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更新日:2026 / 05 / 26
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求人票の「転勤なし」は勤務地限定合意になるのか|社労士原 彩子の視点

特記事項を含めた求人票の読み方と配転命令前の説明

この記事への視点を提供する社労士

    社会保険労務士 原彩子(プラセール社会保険労務士法人/東京都杉並区)

この記事を読んで分かること

  • 求人票の「転勤なし」と特記事項の関係を整理できる
  • 採用時の説明不足が、入社後の異動トラブルにつながる理由が分かる
  • 本人希望を考慮する場合に、会社があらかじめ伝えておく内容を整理できる

求人票に「転勤なし」と書かれていると、労働者は勤務地が変わらないものとして入社を考えやすくなります。一方で、同じ求人票の特記事項に転勤の可能性を示す記載がある場合、その全体をどう読むかが問題になります。今回の引用記事では、求人票の記載と勤務地限定合意の成否をめぐる判断が取り上げられています。

勤務地限定合意を認めず

首都圏の貨物軽自動車運送事業者の事業協同組合で、配車業務などに従事している労働者が配転命令を不服とした裁判で、東京地方裁判所(安江一平裁判官)は勤務地限定の合意成立を認めず、配転を有効と判断した。求人票には「転勤の可能性なし」と明記され、労働者も履歴書の希望欄に自宅近くの事業所へマイカー通勤を希望すると書いていたが、特記事項の表記を考慮すると、求人票全体としてみれば転勤の可能性がないと理解されるのが通常とはいえないと指摘。配転は有効とした。特記事項には転勤は本人の希望を考慮したうえで決定するとの記載があった。
記事提供:労働新聞社

- 記事提供企業 -

 

求人票の「転勤の可能性なし」という記載は、労働者に勤務地が変わらないものとして受け止められやすい表現です。その上で特記事項に本人希望を考慮して転勤を決める旨の記載がある場合、会社の意図と本人の理解にズレが生じることがあります。ここからは、勤務地限定合意と配転命令をめぐる認識の違いを整理します。

勤務地限定合意をめぐる認識の違いと配転命令前の説明

求人票に「転勤の可能性なし」と記載されていても、特記事項まで含めて読むと、勤務地が固定されていたとはいえないと判断された点が本件のポイントです。この事案は、配転命令の有効性だけではなく、求人票全体から労働条件がどのように伝わり、本人がどのように受け止めたかという問題として捉え直すことができます。

本件では、労働者が自宅近くの事業所へのマイカー通勤を希望していた一方で、特記事項には、転勤は本人の希望を考慮したうえで決定する旨が記載されていました。求人票の一部に「転勤なし」と読める表現があっても、別の欄に転勤に関する記載がある場合には、会社は採用時にその関係を具体的に伝える必要があります。今回のように関連する記載が複数ある場合、どの記載を優先して読むのかによって、会社と本人の認識が分かれてしまうからです。

勤務地限定合意をめぐる争いでは、一つの文言だけで結論が決まるとは限りません。求人票、面接時の説明、労働条件通知書、就業規則、本人の希望などを総合的に勘案して、会社と本人双方の認識が作られます。会社は「本人の希望は考慮するが、異動の可能性は残る」と考えていても、本人は「転勤はない」と受け止めることがあるのです。

その認識のズレは、実際に異動を打診されたり、配転命令を受けたりしたときに顕在化します。会社側が例外を含む制度として考えていても、本人にその前提が伝わっていなければ、異動の場。会社側が例外を含む制度として考えていても、本人にその前提が伝わっていなければ、異動の場面で「聞いていた話と違う」という不満につながるでしょう。法的に有効と判断される余地があったとしても、本人が理解し、納得できるだけの説明がなければ、すれ違いは実務上のトラブルとして残ります。

配転命令を行う際には、業務上の必要性だけを見れば足りるわけではありません。採用時にどのような説明をしたか、本人の希望をどのように聞き取り、その後の配置や異動でどう扱ってきたか、についても振り返る必要があります。ここを現場任せにすると、管理職ごとに伝え方が変わり、会社としてのルールや約束事が見えにくくなるリスクが生じます。

企業がまず意識したいのは、求人票の記載、特記事項、採用時の説明を別々に扱わないことです。勤務地、転勤の可能性、本人希望の取り扱い方について、面接や条件提示の段階で一貫性をもって具体的に説明し、本人がどのように理解したかを確認しておくことが、後の配転判断を支える材料になります。また、説明した内容や本人の希望を記録に残しておけば、異動時に改めて話し合う際の土台にもなるでしょう。

求人票に複数の記載がある場合、会社としては一体の条件として示しているつもりでも、労働者は特に印象に残った言葉を基準に受け止めることがあります。特に勤務地や転勤可能性に関わる条件は、採用時の説明、本人希望の確認、異動時の伝え方まで含めて、会社と本人の認識をすり合わせておくことが大切です。

執筆者

原 彩子

東京都

プラセール社会保険労務士法人
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