パワハラとは?指導との違い・判断基準と企業に求められる対策を解説
職場におけるパワーハラスメント(以下、パワハラ)は、企業にとって放置できない課題です。厚生労働省の令和5年度の調査では、過去3年間にパワハラを受けたことがあると答えた労働者は19.3%にのぼりました。およそ5人に1人が、パワハラを経験している計算です。
現在、パワハラ防止措置は企業規模を問わず、すべての事業主に義務づけられています。対策を進めるうえでは、まず、どのような行為がパワハラに当たるのか、その判断基準を社内で共有しておく必要があります。
一方で、部下への注意や指導は業務上必要な場面もあり、「パワハラを避けたいが、どの行為が該当するのかがわからない」という声も少なくありません。
本記事では、パワハラの定義や見極め方、6つの行為類型の具体例、そして企業に求められる対策まで解説します。指導とパワハラの判断基準を社内で共有し、労働者が安心して働ける職場づくりを進めるための参考にしてください。
参考:厚生労働省|令和5年度厚生労働省委託事業職場のハラスメントに関する実態調査報告書(概要版)
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パワハラ(パワーハラスメント)とは

職場におけるパワハラは、以下の3つの要素をすべて満たすものを指します。
- 優越的な関係を背景とした言動であること
- 業務上必要かつ相当な範囲を超えたものであること
- 労働者の就業環境が害されるものであること
なお、客観的に見て、業務上必要かつ相当な範囲で行われる適正な業務指示や指導は、パワハラには該当しません。
ここでは、それぞれのポイントを見ていきます。
①優越的な関係を背景とした言動があるか
業務を遂行するに当たり、言動を受けた労働者が、行為者に対して抵抗または拒絶することができない可能性が高い関係のなかで行われる言動を指します。
具体的には、以下のようなものが挙げられます。
- 職務上の地位が上位の者による言動
- 同僚や部下による言動で、その人が業務上必要な知識や豊富な経験を持っており、協力を得なければ業務を円滑に進めることが難しいもの
- 同僚や部下からの集団による行為で、抵抗したり拒絶したりすることが難しいもの
このように、上司から部下への言動だけがパワハラになるわけではありません。役職上の上下関係だけでなく、業務上の知識や経験、人数なども踏まえて判断されます。
②業務上必要かつ相当な範囲を超えたものか
社会通念に照らし、その言動に明らかに業務上の必要性がない、または伝え方(手段や態様)が行きすぎているものを指します。
3つの要素のうち、判断がもっとも難しいのがこの要素です。業務上必要な指導との線引きが問われる部分でもあるため、次章でくわしく解説します。
③労働者の就業環境を害するものか
言動によって労働者が身体的または精神的な苦痛を受け、能力の発揮に重大な悪影響が生じるなど、労働者が就業するうえで放置できない程度の支障が生じることを指します。
判断の基準となるのは、「平均的な労働者の感じ方」です。具体的には、同じ状況で同じ言動を受けた一般的な労働者が、就業する上で放置できない程度の支障を感じるかどうかを考慮します。
また、頻度や継続性も判断材料となりますが、強い身体的・精神的苦痛を与える言動は、1回でも「就業環境を害する」と判断される場合があります。
なお、パワハラの対象となる「職場」や「労働者」の範囲は、他のハラスメントと共通です。以下の記事もあわせてご覧ください。
関連記事:職場のハラスメント対策とは?企業が整えておきたい予防・対応のポイントを解説
パワハラと指導の違い|どこからがパワハラか

厚生労働省の指針では、客観的にみて業務上必要かつ相当な範囲で行われる適正な業務指示や指導は、パワハラには当たらないとされています。
適正な指導かパワハラかは、本人の受け止めだけで決まるものではありません。言動の目的や伝え方、行われた状況などを踏まえ、客観的に判断します。
ここでは、パワハラになりうる範囲や判断のポイント、適切な指導について整理します。
指導のつもりでも、伝え方や内容によってパワハラになる可能性がある
指針では、「業務上必要かつ相当な範囲を超えた言動」の例として、以下のものが挙げられています。
- 業務を進めるうえで、明らかに必要のない言動
- 業務の目的から大きく外れた言動
- 業務を進める手段として適切ではない言動
- 言動の回数や行為者の人数などから、社会通念上許される範囲を超えている言動
たとえば、仕事の失敗を注意する際に、業務と関係のない容姿や私生活まで持ち出して責めると、指導の目的から外れた言動と判断される可能性があります。
また、注意や指導自体に業務上の必要性があっても、伝え方や程度が相当な範囲を超える場合があります。遅刻を注意する際に、人格を否定する言葉を使ったり、大勢の前で長時間にわたって叱責したりするのは避けましょう。
パワハラかどうかは個別の状況を踏まえて判断する
業務上必要かつ相当な範囲を超えているかどうかは、一つの要素だけで判断できるものではありません。
指針では、以下のような要素を「総合的に考慮することが適切である」とされています。
- 言動の目的
- 言動が行われた経緯や状況(労働者に問題行動があったかどうか、その内容や程度を含む)
- 業種や業態、業務の内容や性質
- 言動の態様、頻度、継続性
- 労働者の経験年数や年齢などの属性、心身の状況
- 行為者との関係性
どの程度の注意が適切かは、問題となった行動の内容や程度と、指導の方法とのバランスも重要です。指針でも、「その内容・程度とそれに対する指導の態様等の相対的な関係性が重要な要素となる」とされています。
強く注意する必要がある場合でも、人格を否定する言葉や必要以上に長い叱責は、適切な指導の範囲を超える可能性があります。
パワハラに該当しない適正な指導とは
客観的に見て、業務上必要かつ相当な範囲で行われる業務指示や指導は、パワハラには該当しません。
たとえば、遅刻などの問題行動があり、何度注意しても改善されない労働者に対して、一定程度強く注意することは、一般的に適正な指導の範囲と考えられています。
判断基準を社内で共有しておけば、行きすぎた言動を防ぎながら、管理職も必要な指導を行いやすくなります。企業は資料や研修などを通じて、パワハラに該当する可能性のある言動や、適正な指導との違いを労働者に伝えていきましょう。
パワハラの6類型と具体例

厚生労働省の指針では、パワハラに該当する可能性のある代表的な言動を、6つの類型に整理しています。
- 身体的な攻撃
- 精神的な攻撃
- 人間関係からの切り離し
- 過大な要求
- 過小な要求
- 個の侵害
6類型はあくまで代表的な例であり、いずれかに当てはまっても、それだけでパワハラと判断されるわけではありません。一方、6類型に当てはまらない言動でも、3つの要素をすべて満たせば、パワハラに該当する可能性があります。
具体例を通じて、それぞれの類型の特徴を見ていきましょう。
1.身体的な攻撃(暴行・傷害)
身体的な攻撃とは、殴る、蹴る、物を投げつけるなど、体に危害を加える行為です。
たとえば、提出した資料の出来が悪いと怒鳴られ、物を投げつけられてけがをしたケースが挙げられます。一方、誤ってぶつかった場合など、わざとではない接触は一般的に該当しません。
「身体的な攻撃」は、6つの類型のなかで比較的わかりやすいものといえるでしょう。
2.精神的な攻撃(脅迫・名誉毀損・侮辱・ひどい暴言)
精神的な攻撃とは、脅したり、ひどい言葉を浴びせたりして、相手に精神的な苦痛を与える行為です。
たとえば、同僚の前で人格を否定する言葉を繰り返したり、相手をけなすメールを複数の労働者に送ったりするケースが挙げられます。
見落とされやすいのが、性的指向やジェンダーアイデンティティ(性自認)に関する侮辱的な言動です。特定の相手に向けられたものと客観的に認められる場合は、精神的な攻撃に該当する可能性があります。
3.人間関係からの切り離し(隔離・仲間外し・無視)
人間関係からの切り離しとは、特定の労働者を仕事から外したり、仲間外れにしたりして、職場で孤立させる行為です。
たとえば、気に入らない労働者を仕事から外し、長期間にわたって隔離したり、集団で無視したりするケースが挙げられます。
一方、新たに採用した労働者の育成を目的として、短期間、集中的に別室で研修を行うことは、業務上必要な範囲であればパワハラに該当しないと考えられます。
4.過大な要求(業務上明らかに不要なことや遂行不可能なことの強制など)
過大な要求とは、明らかに必要のない仕事や、とてもこなせない量の仕事を押しつける行為です。
たとえば、必要な教育をしないまま新人に達成困難な目標を課し、できなかったことを厳しく責めるケースが挙げられます。また、長期間にわたり、体力的につらい環境で、仕事とは関係のない作業をさせることも、過大な要求に該当する可能性があります。
一方で、育成のために少し難しい仕事を任せたり、繁忙期に通常より多い業務を任せたりしても、業務上の必要性があり、相当な範囲であれば、直ちにパワハラに当たるわけではありません。
5.過小な要求(能力や経験とかけ離れた程度の低い仕事を命じるなど)
過小な要求とは、業務上の合理的な理由なく、能力や経験に見合わない簡単な仕事だけを命じたり、仕事を与えなかったりする行為です。
たとえば、管理職である労働者を退職させる目的で単純作業だけをさせたり、気に入らない労働者に嫌がらせとして仕事を与えなかったりするケースが挙げられます。
一方、労働者の能力や心身の状況に配慮して業務内容や業務量を一定程度軽減することが、直ちにパワハラに当たるわけではありません。
6.個の侵害(私的なことに過度に立ち入る)
個の侵害とは、私生活に必要以上に立ち入ったり、本人の了解なく個人情報を共有したりする行為です。
たとえば、労働者を職場外でも継続的に監視したり、私物の写真撮影をしたり、本人から聞いた病歴や性的指向、ジェンダーアイデンティティなどを他の労働者に伝えたりするケースが挙げられます。
また、個の侵害の判断には、本人の了解の有無も重要な要素です。ただし、了解があれば常に問題がないわけではなく、情報を共有する目的や相手、範囲が適切かどうかも確認が必要です。
令和8(2026)年10月1日以降は、当該労働者が開示することの強要や開示禁止(カミングアウトの禁止)も、個の侵害に該当する可能性があるものとされました。
性的指向やジェンダーアイデンティティ、病歴、不妊治療などは、慎重な取扱いが必要な機微な個人情報です。企業は、こうした情報を本人の了解なく他の労働者に伝えないよう、社内で周知・啓発することが求められます。
なお、6類型に限らず、令和8(2026)年10月1日以降は、商品の買い取り強要等に関連する言動も、3つの要素をすべて満たす場合はパワハラに該当することが指針に明記されます。
労働者の自由な意思に反して自社の商品・サービスを購入させることがないよう、注意が必要です。
参考:厚生労働省|事業主が講ずべきハラスメント対策パンフレット
参考:厚生労働省|あかるい職場応援団|パワーハラスメントとは
参考:厚生労働省|労働者に対する商品の買取り強要等の労働関係法令上の問題点
パワハラ対策で企業に義務づけられている4つの措置

パワハラの防止措置は、労働施策総合推進法で定められた事業主の義務です(第30条の2、2026年10月1日以降は法改正により第31条)。
令和2(2020)年6月1日に大企業を対象として施行され、令和4(2022)年4月1日からは中小企業にも適用されました。現在は企業規模を問わず、すべての事業主に対策が義務づけられています。
企業に義務づけられている措置は、大きく4つに分けられます。
パワハラを許さない方針を明確にし、労働者に知らせる
パワハラの内容と、「パワハラを行ってはならない」という企業の方針を明確にし、労働者に周知します。
あわせて、パワハラを行った者には厳正に対処することを就業規則などに定め、その内容も労働者に伝えておきます。
相談に応じられる体制を整える
相談窓口をあらかじめ設け、労働者に知らせます。また、窓口の担当者が内容や状況に応じて適切に対応できるよう、対応方法や連携の手順も決めておきます。
窓口では、実際にパワハラが起きている場合だけでなく、発生する恐れがある場合や、パワハラに該当するか判断が難しい場合などにも対応できる体制の整備が必要です。
なお、こうした相談窓口は、令和8(2026)年10月より義務化されるカスハラ・求職者等セクハラ(就活セクハラ)への対応にも活用できます。労働者が相談先に迷いにくくなるよう、複数のハラスメントを一つの窓口で受け付けられるようにしておくとよいでしょう。
相談後は迅速かつ適切に対応する
相談があったときは、相談者と行為者の双方から話を聞くなどして、事実関係を迅速かつ正確に確認します。
パワハラの事実が確認できた場合は、被害を受けた労働者への配慮と、行為者への措置を適切に行います。さらに、企業の方針を改めて周知するなど、再発防止にも取り組みます。
なお、パワハラの事実が確認できなかった場合も、防止対策に不備がなかったかを点検し、必要に応じて方針を再周知するなどの対応が必要です。
プライバシーを保護し、不利益な取扱いを禁止する
相談者や行為者などのプライバシーを守るため、相談内容や事実確認で得た情報の取り扱いについてルールを定めます。たとえば、情報を共有する範囲を対応に必要な関係者に限る、相談記録の保管方法を決めるなどです。
あわせて、相談や事実確認への協力を理由に、解雇その他の不利益な取扱いをしないことも明確にして、労働者に周知します。
労働者が安心して相談できる職場にするためにも、方針の周知から相談体制の整備、相談後の対応、プライバシーの保護まで、一連の体制を整えておくことが大切です。
なお、これらの対応を具体的にどう整えるかについては、ハラスメント対策の全体像をまとめた記事でくわしく解説しています。あわせてご覧ください。
関連記事:職場のハラスメント対策とは?企業が整えておきたい予防・対応のポイントを解説
パワハラを放置した場合の企業リスク

パワハラを防ぐ体制を整えていなかった場合や、発生を把握しながら適切に対応しなかった場合、企業自身も法的責任を問われる可能性があるほか、組織運営にも深刻な影響が及びます。
ここでは、企業が知っておきたい3つのリスクを解説します。
企業も法的責任を問われる
パワハラでは、行為者本人が不法行為責任を問われるだけではありません。パワハラが、業務の遂行に関連して行われたと判断されると、企業も法的責任を負うことがあります。
実際に、企業の代表者によるパワハラや暴行などと労働者の自殺との因果関係が認められたケースでは、企業と代表者に合計5,400万円余りの損害賠償が命じられた例もあります。
企業は、パワハラの発生を行為者本人だけの問題として扱うのではなく、組織全体の課題として捉え、予防や発生時の対応に必要な体制を整えておくことが大切です。
精神障害の労災認定につながる
厚生労働省の「業務による心理的負荷評価表」には、具体的な出来事としてパワーハラスメントが明記されています。
令和5(2023)年9月の改正では、パワハラの6類型すべての具体例や、性的指向・性自認に関する精神的な攻撃などが明記されました。暴力や暴言だけでなく、さまざまなパワハラ行為が心理的負荷を評価する際の対象となります。
なお、労災認定と企業の安全配慮義務違反は、それぞれ別の基準で判断されます。ただし、パワハラへの対応が不十分であれば、企業の安全配慮義務が問題となる可能性があります。
管理職が指導をためらい、マネジメントが機能しなくなる
パワハラ特有のリスクとして見過ごされやすいのが、職場のマネジメントへの影響です。
パワハラと適正な指導の違いが社内で共有されていなければ、管理職は「どこまで伝えてよいのかわからない」と感じ、必要な指導までためらう可能性があります。
その状態が続くと、部下の改善すべき行動を十分に指摘できず、人材育成や職場のマネジメントに影響するおそれがあります。
次章では、こうしたリスクを防ぐための具体的な取り組みを見ていきましょう。
義務にとどまらないパワハラ予防の取り組み

法律で義務づけられた4つの措置は、パワハラ対策の土台です。ただし、相談窓口や規程を整えるだけでは、十分とは限りません。
厚生労働省は、パワハラを予防するために、以下のような取り組みを行うことが望ましいとしています。
判断基準を共有する研修を行う
パワハラの判断基準を社内で共有するには、研修が有効です。
研修では、パワハラに該当する言動だけでなく、どこまでが適正な指導なのかもあわせて学びます。「してはいけないこと」だけでなく、適切な伝え方を学ぶことで、管理職も部下を指導しやすくなります。
また、パワハラの原因や背景を減らすには、コミュニケーションを活性化・円滑化するための研修も有効です。
自社だけで内容を組み立てるのが難しい場合は、社労士などの専門家に講師を依頼するとよいでしょう。
相談窓口とアンケートで実態を把握する
職場の実態を把握するには、労働者の声を継続的に確認することが大切です。
相談窓口をパワハラ以外のハラスメントにも対応できる体制にすると、労働者が相談先に迷いにくくなり、複数のハラスメントが関係するケースにも対応しやすくなります。
ただし、窓口を設けても、すべての問題が相談として寄せられるとは限りません。匿名アンケートを実施したり、意見交換の機会を設けたりして、対策が機能しているかを確認しましょう。
自社の労働者以外にも方針を示す
厚生労働省は、他の事業主が雇用する労働者、求職者、個人事業主、インターンシップ生などに対する言動についても、パワハラを行ってはならないという方針を示すことが望ましいとしています。
なお、フリーランス(特定受託事業者)に対するパワハラ等については、フリーランス・事業者間取引適正化等法第14条により、相談体制の整備等が発注事業者(特定業務委託事業者)の義務とされています。
取引先の担当者や、職場に常駐している業務委託の方への言動は、対策の対象として見落とされやすい部分です。方針の対象を自社の労働者以外にも広げて示すことで、相手の立場を問わず、適切な言動を意識しやすくなるでしょう。
対策を講じてもパワハラが起きてしまう理由

必要な措置を整えても、パワハラが起きてしまう職場があります。その背景には、制度だけでは解消しにくい要因があります。
パワハラに関する理解不足
どのような行為がパワハラに当たるのか、正しく理解していないケースがあります。
パワハラを行為者個人の性格の問題や、偶発的なトラブルとして捉えていると、自分の言動がパワハラにつながる可能性に気づきにくくなります。
企業は、パワハラの方針や判断基準を定め、研修などを通じて労働者に繰り返し伝えることが大切です。
優越的な関係性への無自覚
行為者が、自分と相手との間にある優越的な関係に気づいていない場合もあります。
上司が指導のつもりで伝えていても、部下は立場上、反論したり断ったりすることが難しい場合があります。
こうした関係が相手に与える影響を理解していないと、悪意がなくても、パワハラに当たる言動につながることがあります。研修や社内報などを通じて、立場の違いが相手に与える影響を伝えていくことも効果的です。
指導方法が見直されていない
「自分が若いころは、このような指導が当たり前だった」という感覚のまま、かつて自分が受けた指導を部下にも行ってしまうケースがあります。
過去の経験だけに頼ると、現在の職場に合わない指導になる可能性があります。管理職研修などを定期的に行い、適正な指導方法や伝え方を学ぶ機会を設けていきましょう。
職場環境に原因や背景がある
過度な業務負担や無理な目標設定、コミュニケーションを取りにくい職場風土などが、パワハラの背景となる場合もあります。
行為者個人の問題として片づけるのではなく、業務量や目標設定が適正か、職場内で相談や意見交換がしやすいかも確認しましょう。
パワハラを予防するには、個人への研修だけでなく、職場環境そのものを見直す視点も必要です。
パワハラが起きたときの対応|パワハラ特有のポイント

パワハラの相談を受けたときは、事実関係の確認、被害を受けた労働者への配慮、再発防止など、あらかじめ定めた手順に沿って対応します。
とくに判断が難しいのが、適正な指導との線引きです。行為者が「業務上必要な指導だった」と主張し、相談者の認識と食い違うこともあるためです。
まずは、プライバシーに配慮しながら、相談者と行為者の双方から丁寧に話を聞き、主張が一致しない場合は、必要に応じて第三者にも事実を確認します。
そのうえで、言動の目的や経緯、伝え方などを踏まえ、業務上必要かつ相当な範囲の指導だったのか、その範囲を超えた言動だったのかを判断します。
確認した情報は、法令や厚生労働省の指針、社内の判断基準と照らし合わせて総合的に検討しましょう。
なお、相談を受けてから再発防止に至るまでの具体的な進め方については、以下の記事でくわしく解説しています。あわせてご覧ください。
関連記事:職場のハラスメント対応の進め方とは?相談から再発防止までの5ステップを解説
パワハラの判断や研修対応に迷ったら社労士に相談を

パワハラ対策で難しいのは、適正な指導とパワハラに該当する言動の線引きです。求められる指導の程度は、業務の内容や職場の状況などによって異なるため、一律に線引きできるものではありません。
そのため、他社の基準をそのまま取り入れるのではなく、法令や指針を踏まえながら、自社の業務や職場の実情に即した判断基準を整理しておくことが重要です。
とくに、以下のような場面では、判断に迷うことがあります。
- どこまでが指導で、どこからがパワハラなのか、自社の判断基準を整理したい
- 就業規則やハラスメント防止規程に、パワハラをどう盛り込むか決めたい
- 相談窓口をどう設けるか、管理職への研修をどう設計するか迷っている
長年その職場にいると、「うちではこれくらい普通」という感覚が、社内の基準になりがちです。
多くの企業の労務管理に関わる社会保険労務士に相談すれば、自社の判断基準や運用が実情に合っているかを、外部の視点から確認できます。社内だけでは気づきにくい課題についても、実務に即した助言を受けられるでしょう。
まとめ|社内でパワハラの判断基準を共有し、働きやすい職場環境を整えよう

本記事では、パワハラの定義と3つの要素、指導との違い、6つの行為類型、企業に義務づけられた措置、放置した場合のリスク、予防のための取り組みについて解説しました。
パワハラに該当するかどうかは、3つの要素をすべて満たすかによって判断されます。なかでも判断が難しいのが、「業務上必要かつ相当な範囲を超えた言動かどうか」です。適正な指導との違いが明確でないと、管理職が必要な指導をためらい、人材育成や職場のマネジメントに影響する可能性があります。
パワハラの範囲を見極める基準が社内で共有できていれば、管理職が適切な指導を行いやすくなり、労働者にとっても安心して働ける環境につながります。判断や対策に迷う場合は、社労士などの専門家の力を借りながら、自社に合ったルールや体制を整えていきましょう。
パワハラについて社労士に相談する
社労士を探す際には、全国7,000以上の事務所(全国の依頼可能な社労士の23%)の社労士が登録する、中小企業福祉事業団の「社労士ナビ」をご活用ください。
この企業と社労士をつなぐ日本最大級のポータルサイトでは、地域や得意分野などを指定して社労士を探せるので、自社のニーズに合った社労士が簡単に見つかります。
初回相談が無料の社労士も多いため、事務所のスタンスや人柄をしっかり見極めた上で依頼しましょう。