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人事・労務
更新日:2026 / 02 / 12
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人事の業務内容とは?総務・労務との違いや中小企業が抱える課題を解説

人事は採用・配置・評価・育成といった人材活用に加え、労働時間や休暇など就労ルールの運用も担います。中小企業では総務や労務と兼務になりやすく、業務が広がりがちです。

手続きや例外対応に追われると、採用や育成が後回しになり、判断のぶれや現場の混乱につながることもあります。

本記事では、人事の役割と総務・労務との違いを整理したうえで、人事業務を5つに分けて具体的に解説します。あわせて、中小企業で起こりやすい課題と、専門家と連携すべきポイントも紹介します。

人事業務の改善の優先順位が見え、採用や人材育成に時間を回すヒントがつかめます。ぜひ最後までご覧ください。

※本記事では、人事を「組織活動の中における人に関する業務領域(機能)」の意味で使用します。

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人事とは

人事は、企業運営に欠かせない機能の1つです。

ここでは、人事の定義と目的、役割についてそれぞれ解説します。

人事の定義と目的

人事は、企業を構成する4つの経営資源「ヒト・モノ・カネ・情報」のうち、ヒトに関する業務を指します。採用による人材の確保、業務に適した育成、働きやすいルールの整備などを通して、労働者が能力を発揮し、企業の成果につなげることが目的です。

人事の役割

人事の役割は、採用・配置・評価・育成といった人材活用を進め、組織力を高めることです。あわせて、労働時間や休暇の運用、各種手続き、ハラスメント対応などの運用面を整え、企業と労働者のトラブルを防ぎます。

採用や育成に加えて、勤怠や休暇の管理、各種手続きも同時に対応する必要があるため、人事は担当業務が広がりやすい点が特徴です。

人事・総務・労務|業務の違い

人事・総務・労務は、いずれも企業の成長やスムーズな運営に欠かせない管理機能です。関係する部門には、「人事部」「総務部」などがあります。なお、中小企業の場合は「管理部」の中に「人事課」や「総務課」を置く場合もありますが、ここでは、それぞれを「部」として整理し、担う役割と業務内容を、以下の表でまとめます。

【人事部・総務部・労務部の役割と業務内容】

業務 主な目的 具体的な業務例
人事部(課)   人材の確保・配置・育成を通して、企業の成果につながる組織づくりを進める ・採用関連(求人票作成、選考・面接、内定、入社受入れ)
・配置や異動の計画・通知
・評価運用
・人材育成(研修・OJT設計)
総務部(課)   備品・施設や社内手続きなどを整え、社内業務を円滑にする ・備品・施設管理
・契約・文書管理
・社内行事運営
・社内手続きの事務対応
・庶務(郵便・来客対応ほか)
労務部(課)   勤怠・休暇などの就労ルールを運用し、職場環境を整える ・勤怠管理(タイムカード等の集計・管理)
・労働時間や休暇制度の運用
・給与計算の前提整備
・社会保険や労働保険の手続き
・休職復職対応
・ハラスメント相談対応

中小企業では、人事部・総務部・労務部を1〜2名で兼務するケースが一般的です。また、各部門が区分されておらず、他の部署の方や経営者が業務を兼任するケースもあります。兼務により担当範囲が広がると、期限のある手続きが優先され、育成施策の設計や就労ルールの整備が後回しになりがちです。

企業の成長を目指すには、まず自社の人事業務を棚卸しすることが重要です。その上で、「期限がある業務」と「仕組みづくりの業務」に分け、優先順位を明確にしましょう。

人事の主な5つの業務

ここでは、前章で整理した「人事(人に関する業務領域)」を、5つに分けて解説します。

なお、中小企業では人事担当が労務も兼務するケースが多いため、本記事では勤怠・休暇・手続きなどの「労務管理」も人事業務の一部として扱います。

1.採用|人材の確保と定着

採用は、企業の経営戦略や事業計画に沿って、成長に必要な人材を確保し、入社後の定着までつなげる業務です。採用には時間もコストもかかるため、目先の穴埋めではなく「長期的に自社に貢献できる人材」を見極める視点が重要になります。

【具体的な業務の例】

  • 採用計画の策定(採用人数、時期、募集職種、要件の設定)
  • 求人票の作成
  • 選考フロー設計
  • 面接
  • 内定条件の整理
  • 入社受入れ

求める人物像や入社後の役割が曖昧だと、選考の判断軸がぶれ、採用基準が統一しにくくなります。求人票・面接・内定条件まで一貫性を持たせ、期待する役割を明確にすることが求められます。

2.配置・異動|適材適所の人員配置

配置・異動は、事業計画や人材育成の方針を踏まえ、労働者の強みが活きるポジションに配置して組織の成果を高める業務です。配置の判断は、各部門の管理職と連携し、現場の人員ニーズと労働者のスキル・経験・実績、他メンバーとのバランスを踏まえて行います。

【具体的な業務の例】

  • 配置や異動の方針整理
  • 配属先との調整
  • 人事異動の実施
  • 配属後の面談・フォロー

配置の理由や期待役割が曖昧だと、本人も現場も動き方が定まらず、不満や離職につながりやすくなります。事前に「何を期待している配置か」を明確にし、配属後は定期的な面談で状況を確認しながら、早めに軌道修正していくことが大切です。

3.人事評価|評価基準の設定と運用

人事評価は、労働者の成果や行動を一定の基準で評価し、昇給・賞与・昇格などの処遇や、育成方針に反映する業務です。あいまいな評価で信頼を失わないよう、企業には「透明性」と「公平性」を意識した設計と運用が求められます。

【具体的な業務の例】

  • 評価基準の設計
  • 評価の運用設計
  • 評価面談とフィードバックの実施
  • 処遇との連動整理
  • 評価者の支援

評価の行き違いを防ぐには、「何をどう評価するか」を社内に周知し、評価者の判断がぶれないよう運用ルールを整えることが重要です。制度を作るだけで終わらせず、面談の型や評価の観点をそろえ、評価のばらつきを抑える運用を進めましょう。

4.人材育成|能力開発とスキル向上

人材育成は、企業の事業計画や現場の課題に合わせて「必要な人材を育てる仕組み」をつくり、現場の成果につなげる業務です。新人教育や階層別研修に加え、近年はリスキリングや自己啓発支援など、育成の選択肢も広がっています。

【【具体的な業務の例】

  • 必要な人材像・スキルの整理
  • 育成計画の策定
  • 施策の実行支援
  • 育成のフォロー
  • 効果測定と改善

人材育成で大切なのは、研修を実施して終わりにせず、OJTや面談と組み合わせて「現場での行動」に落とし込むことです。目的と到達点を明確にし、効果を確認しながら内容を見直すことで、育成の質を高めやすくなります。

5.労務管理|手続きと労働環境の整備

労務管理は、勤怠や各種手続き、社内ルールの整備などを通じて、労働者が安心して働ける職場を支える人事業務です。現場の運用がスムーズに回るよう、決めたルールを「運用できる形」に整えることが重要です。

【具体的な業務の例】

  • 就業規則・社内規程の整備
  • 勤怠管理
  • 社会保険・労働保険の手続き
  • 職場環境の整備

ルールが曖昧なままだと労働者からの問い合わせが増え、手続きも滞りやすくなります。労務管理では、就労ルールを書面にして対応手順をそろえ、例外対応を減らすことが求められます。

人事の実務で重要な4つのスキル

人事業務では、採用や評価といった人材活用に加え、就労ルールの運用や手続き対応など幅広い業務を担います。

ここでは、人事の実務で重要な4つのスキルを整理します。

コミュニケーション力

人事は、経営層・管理職・労働者の間に立ち、採用や配置、評価、就労ルールの運用が滞りなく進むよう調整をします。また、採用活動では企業の「顔」として求職者と向き合い、社会保険や雇用保険の手続きではハローワークや労働基準監督署など、社外の機関ともやり取りします。

そのため、相手の話を丁寧に聞いて状況を整理する「傾聴力」と、企業の方針や結論を根拠とともに分かりやすく伝える「説明力」が重要です。

正確性と期限管理力

人事は、社会保険や雇用保険の手続き、勤怠集計、給与計算など、数字や書類を扱う業務が中心です。これらは期限が決まっているものも多く、入力ミスや確認漏れがあると手戻りが発生し、給与の誤支給や手続きの未完了で労働者の信頼を損ねる可能性があります。

人事業務では、データを正確に扱い、複数の業務を期限内に完了させる「正確性」と「期限管理力」が求められます。

信頼性と機密保持力

人事の実務では、個人情報や賃金や評価などの機密情報を日常的に扱います。情報が漏れると労働者の信用を失うだけでなく、企業に損害が生じるおそれもあるため注意が必要です。

担当者には、データの持ち出しや保管方法のルールを厳守する姿勢が求められます。特にハラスメント相談のようなセンシティブな情報を扱う場面では、慎重な対応と徹底した機密保持力が欠かせません。

法令・制度理解と学習習慣

人事業務は、雇用や就労に関する法律・制度と深く結びついています。就業規則や社内規程、休暇や労働時間の運用、各種手続きは法改正の影響を受けるため、古い基準のまま対応すると、思わぬトラブルにつながるおそれがあります。

そのため、人事担当者には、法改正や社会の動きを継続的に確認し、自社のルールや運用に反映する学習習慣が求められます。社内の状況だけでなく、他社事例や制度の最新情報も取り入れながら、自社の人事運用に反映していく姿勢が重要です。

中小企業の人事が抱える課題

中小企業の人事は、限られた人数で幅広い業務を担うため、さまざまな課題に直面します。

ここでは、特に起こりやすい4つの課題を解説します。

手続き・締切に追われ、戦略業務が後回しになる

人事には、社会保険の手続きや勤怠集計、給与計算など、締切が決まっている業務が多くあります。これらが遅れると、給与支払いの遅れや手続きの手戻りにつながり、労働者からの問い合わせも増えるため、どうしても最優先になりがちです。

その結果、採用計画の見直しや育成プログラムの設計、人事評価制度の改善といった「本来時間をかけたい業務」が後回しになります。この状態が続くと、企業成長に向けた取り組みが先送りされ、組織の成長が停滞するリスクがあります。

ルールが曖昧で、現場判断がブレる

労働時間の扱いや休暇の承認基準、評価のルールなどが明文化されていないと、担当者ごとに判断が分かれ、対応に差が出やすくなります。たとえば、同じケースでも拠点によって承認の可否が分かれると、労働者が不公平だと感じるでしょう。

さらに、例外対応が増えるほど正式なルールがあいまいになり、問い合わせ対応や社内調整の負担が増えていきます。放置すると、企業と労働者の認識ズレが拡大し、トラブルに発展する可能性もあるため注意が必要です。

法令改正への対応が遅れる

人事が扱う就労ルールや手続きは、働き方改革や法改正の影響を受けて、制度が見直されることがあります。担当者は労働基準法や育児介護休業法などの変更内容を確認し、就業規則や社内運用に反映していく必要があります。

一方で、日々の業務が忙しいと情報収集や見直しに手が回らず、規程や運用が古いまま残りがちです。そのまま運用を続けると、残業代の計算方法や休暇の扱いなどで誤りが生じ、法令違反や企業と労働者のトラブルにつながるおそれがあります。

属人化で引継ぎが難しい

中小企業では人事担当者が1人というケースも少なくありません。そのため、業務の手順や判断のポイントが属人化しやすく、担当交代のたびに業務が止まりやすくなります。マニュアルがない業務はミスや手戻りが増え、業務品質の低下や対応の遅れにつながる可能性もあります。

属人化は人事業務の安定運用を妨げる大きな要因です。手順書やチェックリストを整備し、誰でも対応できる体制を作ることが大切です。

社労士に相談・依頼できる主な人事業務

前章で挙げた課題を解決するには、社労士との連携が有効です。社労士は、手続きの代行だけでなく、就労ルールの整備やトラブル予防まで含めて人事業務を支援します。

ここでは、社労士に相談や依頼できる主な業務と、期待できる効果を解説します。

入退社・保険手続きの支援

社労士は、社会保険(健康保険・厚生年金保険)や雇用保険の資格取得・喪失、離職票の手続き、労災の報告や給付申請などのサポートをします。

入退社が多い企業や拠点が複数ある企業では、期限のある手続きを任せることで、採用や育成といった企業成長に直結する業務に時間を割けるようになります。

就業規則・社内規程の整備

就業規則の新規作成や見直し、法改正に合わせた改定は、社労士の得意分野です。改正内容を規則に落とし込み、法令に沿った運用体制を作るだけでなく、変更後の労働者への周知方法や、運用の進め方まで助言します。

社労士から改正情報が提供されることで、就業規則や運用への反映が遅れなくなり、法令違反のリスク軽減が見込めます。

労務相談・トラブル予防の助言

人事は「ヒト」に関わる業務が中心のため、感情が動きやすい話し合いの場面も少なくありません。特に、ハラスメントや休職復職、解雇・懲戒など対応の手順や記録の残し方に迷いやすいケースでは、社労士に相談することで進め方を整理できます。

事前に専門家の助言を得ることで、適切な初動と記録整備が可能になり、トラブルの深刻化を防げます。判断が難しい場面でも、法的な根拠を持って対応できるため、従業員への説明もしやすくなるでしょう。

勤怠・給与計算の運用設計

社労士は、労働時間の集計ルールや割増賃金の考え方を整理し、ミスが出にくい運用手順づくりをサポートします。給与計算の代行を依頼できる場合もあるため、労働者が多い企業や計算が複雑な企業では、担当者の負担を大幅に軽減できます。

法令に沿った就業規則や各種ルールの整備は、企業と労働者のトラブル予防に効果的です。

近年では社労士の得意分野も細分化されていて、上記で挙げた以外でも、採用に特化した社労士、人事制度に強みのある社労士など様々です。

社労士との連携を成功させるには、まず自社の課題を整理し、どの業務を任せるか明確にすることが重要です。丸投げではなく、社労士と自社に合った役割分担を決め、効果的に人事業務を進めていきましょう。

まとめ|人事の複雑な業務は社労士との連携で安定した運用を進めよう

本記事では、人事業務の全体像を整理したうえで、期限業務に追われやすい中小企業の課題と、社労士と連携すべき場面を解説しました。

人事は、採用・配置・評価・育成といった人材活用に加え、勤怠や休暇、各種手続きなど就労ルールの運用も担う、企業の成長と運営に欠かせない業務です。

一方で中小企業では少人数で兼務することも多く、期限のある手続きや勤怠対応、相談対応が優先されやすいため、組織の課題への取組が後回しになりがちです。その結果、採用や育成、制度の見直しといった「仕組みづくり」の業務にまで手が回りにくい状況を抱えています。

こうした場面では、手続きの代行だけでなく、就業規則や運用ルールの整備、トラブル予防の助言まで支援できる社労士との連携が有効です。課題が大きくなる前に業務を棚卸しし、ルールや手順を標準化したうえで、必要に応じて社労士と役割分担を決めて進めましょう。

人事について社労士に相談する

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初回相談が無料の社労士も多いため、事務所のスタンスや人柄をしっかり見極めた上で依頼しましょう。

執筆者

中小企業福祉事業団 編集部

 
日本最大級の民間社労士団体として、社労士を介して中小企業を支援する活動を行っています。本サイト「社労士ナビ」は、課題を抱える中小企業が、課題を解決できる社労士を探して、巡り合えるように構築しました。「社労士ナビ」が中小企業の人事・労務課題を解決する一助になれば幸いです。

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