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社会保険・労働保険
更新日:2026 / 07 / 01
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労災保険のメリット制とは?保険料が最大40%増減する仕組みと適用条件を解説

労災保険料は、業種ごとの保険料率だけで決まるわけではありません。要件を満たす事業場の場合、事業場ごとの労災発生状況に応じて「メリット制」が適用され、保険料率が最大±40%増減します。

厚生労働省の発表資料「メリット制について」によると、令和5年度時点でメリット制が適用されている事業場は、全事業場のうち約4%です。また、そのうち8割超の事業場が保険料率の引き下げ適用となっており、さらにメリット制が適用された事業場の半数近くに-40%の増減率が適用されています。

なお、メリット制には、中小企業向けの「特例メリット制」もあります。所定の要件を満たして申告すると、増減幅が±45%まで拡大される仕組みです。労災発生状況によっては、保険料負担が通常のメリット制よりさらに軽減される可能性があります。

本記事では、メリット制の仕組みや具体的な保険料の増減額、適用される事業の種類や条件、特例メリット制の仕組みまで解説します。メリット制の理解と適用の確認にお役立てください。

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労災保険のメリット制とは?仕組みと目的を解説

メリット制とは、事業場ごとの労災発生状況に応じて、労災保険料を増減させる制度です。通常、労災保険料は業種ごとの保険料率をもとに計算されますが、メリット制では事業場ごとの実績が保険料率に反映されます。

ここでは、メリット制が設けられた目的と保険料の増減幅を整理します。

メリット制が設けられた目的

メリット制の目的は、「保険料負担の公平化」と「労働災害防止努力の促進」の2つです。

同じ業種でも、事業場ごとの安全管理への取り組みによって労災発生状況は異なります。しかし、この差を考慮せず同じ保険料率を適用すれば、労災発生状況の違いが保険料に反映されず不公平が生じます。

メリット制は、これまでの労災発生状況をもとに保険料率を増減させることで公平化を図り、各事業場が安全衛生に取り組む動機づけとなるよう設けられました。

保険料の増減幅は最大±40%

メリット制が適用された事業場では、労災保険料の増減幅は原則±40%です。労災発生状況に応じて、保険料率は最大40%下がる場合もあれば、最大40%上がる場合もあります。

保険料率の増減は、業種ごとに定められた労災保険率から、通勤災害等に充てる率(非業務災害率)を除いた部分に対して行われます。非業務災害率とは、通勤災害や二次健康診断等給付など、業務災害以外の給付に充てるための率です。

この増減後の保険料率を「メリット料率」といい、適用要件や増減の仕組みは事業の種類によって異なります。

次章では、メリット制が適用される事業の種類を確認します。

関連記事:労災保険料率はいくら?業種別の料率や保険料の計算方法を解説

メリット制が適用される事業は「継続事業・一括有期事業・単独有期事業」の3種類

メリット制は、すべての事業に同じルールで適用されるわけではありません。事業の種類によって、対象となる条件や保険料の増減の仕組みが異なります。

それぞれの違いは以下のとおりです。

継続事業

継続事業とは、事業期間に定めがなく、継続的に活動を行う事業を指します。

  • 対象:製造業・小売業・飲食業・サービス業など
  • メリット制の仕組み:過去3年間のメリット収支率をもとに増減率が決まる

一括有期事業

一括有期事業とは、複数の小規模な建設工事や立木の伐採の事業をまとめて、一つの保険関係として扱うものを指します。

  • 対象:小規模工事を複数まとめて扱う事業
  • メリット制の適用要件:保険関係が成立後3年以上経過しており連続する保険年度中の各保険年度において確定保険料額が40万円以上であること
  • メリット制の仕組み:連続した3保険年度のメリット収支率をもとに増減率が決まる

単独有期事業

単独有期事業とは、ビル建設・道路工事・トンネル工事など、規模の大きい工事ごとに個別に保険関係を成立させるものを指します。

  • 対象:大規模な建設工事など
  • メリット制の適用要件:次のいずれかを満たすこと
    ①確定保険料額が40万円以上
    ②請負金額が1億1千万円以上(建設業)
    ③素材生産量が1千㎥以上(木材伐採業)
  • メリット制の仕組み:有期事業が終了して3か月(又は9か月)間がメリット収支率の算定期間となり、増減率が決定したあと当該有期事業分の確定保険料が改定される

このように、メリット制は事業の種類によって、適用要件や保険料率の算定方法が異なります。

次章以降では、一般企業の多くが該当する継続事業を中心に、メリット制の適用要件や保険料率の決まり方について解説します。

一括有期事業・単独有期事業について詳しく知りたい場合は、厚生労働省の資料「労災保険のメリット制について」の該当箇所をご確認ください。

継続事業でメリット制が適用される2つの要件とは

継続事業の場合、メリット制が適用されるためには、以下の2つの要件を満たす必要があります。

要件①保険関係が3年以上続いていること

メリット制の適用には、メリット収支率の算出に3年分の実績データが必要です。そのため、労災保険の保険関係が成立してから3年以上経過していることが一つ目の条件です。

また、新設の事業場や、保険関係を新たに成立させた場合は、3年が経過した時点から対象となります。

要件②一定規模以上の労働者を常時使用していること

もう一つの条件は、労働者の数です。メリット制の場合、条件①を満たしたうえで、各年度において以下のいずれかに該当する必要があります。

A:常時使用する労働者数が100人以上

B:常時使用する労働者数が20人以上100人未満※、かつ災害度係数が0.4以上
※業種によって要件を満たす労働者数は異なります

災害度係数とは、業種ごとのリスクの高さを反映した指標です。

災害度係数=労働者数×(業種ごとの労災保険率-非業務災害率※)

※通勤災害、二次健康診断給付等、業務災害以外の保険給付に必要な分の料率のこと

リスクの高い業種ほど係数が大きくなるため、少ない労働者数でも対象になる場合があります。

これら2つの要件を満たす事業場には、メリット制が適用されます。適用対象となっている場合は、年度更新書類に同封される「労災保険率決定通知書」にメリット料率が記載されているため、自社の適用状況を確認してみましょう。

メリット制ではメリット収支率によって保険料が変動する

メリット制が適用された事業場の労災保険料は、メリット収支率(以下、収支率)をもとに決まります。

収支率とは、連続する過去3年間に支払われた労災保険給付の総額が、納めた労災保険料に対してどのくらいの割合かを示す指標です。

ここでは、継続事業でのメリット収支率による保険料率の増減と、実際の保険料への影響を整理します。

収支率と保険料率の変化

収支率の割合ごとの保険料率の増減は、以下のとおりです。

メリット収支率 保険料率の増減(メリット増減率)
10%以下 40%減(最大割引)
10%超〜75%以下 段階的に割引(5%減〜35%減)
75%超〜85%以下 変動なし
85%超〜150%以下 段階的に割増(5%増〜35%増)
150%超 40%増(最大割増)

このように、保険料率は収支率が低いほど下がり、収支率が高いほど上がる仕組みです。

具体例|収支率による保険料の差

ここでは、具体例を挙げて保険料の算出をします。収支率によってどの程度保険料に差が生じるのかを確認してみましょう。

【企業情報】

  • 業種:非鉄金属精錬業(継続事業)
  • 常時使用する労働者数:100人
  • 賃金総額:5億円
  • 労災保険率:7/1000

この場合、収支率の状況によって保険料は以下のように変わります。

状況 メリット収支率・
増減率
保険料の目安(メリット制なしの場合との差額)
メリット制なし なし 350万円
無災害 収支率0%、増減率-40% 222万円(-128万円)
労災多発 収支率200%、増減+40% 478万円(+128万円)

同じ規模の事業場でも、労災の発生状況によって最大256万円の差が生じます。無災害であれば、通常の保険料の約6割に抑えられる計算です。

なお、通常のメリット制における増減幅は、原則として最大±40%です。自社の賃金総額に当てはめて、収支率によってどの程度保険料に差が生じるのかを確認してみましょう。

メリット制の反映タイミングと適用通知

メリット制による保険料率の変動は、すぐに反映されるわけではありません。過去3年間(収支率を算出するための期間。以下「収支率算定期間」)の実績をもとに収支率が算出され、その結果が翌々年度の保険料率に反映される仕組みです。

たとえば、令和8(2026)年度の保険料率は、令和4(2022)年度から令和6(2024)年度までの労災発生実績をもとに収支率が算出され、決定されます。

なお、メリット制による保険料率の変更は、毎年5月下旬頃に送付される年度更新書類に同封の「労災保険率決定通知書」で通知されます。

ただし、労働保険の電子申請が義務付けられている事業場(資本金が1億円を超える法人等)は令和8年度より電子申請用の通知書に切り替わっており、封筒サイズも従来のA4サイズではなく定形郵便サイズのものになっているので注意しましょう。

通知書にはメリット料率・収支率・増減率などが記載されており、自社の保険料率がどのように決まったかを確認できます。メリット料率が変わると概算保険料も変わるため、年度更新の申告額も合わせて確認が必要です。

参考:厚生労働省|労災保険率のメリット制

中小企業が知っておきたい「特例メリット制」の仕組み

特例メリット制とは、通常のメリット制が適用されている中小企業が、所定の条件を満たして申告することで、増減幅を±45%まで拡大できる制度です。通常のメリット制が自動適用されるのに対し、特例メリット制は事業主の申告が必要です。

特例メリット制が適用されるには、以下の4つの要件をすべて満たす必要があります。

  1. 通常のメリット制が適用されている「継続事業」であって、建設の事業及び立木の伐採の事業でないこと
  2. 中小事業主であること
  3. 厚生労働省令で定められた安全衛生措置を実施していること
  4. 申告期限内に申告していること

以下に、それぞれ解説します。

要件①通常のメリット制が適用されている「継続事業」であること

特例メリット制は、通常のメリット制が適用されている継続事業のうち、「建設の事業」および「立木の伐採の事業」以外の事業が対象です。

要件②中小企業であること

対象となる規模は業種によって異なります。

業種 常時使用する労働者数
金融業・保険業・不動産業・小売業・飲食店 50人以下
卸売業・サービス業※ 100人以下
上記以外の事業 300人以下

※サービス業のうち、清掃業・火葬業・と畜業・自動車修理業・機械修理業は「上記以外の事業」に該当します。

次の安全衛生措置を講じた保険年度において上記表の人数以下である必要があります。

要件③安全衛生措置を実施していること

特例メリット制の適用を受けるには、厚生労働省令で定められた安全衛生措置を実施し、都道府県労働局長の確認を受ける必要があります。具体的には、機械設置等の計画届の免除の認定を受けた事業主が講ずる「労働安全衛生マネジメントシステムの実施」が対象です。

社内で安全衛生活動に取り組むだけでは要件を満たさないため、自社の取り組みが対象となるかは都道府県労働局に確認しておきましょう。

要件④申告期限内に申告していること

申告できる期間は、安全衛生措置を実施した年度の翌年度4月1日から9月30日までの間です。

手順は以下のとおりです。

  • 手順①安全衛生措置を実施し、都道府県労働局の確認を受ける
  • 手順②翌年度の4月1日から9月30日までの間に、都道府県労働局へ申告する

申告が認められると、安全衛生措置を講じた年度の翌々年度から3年間、メリット制が適用された場合に、増減率がさらに大きくなる特例メリット制が適用されます。タイミングを逃すと適用されないため、安全衛生措置の実施計画に申告手続きも入れておくと安心です。

参考:厚生労働省|労災保険率の特例メリット制

メリット制についてよくある疑問

ここでは、メリット制についてよくある疑問と回答をまとめました。

Q1.労災が1件発生しただけでもメリット料率は上がりますか?

A1.労災が1件発生しても、必ずメリット料率が上がるとは限りません。

メリット料率は、労災の件数だけでなく、過去3年間の労災保険給付額と保険料額をもとにしたメリット収支率によって決まります。そのため、給付額が小さい場合や収支率への影響が限定的な場合は、料率が変わらないこともあります。

メリット料率への影響を過度に恐れて労災対応を遅らせるのではなく、労災が発生した場合は必要な報告・手続きを適切に行うことが重要です。

Q2.メリット制が適用されているか確認する方法はありますか?

A2.年度更新書類に同封の「労災保険率決定通知書」で確認できます。

通知書には、メリット料率・収支率・増減率が記載されており、収支率の算定期間を見れば、どの年度の労災発生状況が現在の保険料率に影響しているかも分かります。

経営者への説明が求められた際は、これらの情報を伝えるとよいでしょう。内容の読み方に不安がある場合は、専門家である社労士に確認しておくと安心です。

Q3.メリット制と特例メリット制の違いは何ですか?

A3.主な違いは、対象となる事業場と保険料率の増減幅です。

通常のメリット制は、継続事業・一括有期事業・単独有期事業が対象となり、増減幅は原則最大±40%です。一方、特例メリット制は、通常のメリット制が適用されている中小事業主の継続事業が対象で、安全衛生措置の実施などの要件を満たすと、増減幅が最大±45%まで拡大されます。

なお、通常のメリット制は要件を満たすと自動適用されますが、特例メリット制は事業主が期限内に申告する必要があります。

まとめ|メリット制は自動適用、だからこそ正確な理解が必要

本記事では、労災保険のメリット制の仕組みや適用条件について解説しました。

通常のメリット制では、事業場ごとの労災発生状況に応じて保険料率が最大±40%増減します。保険料率の増減は収支率をもとに決まり、その結果は翌々年度の保険料率に反映される仕組みです。

メリット制は要件を満たした事業場に自動的に適用されますが、メリット料率や収支率の見方を理解していないと、保険料が増減した理由を把握しにくいケースがあります。また、メリット制が適用されていない場合は、保険関係の成立から3年以上経過していない、または常時使用する労働者数などの要件を満たしていない可能性があります。

通知書の内容確認や収支率の読み方、適用条件を満たすための見通しの試算など、メリット制に関する疑問がある場合は、専門知識をもつ社労士に相談すると安心です。

メリット制について社労士に相談する

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初回相談が無料の社労士も多いため、事務所のスタンスや人柄をしっかり見極めた上で依頼しましょう。

会社が負担する社会保険料の種類と負担割合をまとめて確認したい方は、以下の記事をご参照ください。
【一覧表あり】社会保険料の会社負担はいくら?5つの制度別負担割合と納付スケジュールを解説

執筆者

中小企業福祉事業団 編集部

 
日本最大級の民間社労士団体として、社労士を介して中小企業を支援する活動を行っています。本サイト「社労士ナビ」は、課題を抱える中小企業が、課題を解決できる社労士を探して、巡り合えるように構築しました。「社労士ナビ」が中小企業の人事・労務課題を解決する一助になれば幸いです。

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