50人以下企業のパートの社会保険はどうなる?最新ルールと加入条件を解説!
2022年・2024年の法改正を経て、社会保険の適用範囲は今後さらに広がっていく見通しです。
なかでも注目されているのが、2027年10月から段階的に実施される「社会保険の適用拡大」です。これにより、従業員が50人以下(厚生年金保険の被保険者数でカウントします)の企業でも、パート・アルバイト(短時間労働者)への社会保険加入が義務化されることになります。
「うちは小規模企業だから関係ない」と思っていた経営者や人事担当者も、制度改正の影響を避けて通ることはできません。
本記事では、2025年の年金制度改正を踏まえ、50人以下企業で働くパート・アルバイトの社会保険加入がいつから対象になるのかを中心に解説します。あわせて、現時点での加入条件、扶養内で働く場合の注意点、未加入による企業リスク、2027年10月以降に向けた準備についても整理します。
「自社はいつ、どのように対応すべきか?」その疑問に答えを出したい方は、ぜひ最後までご覧ください。
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50人以下企業のパートが社会保険に加入する基本条件

社会保険の加入対象になるかどうかは、①企業が社会保険の適用事業所に該当するか、②従業員が被保険者の要件を満たすかによって判断されます。
法人事業所は、従業員数にかかわらず社会保険の適用事業所です。また、個人事業所でも、常時5人以上の従業員を雇用している場合は、業種によって社会保険の加入義務が生じます。
従業員側では、正社員などのフルタイム従業員のほか、週の所定労働時間および月の所定労働日数が正社員の4分の3以上であるパート・アルバイト(短時間労働者)も、企業規模にかかわらず社会保険の加入対象です。
従業員50人以下の企業における現在の加入条件を詳しく確認したい方は、関連記事「社会保険加入条件は50人以下の場合どうなる?対応策を解説」をご覧ください。
社会保険の従業員数の詳しいカウント方法については、以下の記事をご参考ください。
(関連記事:社会保険の加入義務とは?パートの適用拡大と企業の対応ポイントを解説)
50人以下企業のパートは現在、社会保険の加入対象になる?

2027年9月までは、短時間労働者への社会保険の適用拡大は、原則として厚生年金保険の被保険者数が51人以上の企業が対象です。
そのため、従業員50人以下の企業で働くパート・アルバイト(短時間労働者)は、原則として、所定労働時間および所定労働日数が正社員の4分の3以上である場合に社会保険の加入対象となります。
一方、正社員の4分の3未満で働くパート・アルバイト(短時間労働者)は、現時点では原則として加入義務の対象外です。ただし、企業が任意特定適用事業所となっている場合は、週20時間以上などの条件を満たす短時間労働者も社会保険の対象になります。
従業員50名以下の企業でも社会保険に加入できるケース

従業員が50人以下の企業においては、原則として、所定労働時間・労働日数が正社員の4分の3未満であるパート・アルバイトの社会保険の加入義務はありません。
ただし、労使合意の上、一定の手続きを経て社会保険への加入が可能です。
具体的には、事業主が「任意適用事業所」または「任意特定適用事業所」として厚生労働省へ申請し、認可を受ける必要があります。
この2つの事業所の違いは以下の通りです。
- 任意適用事業所:加入義務のない個人事業所が、事業所全体で社会保険に加入できる制度
- 任意特定適用事業所:従業員数が50人以下の事業所が、一定の要件を満たすパート・アルバイトに社会保険を適用できる制度
ここでは、中小企業でも導入を検討するケースが増えている「任意特定適用事業所」について詳しく解説します。
「任意特定適用事業所」とは
「任意特定適用事業所」とは、従業員数50人以下の企業であっても、一定基準を満たすパート・アルバイトに社会保険を適用できる制度です。
この制度を活用することで、企業規模にかかわらず、以下の一定の条件を満たすパート社員などにも、健康保険・厚生年金が適用されるようになります。
【パート・アルバイトの適用要件】
- 所定労働時間が週20時間以上
- 雇用期間が2か月を超える見込み
- 月額報酬が8万8,000円以上(基本給+固定手当)
- 学生でない
非正規雇用の待遇改善や人材確保の面でも注目されており、導入を検討する中小企業が増えています。
「任意特定適用事業所」になる条件
企業が「任意特定適用事業所」として認定を受けるには、以下の条件を満たし、所定の手続きを行う必要があります。
【申請に必要な条件】
- 社会保険に加入している従業員の過半数から同意書を得ること
- 所轄の年金事務所へ任意特定適用事業所申出書を提出すること
制度を導入する際は、対象従業員を正確に把握し、労使間で丁寧に協議して合意を得ることが大切です。
社内の体制や契約内容の整理とあわせて、計画的に検討を進めましょう。
従業員が社会保険の扶養の範囲内で働くには

中小企業の現場では、パートやアルバイトから「扶養の範囲内で働きたい」「社会保険への加入は避けたい」といった相談を受けることも多いのではないでしょうか。
特に人手不足の中、希望に応じた雇用条件をどう整えるかは、労務管理上の大きな課題となります。
従業員が扶養内で働くためには、被扶養者と認定されることに加え、勤務時間や報酬などにも一定の上限があります。
【被扶養者の認定条件(一般的な目安※1)】
- 被保険者に生計を維持されている
- 年間収入※2が130万円未満(60歳以上または障害者の場合は180万円未満、19歳以上23歳未満の場合は150万円未満)である
- 被保険者本人の収入の2分の1未満である
(被保険者との関係によって、同居が条件となる場合もあり)
【労働条件】
- 勤務時間が週20時間未満であること
- 月額報酬が8万8,000円以下であること
- 勤務先が「任意特定適用事業所」として認可を受けていないこと
※1:他にも細かい要件がありますので、詳しくは加入している保険者(協会けんぽ・健康保険組合)に確認してください。
※2:ここでの収入判定基準は、「税法上の扶養」とは異なり、社会保険制度に基づいて適用されます
企業側は、制度の誤解を防ぐためにも、従業員に対して社会保険の適用条件を正確に説明・共有することが重要です。
扶養内に関する改正内容や、年収の壁について詳しく知りたい方は、「“パート扶養がなくなる”は誤解?年収の壁一覧とポイント整理」の記事もあわせてご覧ください。
50人以下企業のパートの社会保険はいつから義務化される?

50人以下企業で働くパート・アルバイト(短時間労働者)への社会保険適用は、2027年10月から段階的に拡大されます。
2027年10月からは、厚生年金保険の被保険者数が36人以上の企業が対象となります。その後、2029年10月から21人以上、2032年10月から11人以上、2035年10月からは企業規模要件が撤廃され、10人以下の企業も対象になります。
【適用拡大のスケジュール】
- 2027年10月:36人以上の企業
- 2029年10月:21人以上の企業
- 2032年10月:11人以上の企業
- 2035年10月:10人以下の企業を含め、企業規模要件を撤廃
つまり、現在は対象外の50人以下企業であっても、被保険者数が36人以上であれば2027年10月から、21人以上であれば2029年10月から、11人以上であれば2032年10月から、短時間労働者への社会保険適用拡大の対象になります。
対象となるパートを社会保険に加入させない場合の企業リスク

企業が、本来対象となるパート・アルバイトを社会保険に加入させていない場合、重大な法的・経営的リスクが発生します。
以下、パート・アルバイトへの社会保険加入を怠った場合の企業へのリスクを3つ解説します。
保険料を2年前までさかのぼって支払う必要がある
本来、社会保険の適用対象であったパート・アルバイトを加入させていなかった場合、最大で2年間まで未納保険料を遡って徴収されることになります。
本来であれば従業員が負担する保険料を、事業者が立て替えるケースもあります。
さらに、既に退職した労働者が対象であった場合は、企業が労使折半分を含めた保険料を全額負担するケースもあるなど、経営的負担が大きくなるため注意が必要です。
未納保険料には延滞金が発生する
未加入や届出漏れが判明した場合、遡って保険料の納付が必要になるほか、納付状況によっては延滞金が発生する場合があります。具体的な延滞金の有無や金額は、未納期間や納付時期、督促状の指定期限との関係などによって決まります。詳細は、所轄の年金事務所で確認が必要です。
未加入期間が長くなるほど支払わなければいけない保険料の総額は増加し、対象となる従業員の人数が多いほど企業の負担も大きくなります。
今後、社会保険の適用範囲はさらに広がり、対象となるパート・アルバイトも増える見込みです。
企業には、対象となる労働者を正確に把握し、漏れなく加入手続きを行うことが求められます。
こうした経営リスクや実務負担を未然に防ぐためにも、早めに社内体制を整え、スムーズに対応できる仕組みを構築しておきましょう。
6か月以下の拘禁刑もしくは50万円以下の罰金を受ける
社会保険の加入義務があるパート・アルバイトに対して正当な理由もなく加入させなかった場合、刑事罰の対象となることがあります。
具体的には、下記のような場合に6か月以下の拘禁刑または50万円以下の罰金刑が科される可能性があります。
- 日本年金機構などからの調査に対し、必要な書類や資料の提出を拒否した場合
- 職員の質問に対して正当な理由なく答えなかった場合
- 調査の場で虚偽の説明をした場合
- 検査を拒否、妨害、または意図的に避けた場合
(参考:厚生年金保険・健康保険などの適用促進に向けた取組|日本年金機構)
こうした行為は単なる手続き漏れではなく、厚生年金保険法第100条に基づき「悪質な違反」と見なされます。
企業が調査への協力を怠ったとみなされた場合には、行政指導だけでなく刑事罰の対象となることもありますので、速やかに対応できる体制を整えておきましょう。
まとめ|50人以下の企業もパート・アルバイトの加入準備を
本記事では、2026年5月時点の社会保険(健康保険・厚生年金)制度や、今後予定されている適用拡大について解説しました。
現在、パート・アルバイトへの社会保険の適用は、常時従業員51人以上の企業が対象とされていますが、2027年10月以降は50人以下の企業も段階的に対象に含まれることとなります。
これにより、小規模事業者にも一定の労働時間や賃金要件を満たすパート・アルバイトには、社会保険への加入義務が発生する可能性があります。
もし加入させるべき従業員を見落としていた場合、保険料の遡及徴収や延滞金、刑事罰のリスクに加え、企業イメージの低下や採用難につながるおそれもあります。
適用拡大を見据え、今のうちから就業実態を確認し、加入対象となるパート従業員の把握と社内対応の準備を進めることが重要です。
制度対応や社内整備に不安がある場合は、専門家である社労士に相談し、正確で効率的な管理体制の構築を図りましょう。
パート・アルバイトの社会保険について社労士に相談する
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