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社会保険・労働保険
更新日:2026 / 03 / 06
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2028年施行の遺族厚生年金改正内容、受給はどう変わる?

2025年6月に年金制度の改正法が成立しました。2028年4月から遺族厚生年金の給付期間や受給ルールが大きく変わります。改正内容の主な内容や影響を受ける人・受けない人などをわかりやすく解説します。

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遺族厚生年金とは?改正前の基本ルールをおさらい

遺族厚生年金とは、厚生年金の被保険者や被保険者だった人が亡くなったときに遺族へ支給される年金です。2028年4月からは遺族厚生年金の受給年数や収入要件などが変わります。ここでは改正前の内容をおさらいしましょう。

受給要件と遺族の優先順位

遺族厚生年金は、亡くなった人が次のいずれかを満たしていることが受給要件になります。

  1. 厚生年金保険の被保険者である間に死亡したとき※1
  2. 厚生年金の被保険者期間に初診日がある病気やけがが原因で初診日から5年以内に死亡したとき※1
  3. 1級・2級の障害厚生(共済)年金を受けとっている方が死亡したとき
  4. 老齢厚生年金の受給権者であった方が死亡したとき※2
  5. 老齢厚生年金の受給資格を満たした方が死亡したとき※2

※1.死亡日の前日において保険料納付済期間(免除期間含む)が国民年金加入期間の2/3以上、もしくは死亡日が令和18年(2036年)3月末日までの場合は死亡した人が65歳未満であれば死亡日の前日において死亡日の前々月までの直近1年間に保険料未納がないこと

※2.保険料納付済期間、保険料免除期間および合算対象期間等合算した期間が25年以上ある人に限る

また、受給対象者は死亡した人に生計を維持されていた遺族のうち最も優先順位の高い人が受け取ることとなります。優先順位は高い順から、

  1. 子のある配偶者
  2. 子の無い配偶者
  3. 父母
  4. 祖父母

となっています。遺族厚生年金の受給権が上の人にある場合は下位の遺族には支給されません。受給するには遺族の前年収入が原則850万円未満であることが必要です。

さらに、子・孫は次のいずれかに該当する人を指します。

  • 18歳になった年度の3月31日まで(18歳年度末未満)の人
  • 20歳未満で障害年金1級もしくは2級に該当する人

つまり、子どもが19歳であったり、障害年金1級もしくは2級に該当しても20歳以上であれば優先順位③の子の無い配偶者となります。

遺族厚生年金の年金額

遺族厚生年金は厚生年金に加入していた期間や加入期間中の報酬(給与や賞与)に応じて計算されます。基本的には、死亡した人の老齢厚生年金の報酬比例部分の3/4の額となります。

また、現行の制度では、遺族となった妻に対して一定の要件に該当する方へは一定額の中高齢寡婦加算が遺族厚生年金に上乗せされます。

現行制度の男女差

現在の制度では、中高齢寡婦加算や、優先順位③の子の無い配偶者の受給権・受給年数など、性別と年齢によって差があります。

子の無い30歳以上の妻には遺族厚生年金が無期限で支給される一方で、夫は55歳未満だと受給権自体が発生せず、配偶者死亡時の夫の年齢が55歳以上60歳未満の場合も受給開始は60歳からとなっています。

例:子どもがいない夫婦で配偶者が亡くなった場合

遺族が40歳の妻なら……無期給付
遺族が40歳の夫なら……給付無し

 

このような、子どものいない配偶者の男女格差の解消が、今回の改正の最大の目的です。

なぜ改正?改正の背景と目的

遺族厚生年金は、男性が働き女性が家事育児を担うという、いわゆる専業主婦世帯をモデルとして設計されました。しかし、共働き世帯の増加や老若男女関係なく働きやすい環境の整備が進んだ今、制度の前提と実態が大きくかけ離れてきています。

このズレを是正し、男女平等な制度へと再設計するのが今回の改正の目的です。

男女差解消が大きなテーマ

現行制度では、子の無い30歳以上の妻は終身、遺族厚生年金を受けられる一方で、夫は55歳未満だと受給権が発生せず、妻の死亡時で55歳以上でも受給開始は60歳からという男女格差が残っていました。

今回の改正では、この格差を解消し、男女とも60歳未満で配偶者を亡くした場合は原則5年間の有期給付、60歳以上で亡くした場合は無期給付という共通のルールに統一されます。

▼遺族が【子の無い配偶者】の場合の受給年数

現行制度 改正後
女性 30歳未満で死別:5年間
30歳以上で死別:無期給付
60歳未満で死別:原則5年間
60歳以上で死別:無期給付
男性 55歳未満で死別:給付無し
55歳以上で死別:60歳から無期給付

(参考:遺族厚生年金の見直しについて|厚生労働省

共働き世帯の増加と家庭スタイルの変化

現行制度が前提としてきた「専業主婦世帯」は2021年で458万世帯、妻がフルタイムで働く「共働き世帯」は486万世帯と、フルタイム共働き世帯が専業主婦世帯を上回っています。

▼共働き世帯数の推移

出典:令和6年版厚生労働白書(厚生労働省)

妻がパートで働く世帯(691万世帯)も含めると「共働き世帯」は1,177万世帯となり、専業主婦世帯の約2.5倍という状態です。

かつて女性の就業率は、25~44歳の結婚・出産を機に離職し凹む「M字カーブ」と呼ばれていました。しかし2024年の調査では子育て世代にあたる25~44歳の女性就業率は平均82.0%に達しています(参考:令和7年版厚生労働白書p.33|厚生労働省)。

男性が働き女性が家事育児を担うという価値観は実態とかけ離れており、それに対応した制度の見直しが求められていました。

2028年改正の主な変更点5つ

2028年4月の改正では、給付期間・給付額・受給要件・将来の老齢年金にいたるまで、多岐にわたる見直しが行われます。改正の柱となる5つのポイントを順に確認していきましょう。

子どものいない60歳未満の配偶者は男女とも原則5年の有期給付に

今回の改正で最も注目を集めている変更点です。これまで性別によって異なっていた受給年数・受給可能年齢が統一され、男女とも60歳未満で配偶者を亡くした場合は原則5年間、60歳以上で亡くした場合は無期給付となります。

有期給付加算で加算額は約1.3倍に

子どもがいない60歳未満の配偶者遺族の給付期間が5年となる代わりに、遺族厚生年金の給付額が手厚くなります。5年間の給付中には「有期給付加算」が上乗せされ、現在の遺族厚生年金額の約1.3倍となります。

有期給付加算は、配偶者を亡くした直後の生活再建期について、集中的に支援を行うことを目的としています。

5年後も「継続給付」で保護される仕組み

5年間の有期給付が終了しても、障害状態にある人(障害年金受給権者)や収入が十分でない(就労収入が月額約10万円以下)人は継続給付として引き続き増額された遺族厚生年金を受給することができます。継続給付は、収入が増えるにつれて遺族厚生年金額が調整されるしくみとなります。

▼改正後の子どものいない60歳未満の配偶者の受給イメージ

所得制限の撤廃

これまで、遺族厚生年金を受給できる遺族は年収850万円未満という制限が設けられていましたが、2028年4月の改正ではこの要件が撤廃され、年収に関係なく受給できるようになります。

共働き世帯で一定の収入がある配偶者も、遺族厚生年金を受給できるようになり、制度の拡充となる改正点です。

「死亡分割」制度の新設で老齢年金も増額

離婚等をした際に一定の要件に該当し、請求があった場合には婚姻期間中の厚生年金記録を分割することができ、これを離婚時の「年金分割(離婚分割)」といいます。

配偶者を亡くした際も一定の要件を満たす場合に、年金分割して遺族の年金記録に上乗せする死亡分割が新たに導入されます。死亡分割は遺族自身の将来の老齢年金額を増額するもので、長期的な保障として遺族の生活を支えることが期待されます。

改正で影響を受ける人は?対象チェック

2028年4月の改正は、全ての人に影響するわけではありません。

影響を受けるケース

改正の影響は、給付期間の変更・金額の変更・受給権の発生と大きく3つにわけられます。それぞれ影響を受けるケース・人をみてみましょう。

5年間の有期給付になる人

  • 子どもがいない2028年度末時点で40歳未満(1989年4月2日以降生まれ)の妻
  • 子どもがいない60歳未満の夫

有期給付+必要に応じて継続給付になる人

  • 子どもが18歳になった後の3月31日(18歳年度末)を迎えた配偶者(子どもがいない配偶者状態となった人)

所得制限撤廃により新たに受給権者となる人

  • 年収850万円以上の配偶者

影響を受けないケース

次のいずれかに該当する人は、改正による影響はなく、従来の制度が適用されます。

  • 既に受給している人
  • 60歳以降に受給権が発生した配偶者
  • 18歳年度末までの子どもを育てる配偶者
  • 2028年度末時点で40歳以上(1989年4月1日以前生まれ)の妻

つまり、2028年4月以降の改正後であっても、2028年3月末までに発生している受給権について不利な変更はされません。

子どもがいない妻への加算、「中高齢寡婦加算」はどうなる?

中高齢寡婦加算は40歳以上65歳未満の子どもがいない妻などに支給されます。夫には無い男女差のある制度であり、2028年から25年をかけて段階的に縮小されることとなっています。

ただし既に中高齢寡婦加算を受給している人は65歳になるまで現在の金額が維持され、縮小は新規に発生する分のみが対象です。

今から備える見直しポイント

2028年4月の改正施行までに、以下の3点から見直しを始めましょう。

ねんきん定期便で将来の年金額を確認する

ねんきん定期便は、納付状況や将来の年金額見込などを通知するハガキ・封書です。年金受給が始まるまで、毎年誕生月に郵送されます。基本的にはハガキで、35歳・45歳・59歳になった人については封書でより細かい情報が通知されます。

また、ねんきん定期便にはねんきんネットにアクセスするための情報も記載されています。ねんきんネットには年金情報の確認や将来受け取る年金見込額のシミュレーションができます。

遺族厚生年金の給付額は亡くなった方の厚生年金加入期間や報酬と連動するため、夫婦それぞれの年金記録を把握しておくと将来設計がやりやすくなるでしょう。

5年間の有期給付で生活が成り立つか試算する

改正後に有期給付の対象となる人は、5年間の受給終了後の生活費をどう確保するかを考えておく必要があります。継続給付の要件(就労収入が月額約10万円以下)を満たすかどうかもあわせて確認してください。

民間保険の保障内容を見直す

改正後は、子どものいない夫婦が60歳未満で死別した場合、遺族厚生年金の給付期間が有期の5年となります。万が一に備えて生活資金に不安がある場合は生命保険や収入保障保険などを中心に見直すと良いでしょう。

よくある誤解・質問Q&A

ここでは、改正に関わる誤解や質問について解説します。

Q:遺族年金は「5年で打ち切り」になるの?

正確な表現ではありません。子どものいない妻について無期給付が「5年間の有期給付」という情報が先行し、遺族年金が5年で打ち切りと誤解されることも多いです。

しかし、5年の有期給付となるのは一部の人で、子どものいない夫婦が60歳以上で死別した場合は無期給付となります。

一部(例:子どものいない1989年4月2日以降生まれの妻)の人はかつて無期給付だった遺族厚生年金が5年間の有期給付となりますが、現在受給中の人については給付期間が5年に短縮するものではありません。

Q:無期給付と継続給付の違いは?

受給するのに収入が関係しているかという点が大きな違いです。

無期給付は、現行制度で30歳以上の子のない妻などに適用されている給付形態です。収入に関わらず、再婚などの失権事由に該当しない限り受け取り続けることができます。改正後は子どもいない60歳以上の配偶者が無期給付の対象となります。

継続給付は、改正によって新設される仕組みで、5年間の有期給付が終了した後も一定の要件に該当する人が受け取れるものです。就労収入が月額約10万円(年間122万円)以下の人は全額支給されますが、収入が増加するにつれて遺族厚生年金額が調整され概ね月額20~30万円を超えると全額支給停止となります。

Q:すでに受け取っている人の年金額は減る?

減りません。2028年3月31日までに遺族厚生年金の受給を開始している人は改正前のルールが適用され続けます。法改正において、すでに発生している権利を遡って不利に変更することは原則として行われません。

中高齢寡婦加算についても、すでに受け取っている人は65歳になるまで現在の金額が維持されます。

Q:男性は改正で得をするの?/女性は損をするの?

一概に言い切ることができません。

男性については、これまで子のない60歳未満の男性は遺族厚生年金を受給できないケースが多くありましたが、改正後は新たに5年間の有期給付の対象となります。政府の推計では、年間1万6000人が該当するとされており、改正の恩恵を受ける人が多く見込まれています。

女性については30歳以上であれば、終身(無期)給付された従来の制度が、一部の人については有期化されます。ただし、有期給付中は給付額が従来の約1.3倍となるよう有期給付加算が上乗せされ、収入要件に該当する人は5年後も継続給付が受けられます。

また、所得制限撤廃や、死亡分割の新設は共働き世帯の女性にとってプラスの変更点です。遺族厚生年金のみの「損得」ではなく、自身の状況や家族構成に照らして具体的に影響を確認することが重要です。

まとめ|制度を正しく知ることが最大の備えになる

本記事では、2028年4月から施行される遺族厚生年金の改正内容について解説しました。今回の改正は、専業主婦を前提とした従来の制度を現代の世帯スタイルに合わせて再設計するものです。

現在既に受給している人への影響・変更点はありません。5年の有期給付という言葉だけが先行してマイナスの印象を持たれがちですが、改正による所得制限の撤廃や死亡分割制度は受給の窓口を広げ、長期的な保障もカバーするものです。

万が一の場合、自分は改正の影響を受ける対象となるのか、対象だとしたらそれはどのような影響を受けるのかといった点を正しく把握しておきましょう。不足が生じる場合に備えて民間保険やiDeCoなどを組み合わせた生活設計を早めに家族で検討しておくことが重要です。

労働・社会保険の専門家である社労士は、労働に関する相談から老齢・遺族・障害年金受給に関する相談まで幅広くサポート可能です。

「いざ」というときだけでなく、トラブルを未然に防ぐ“備え”として、信頼できる社労士と日頃から連携しておくことが、企業にとって大きな安心につながります。

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初回相談が無料の社労士も多いため、事務所のスタンスや人柄をしっかり見極めたうえで依頼しましょう。

執筆者

中小企業福祉事業団 編集部

 
日本最大級の民間社労士団体として、社労士を介して中小企業を支援する活動を行っています。本サイト「社労士ナビ」は、課題を抱える中小企業が、課題を解決できる社労士を探して、巡り合えるように構築しました。「社労士ナビ」が中小企業の人事・労務課題を解決する一助になれば幸いです。

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