの実務ポイント

採用後に退職してもらうことは容易ではない

一度採用すると、試用期間中であっても、社員に退職してもらうことは容易ではありません。試用期間の満了だけで判断するのではなく、問題となる行動、会社の指導、その後の改善状況を整理する必要があります。

そのため、採用時には、業務に必要なスキルだけではなく、周囲との関わり方や社内で力を発揮できる人材かという「人間力」の視点からも判断することが重要です。

採用を億単位の投資として考える

私は、平均的には新卒から定年までにかかる人件費は2億円以上となるという視点から、採用を億単位の投資として慎重に考えてほしいと伝えています。

採用時の判断が十分でなければ、入社後に本人と会社の双方が苦しむことになりかねません。長期間にわたって働いてもらうことを前提に、経験や資格だけではなく、会社の価値観や職場環境との相性も含めて見極めることが大切です。

注意と尊重の両方を欠かさない

勤務態度に問題がある場合には、注意すべきことを曖昧にせず、就業規則に基づいて対応する必要があります。一方で、問題点だけを指摘し続ければよいわけではありません。必要な指導を行いながら、本人を一人の人として尊重し、普段から関わることが、改善に向けた土台になります。

よくある質問

試用期間が満了すれば、自動的に退職してもらえますか?

いいえ。試用期間が満了しただけで、当然に退職してもらえるわけではありません。試用期間中も労働契約は成立しているため、本採用を拒否して会社側から契約を終了させる場合は、解雇として扱われます。問題行動の内容や指導の経緯、改善の機会を与えたかどうかを確認したうえで判断する必要があります。

遅刻や居眠りが続けば、本採用を拒否できますか?

遅刻や居眠りがあったという事実だけで、直ちに本採用を拒否できるとは限りません。発生回数や程度、業務への影響、会社が行った注意や面談、その後の改善状況などを整理する必要があります。

就業規則の内容も確認し、必要に応じて段階的な指導や制裁を行ったうえで判断することが重要です。

試用期間は採用と育成を見直す機会になる

試用期間中の勤務態度に問題があったとしても、退職させる方法だけを考えていては、適切な対応にはつながりません。会社として、どのような社員を採用したいのか、入社後に何を求めるのか、問題が起きたときにどのような順序で指導するのかを、あらかじめ整理しておく必要があります。

採用時にはスキルと人間力の両面から慎重に判断し、採用後は就業規則に基づく指導と、本人を尊重した日常的な関わりを両立させることが大切です。試用期間を退職判断のためだけに使うのではなく、採用、指導、育成の仕組みを確認する期間として運用することが、勤務態度の問題を未然に防ぎ、適切に対応するための土台になります。

執筆者

原 彩子

東京都

プラセール社会保険労務士法人
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