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助成金・補助金
更新日:2026 / 04 / 06
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助成金の不正受給とは? 返還は?会社名が公表される?罰則や予防策を解説

公的助成金の申請について、「どこからが不正受給になるのか」「不正の意図が無くても、誤りが見つかったらどう対応すべきか」と不安を感じる企業も多いのではないでしょうか。この記事では、助成金の不正受給の定義や発覚時の影響、自主申告の進め方、さらに再発防止策までを整理して解説します。

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助成金の不正受給とは?定義と該当しやすいケース

ここでいう助成金の不正受給は、主に厚生労働省が所管する雇用関係助成金を前提にした表現です。厚生労働省は、偽りその他不正の行為により、本来受けることのできない助成金の支給を受け、または受けようとすることを不正受給と示しています。すでに受給したケースだけでなく、虚偽の内容で申請段階にある場合も対象です。さらに、申請書類の作成に関わった役員、従業員、代理人の不正行為も事業主の行為として取り扱われます。まずは「故意に実態と異なる内容で通そうとしたか」が重要な判断軸になります。言い換えると、形式上の書類の見た目ではなく、実態との一致が問われます。

不正受給の定義

不正受給の核心は、単なる結果ではなく、虚偽記載や偽りの証明といった不正の行為があるかどうかです。厚生労働省の共通要領では、故意に支給申請書へ虚偽を記載したり、偽りの証明を行ったりして、本来受けられない助成金を受け、または受けようとすることを不正受給としています。つまり、受給後に問題になる場合だけでなく、申請段階であっても故意の虚偽があれば対象になり得ます。制度上は「受けたか」だけでなく、「受けようとしたか」まで含めて見られる点に注意が必要です。社内では、提出前の段階から申請に関連する事実確認を徹底することが重要です。

該当しやすい代表例

該当しやすい代表例としてまず挙げられるのは、休業があったものとして申請したにもかかわらず実際には出勤していたケースや、所定の研修を受講していないにも係わらず受講していたと申告するケースです。ほかにも、雇用関係にない人を対象者に含める、申請内容の誤りに気づきながら修正しない、出勤簿や賃金台帳などの裏づけ資料が実態と合っていない、といった状態は強い疑義を招きます。厚生労働省は、こうした事案を自主点検の対象として示しています。申請書だけを整えるのではなく、日々の勤怠記録や賃金記録まで含めて、記録類の整合性を確認することが欠かせません。申請前の自己点検が、そのまま予防策になります。小さな違和感も見逃せません。

記載ミス・不適正受給との違い

一方で、事実に反する記載があっても、それが故意によらない記載誤りと認められる場合は、不正の行為に直ちに当たらないと厚生労働省は示しています。そのため、単純な入力ミスや確認漏れと、意図的な虚偽申請は分けて考える必要があります。ただし、故意でないミスでも、本来受けられない助成金であれば返還を求められる可能性があります。修正可能な段階で気づくことが、影響を小さくする第一歩です。

助成金の不正受給が起きやすい原因

助成金の不正受給は、最初から明確な虚偽を計画した場合だけでなく、制度要件を十分に確認しないまま申請を進め、事実と異なる内容を修正せず提出した結果として問題化することもあります。厚生労働省の注意喚起では、「事実を十分に確認せず適当に記載した」「申請内容が事実と異なっていたが、そのまま申請した」「従業員や社会保険労務士に任せっきりにしている」といった状態が示されています。代表者が実態を十分に把握していなくても、調査の結果、事業主の責任が問われるため、原因は個人のモラルだけでなく、社内管理体制の弱さにもあると考える必要があります。

制度要件の理解不足

助成金は、対象となる事業主や労働者、実施期間、支給要件、添付書類が制度ごとに細かく決まっています。そのため、要件を曖昧にしたまま手続を進めると、実務上は申請したつもりでも、制度上は対象外というずれが生じます。厚生労働省は、事実を十分に確認せず記載した申請や、内容が事実と異なっているのにそのまま提出した申請に注意を促しています。さらに、休業実績や教育訓練の実施内容が協定書や計画どおりでない場合は支給対象外となることもあり、制度理解の不足が不適正な申請の入口になりやすいといえます。

勤怠記録・賃金台帳の整備不足

申請内容の適正性は、申請書そのものよりも、出勤簿、タイムカード、賃金台帳、休業協定書、業務記録などの裏づけ資料で確認されます。厚生労働省や都道府県労働局は、助成金申請のために後から作成した書類は認められないこと、休日・有休・休業時間帯・教育訓練・所定外労働の時間数まで管理されているかを確認することを示しています。残業時間の管理が不十分で不正確な書類を提出した場合、不正受給に当たる可能性があるとも明記されています。日常の労務管理が曖昧な会社ほど、申請時に実態との不一致が起きやすくなります。

担当者任せ・外部任せの体制

助成金申請を担当者や外部専門家(社労士)に任せること自体は珍しくありませんが、事業主が内容確認をしないまま進める体制には大きなリスクがあります。厚生労働省は、「実務を把握している社員に任せているから大丈夫」「助成金をよく知る代理人に任せているから問題ない」といった考え方に注意を促しています。また、申請書類の作成に関わった役員、従業員、代理人などが不正行為をした場合でも、事業主が不正をしたものとみなされ責任を負うこともあります。依頼先が社労士等であっても企業責任は残るため、申請書類の写しを受け取り、代表者や管理職が最終確認する仕組みが欠かせません。

助成金の不正受給が発覚した場合の影響

助成金の不正受給が発覚すると、単に受け取った額を返せば終わりではありません。厚生労働省は、返還請求に加えて延滞金や不正受給額の2割相当額の納付、一定期間の不支給、公表基準に該当する場合の事業主名等の公表を示しています。助成金は雇用の安定や従業員の職業能力の向上を支える制度であるため、制度趣旨に反する申請は金銭面だけでなく、企業運営や対外的な信用にも影響を与えます。発覚後に慌てないためにも、事前にどのような不利益があるかを把握しておくことが重要です。

返還・延滞金・2割納付・5年間の不支給

雇用関係助成金で不正受給と判断されると、不正に受給した助成金の全額返還に加え、不正受給日の翌日からの延滞金と、不正受給額の2割に相当する額を納付しなければなりません。さらに、不正受給決定日から5年間は、当該助成金だけでなく、ほかの雇用関係助成金も原則として受給できません。なお、返還すべき金額が全額納付されていない場合は、この不支給期間が延長されます。資金繰りへの影響が大きいため、問題を把握した段階で早めに確認する必要があります。

会社名公表と信用低下

不正受給が公表基準に該当する場合、厚生労働省や都道府県労働局の公表資料に、事業主名や代表者名、事業所名、所在地、不正受給金額、不正の内容などが掲載されます。雇用調整助成金では、自主申告ではない不正受給事案について事業主名等を公表する取扱いも示されています。こうした公表情報は取引先、金融機関、採用候補者、従業員の目にも触れやすく、社会的信用への影響が懸念されます。金銭面の負担だけでなく、説明責任の負担が長引く点も見落とせません。

社労士等が関与していても企業責任は残る

助成金申請を従業員や外部専門家に任せていても、それだけで事業主の責任がなくなるわけではありません。厚生労働省は、代表者だけでなく、役員、従業員、代理人その他申請や書類作成に関わった者が偽りその他不正の行為をした場合、当該事業主が不正の行為をしたものとみなすとしています。令和7年度の案内でも、従業員や社会保険労務士が不正行為を行った場合であっても不正受給に該当すると明記されています。依頼先が関与していても、企業側の確認責任は残ると理解しておくことが大切です。

参照:厚生労働省「雇用関係助成金の不正受給について」

助成金申請の誤りに気づいたときの対応

助成金申請の誤りに気づいた場合は、結論からいえば、放置せず、事実関係を整理したうえで申請先の都道府県労働局へ早めに相談することが重要です。厚生労働省では、不正・不適正にかかわらず速やかに、申請した都道府県労働局へ連絡し、要件に合致しないことがわかる書類を提出するよう示しています。

まず確認したい書類と事実関係

最初に確認したいのは、提出した申請書と添付書類の写し、申請の根拠となった出勤簿・タイムカード・賃金台帳など、実態を示す原資料です。厚生労働省は、社会保険労務士のような代理人に依頼した場合でも申請書類の写しを必ず受け取り、内容を確認したうえで保存するよう案内しています。また、労働局の確認資料でも、賃金台帳や出勤簿などが原本の写しか、助成金申請のために後から作成した書類ではないかが確認対象とされています。まずは「いつ、誰が、どの資料をもとに申請したか」を時系列で整理しましょう。

都道府県労働局への相談と自主申告

社内調査の途中で一部の問題だけ先に判明した場合でも、その段階で労働局に申告できます。厚生労働省や東京労働局の案内では、自主申告を行い、返還や納付に適切に対応した場合、一定の条件のもとで事業主名の公表を原則行わない取扱いが示されています。ただし、重大または悪質な事案は別扱いとなるため、自己判断で様子を見るのではなく、速やかに窓口に事実を伝えて対応方針を確認することが重要です。

参照:都道府県労働局所在地一覧

社内調査と再発防止の進め方

社内調査では、提出済みの申請内容と原本資料の差異を確認し、どの段階で誤りが生じたかを整理します。都道府県労働局は、必要に応じて事前予告なく事業所訪問や立入検査を行い、出勤簿や賃金台帳などを確認することがあるため、調査に備えて原本ベースで説明できる状態にしておくことが重要です。再発防止策としては、申請担当者だけに任せず、承認者による二重確認、申請書類の写しの保存、外部専門家へ依頼した場合の最終確認体制を整えることが実務上有効です。こうした運用は、次回以降の申請の適正化にもつながります。

不正受給を防ぐための社内管理のポイント

不正受給を防ぐには、日常の労務管理、申請後の保存と点検までを一連の業務として整えることが大切です。防止のポイントは「提出前の確認」「実態に基づく帳簿整備」「提出後の検証」の3つに整理できます。

申請前チェック体制

申請前チェックでは、担当者が作成した書類をそのまま提出せず、事実確認を別の立場で見直す体制が有効です。実務上は、申請担当者、承認者、最終決裁者の役割を分け、対象者、支給要件、計算根拠、添付資料の一致をチェックリストで確認すると、見落としを減らしやすくなります。

勤怠記録・就業規則・賃金台帳の整合性

助成金申請では、申請書の記載だけでなく、勤怠記録(タイムカード、PCデータなど)、賃金台帳、就業規則や賃金規程などの整合性が重要です。例えば、キャリアアップ助成金のように、就業規則や労働協約に基づく制度整備が支給要件になる助成金もあります。そのため、労働時間、賃金の支払い、制度変更の内容がそれぞれ矛盾していないか、申請前に横断的に確認することが欠かせません。

申請後の保存・点検

申請が終わった後も、書類の保存と定期点検を続けることが重要です。厚生労働省は、提出または提示した申請書類や添付書類の写しなどを、支給決定日の翌日から5年間保存する必要があると案内しています。加えて、実地調査や会計検査院の検査の対象となる場合があり、予告なく調査が行われることもあります。一度提出した書類は事業主都合で差し替えや訂正ができない取扱いもあるため、申請後は保存だけでなく、原資料との対応関係や説明できる状態を定期的に点検しておくことが再発防止につながります。

助成金に詳しい社労士へ相談するメリット

助成金の申請では、日頃の労務管理と申請実務が密接に関わります。誤りを防ぎながら進めるうえで、実務に詳しい社労士へ早めに相談する意義は大きいといえます。

依頼先選びで確認したい点

依頼先を選ぶ際は、助成金だけでなく就業規則、賃金台帳、労働時間管理を一体で確認できるかを見ておくことが重要です。あわせて、申請可否の説明が明確か、必要資料と保存方法を具体的に示してくれるか、最終的に誰が申請内容を確認して提出するかも確認したい点です。外部へ依頼しても企業責任は残るため、実績だけでなく、確認プロセスの丁寧さまで含めて見極めることが大切です。

助成金申請を社労士へ依頼するメリットや選び方は、こちらの記事でも詳しく解説しています。

「助成金申請は社労士に依頼すべき?メリットや選び方を解説」

継続的な労務管理支援を受けたい場合は、こちらの記事で顧問社労士の役割やメリットも確認しておくと役立ちます。

「顧問社労士とは?顧問契約するメリットと探す際のポイントを解説」

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執筆者

中小企業福祉事業団 編集部

 
日本最大級の民間社労士団体として、社労士を介して中小企業を支援する活動を行っています。本サイト「社労士ナビ」は、課題を抱える中小企業が、課題を解決できる社労士を探して、巡り合えるように構築しました。「社労士ナビ」が中小企業の人事・労務課題を解決する一助になれば幸いです。

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