【令和8年度(2026年度)】労災保険料率はいくら?業種別の料率や、保険料の計算方法を解説
労災保険料率は、事業の種類ごとの労働災害リスクに応じて定められており、業種によって大きく異なります。
たとえば、令和8年度(2026年度)の場合、金融業・保険業・不動産業の労災保険料率は2.5/1,000、建築事業では9.5/1,000です。また、同じ業種であっても、過去の労働災害の発生状況によって料率が増減する仕組みもあります。
労災保険料は企業が全額負担するため、料率の変動は企業の保険料負担に直接影響します。適正なコスト管理のためには、自社に適用される料率を正しく把握しておくことが重要です。
本記事では、令和8年度(2026年度)の労災保険料率をもとに、業種別の料率や保険料の計算方法、メリット制の仕組み、年度更新の手続きまでわかりやすく解説します。自社に適用される労災保険料率を確認する際の参考としてお役立てください。
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労災保険料率とは?企業が負担する保険料の基本

労災保険料率とは、労災保険料を計算するために用いる割合を指します。労災保険料率は事業の種類ごとに定められており、自社に適用される率を確認したうえで保険料を算出する必要があります。
労災保険とは
労災保険とは、業務中または通勤中に発生した災害(けが・病気・死亡など)に対して、労働者やその遺族に必要な給付を行う制度です。正式名称は「労働者災害補償保険」といい、国が運営しています。
原則として、労働者を1人でも使用する事業は適用対象となり、パート・アルバイトなどの雇用形態にかかわらず労働者が対象です。
労災保険料は企業が全額負担
労災保険料は、原則として企業が全額を負担します。健康保険や厚生年金保険のように企業と労働者で折半する仕組みではなく、労働者本人が保険料を負担することはありません。
労災保険料率は業種ごとに異なる
労災保険料率は、業種ごとの労働災害の発生状況などを踏まえて設定されています。そのため、事業の種類によって適用される料率が異なります。
業種別の労災保険料率は、次章で詳しく解説します。
【令和8年度(2026年度)】労災保険料率(業種別)

労災保険料率は、事業の種類に応じて9つの大分類に分かれており、さらに全部で54の業種区分が設けられています。
主な事業の種類と労災保険料率は、以下のとおりです。
【主な事業の種類と労災保険料率】
| 分類 | 事業の種類 | 労災保険料率 |
|---|---|---|
| 建設事業 | 建築事業 (既設建築物設備工事業を除く) |
9.5/1,000 |
| 製造業 | 食料品製造業 | 5.5/1,000 |
| 金属材料品製造業 (鋳物業を除く) |
5/1,000 | |
| 運輸業 | 交通運輸事業(旅客) | 4/1,000 |
| 貨物取扱事業(貨物) | 8.5/1,000 | |
| その他の事業 | ビルメンテナンス業 | 6/1,000 |
| 通信業、放送業、新聞業又は出版業 | 2.5/1,000 | |
| 卸売業・小売業・飲食店 | 3/1,000 | |
| 金融業・保険業・不動産業 | 2.5/1,000 | |
| その他の各種事業 (教育業・情報サービス業・介護事業など) |
3/1,000 |
労災保険料率は企業単位ではなく、事業単位で適用されます。複数の事業を運営している企業では、事業ごとに該当する料率を確認し、保険料を計算する必要があります。
新たな事業を開始したり、事業内容の変更があったりして該当区分に悩んだ場合は、事業所がある管轄の労働基準監督署に相談するとよいでしょう。
労災保険料率の計算式と計算例

労災保険料は、企業が労働者に支払う賃金総額に労災保険料率を掛けて計算します。
計算式は以下のとおりです。
【労災保険料の計算式】
| 労災保険料=賃金総額(千円未満切り捨て)×労災保険料率 |
参考:厚生労働省|令和7年度(継続事業用)労働保険年度更新申告書の書き方P.21
賃金総額とは
賃金総額とは、企業が労働者に支払う賃金・手当・賞与など、労働の対償として支払うものの総額を指します。税金や社会保険料などを差し引く前の支給額で計算します。
パート・アルバイトに支払う賃金も含まれる一方で、役員報酬や退職金など、労働の対償といえないものは原則として賃金総額に含まれません。
労災保険料は賃金総額をもとに計算されるため、漏れや誤りがないよう正確に集計しましょう。
関連記事:【労働保険の担当者必見!】賃金総額とは?含まれるもの・含まれないもの一覧と計算方法を徹底解説
労災保険料の計算例
労災保険料の具体的な計算例は以下のとおりです。
計算例①|小売業・年間賃金総額5,000万円の場合
- 小売業の労災保険料率:3/1,000
- 年間労災保険料:5,000万円×3/1,000=15万円
計算例②|食料品製造業・年間賃金総額5,000万円の場合
- 食料品製造業の労災保険料率:5.5/1,000
- 年間労災保険料:5,000万円×5.5/1,000=27万5,000円
計算例③|建築事業・年間賃金総額5,000万円の場合
- 建築事業の労災保険料率:9.5/1,000
- 年間労災保険料:5,000万円×9.5/1,000=47万5,000円
このように、労災保険料は賃金総額と業種ごとの労災保険料率によって決まります。
労災保険料率を増減させる「メリット制」の仕組み

メリット制とは、事業ごとの労働災害の発生状況などに応じて労災保険料率または保険料額を調整する制度で、保険料負担の公平性の確保と労働災害防止の促進を目的としています。
同じ業種であっても、作業内容や設備、安全管理の取り組み状況などによって労働災害の発生状況には差が生じます。メリット制では、一定期間の保険給付と保険料の比率などをもとに、事業ごとの差を労災保険料率または保険料額に反映する仕組みです。
メリット制の増減率
メリット制の増減率は原則として最大±40%ですが、事業の種類や制度区分によっては、±35%または±30%となる場合があります。
たとえば、本来の保険料が年間100万円の企業で最大40%の増減が適用される場合には、保険料額は60万円から140万円の範囲で変動する可能性があります。事業ごとの実績が、保険料負担に反映される点が特徴です。
メリット制の対象となる事業
メリット制は、すべての事業に適用されるわけではなく、事業の種類によって対象が定められています。
対象となる事業は、以下の3つです。
- 継続事業:
事業期間が定められていない事業で、工場、店舗、事務所など継続的に事業活動を行うものが該当します。製造業、小売業、飲食業、サービス業など、多くの企業がこの区分に含まれます。 - 一括有期事業:
建設や立木の伐採の事業のうち、複数の小規模な工事をまとめて労働保険の保険関係を成立させているものが該当します。 - 単独有期事業:
大規模なビル建設や道路工事、トンネル工事など、有期事業のうち工事ごとに個別に労働保険の保険関係を成立させるものが該当します。
また、中小企業における労働災害防止活動を一層促進するため、所定の安全衛生措置を講じた中小企業事業主を対象に「特例メリット制」が設けられています。
これは、通常は最大±40%のメリット増減率を、最大±45%まで拡大して適用する制度です。なお、特例メリット制は、メリット制の適用がある継続事業であることなど、一定の要件を満たす場合に適用されます。
このように、メリット制では事業ごとの実績に応じて労災保険料の負担が調整されます。企業は、自社の事業がメリット制の対象となるかを確認するとともに、労働災害防止の取り組みを継続していくことが重要です。
特別加入制度の対象者と保険料

労災保険料は通常、事業ごとの労災保険料率を賃金総額に掛けて計算します。一方で、中小企業事業主や一人親方などが加入できる「特別加入制度」では、通常の労災保険料とは保険料の計算方法が異なります。
特別加入制度の対象者
特別加入制度は、業務の実態などから労働者に準じて保護することが適当と認められる人を対象に設けられた制度です。
特別加入できる方の範囲は、以下のとおりです。
- 中小企業事業主等
- 一人親方等
- 特定作業従事者
- 海外派遣者
なお、中小企業事業主等には、事業主とともに事業に従事する家族従事者も含まれます。家族従事者は原則として労働基準法上の労働者には該当しませんが、特別加入制度により労災保険に加入することができます。
特別加入の労災保険料
特別加入の保険料は、労働者の賃金総額をもとに計算する通常の労災保険料とは異なり、「給付基礎日額」を基準に計算します。
【特別加入保険料の計算式】
| 特別加入保険料(年間)=給付基礎日額×365×特別加入保険料率 |
給付基礎日額とは、労災保険の給付額を算定する基礎となる日額です。加入者自身が一定の範囲内で選択でき、設定した日額に応じて保険料や給付額が変わります。
対象ごとの特別加入制度の詳細は、以下の関連記事をご確認ください。
関連記事:個人事業主の労災保険|フリーランスも加入できる特別加入制度をやさしく解説
関連記事:役員でも入れる?労災保険の特別加入制度の仕組み・手続き・注意点を解説!
関連記事:一人親方は労災保険に入れる?特別加入制度と保険料・補償内容をわかりやすく解説
関連記事:中小事業主も入れる労災保険「特別加入制度」とは?保険料・メリット・注意点まで完全解説
労災保険料率の申告・納付の方法|年度更新

労災保険料の申告・納付は、雇用保険料とあわせて「労働保険料」として、毎年「年度更新」により行います。
ここでは、労働保険料の申告・納付に関わる年度更新の仕組みを解説します。
年度更新とは
年度更新とは、前年度の労働保険料を確定させて精算し、あわせて当年度の概算保険料を申告・納付する手続きです。労働保険料は、毎年4月1日から翌年3月31日までの1年間(保険年度)を単位として計算します。
労働保険料は賃金総額をもとに算定するため、年度が終了しないと正確な金額が確定しません。そのため、まず当年度分の保険料を見込みで納付し、翌年度の年度更新で前年度分を確定させて精算する仕組みです。
年度更新では、企業は次の2つの保険料をあわせて申告・納付します。
- 前年度の保険料を確定させて精算する「確定保険料」
- 当年度の保険料を見込みで納付する「概算保険料」
年度更新の手続きは、毎年6月1日から7月10日まで(土日祝除く)の期間に行います。
また、概算保険料額が一定額以上の場合は、労働保険料を分割して納付する「延納(分割納付)」が利用可能です。
年度更新の申告・納付先
年度更新では、「労働保険概算・確定保険料/石綿健康被害救済法一般拠出金申告書」(以下申告書)を作成し、保険料とあわせて提出します。
申告書の提出先は、金融機関、所轄の都道府県労働局または労働基準監督署です。電子申請や電子納付にも対応しています。
ただし、納付する保険料がない場合は金融機関では受け付けられないため、申告書のみを所轄の都道府県労働局または労働基準監督署へ提出、もしくは郵送で手続きを行います。
なお、申告書は、労働保険番号や事業場情報などが印字された状態で送付されるのが一般的です。送付された申告書や手引きを確認しながら作成すると、記載漏れを防ぎやすくなります。特に、賃金総額の集計や料率の適用に誤りがないか、提出前に確認することが大切です。
年度更新でよくある注意点
年度更新では、以下の2点に注意が必要です。
- 手続き期限を守らなかった場合、追徴金が発生する可能性がある
年度更新の手続きが遅れると、政府が労働保険料や一般拠出金の額を決定することがあるほか、追徴金が課される場合があります。追徴金は、納付すべき保険料・一般拠出金の10%です。 - 一般拠出金率もあわせて申告・納付する
年度更新では労災保険料や雇用保険料だけでなく、石綿健康被害救済法に基づく「一般拠出金」もあわせて申告・納付します。一般拠出金はすべての事業が対象となり、労働者に支払った賃金総額に一般拠出金率(1,000分の0.02)を掛けて算定します。
一般拠出金は見落とされやすい項目のため、申告書を作成する際には計算漏れがないか確認し、期限内に申告・納付を行いましょう。
関連記事:労働保険とは?労災保険・雇用保険との違いから加入条件をわかりやすく解説!
労災保険料の計算や申告で注意すべきポイント

ここでは、労災保険料率について特に注意したいポイントを解説します。
労災保険料率は原則3年ごとに見直される
労災保険料率は、事業の種類ごとの労働災害の発生状況などを踏まえて、原則として3年ごとに見直されます。
直近では令和6年度に改定され、業種平均の労災保険料率は4.5/1,000から4.4/1,000へ引き下げられました。令和8年度(2026年度)の労災保険料率は、令和7年度と同じです。
労災保険料率が改定された場合、企業が負担する労災保険料も変わるため、年度更新の際には最新の料率を確認しましょう。
パート・アルバイトの賃金も賃金総額に含まれる
労災保険料は、すべての労働者に支払った賃金総額をもとに計算します。正社員はもちろん、パートやアルバイト、日雇い労働者など、雇用形態にかかわらず支払った賃金を賃金総額に含めます。
賃金総額を集計する際は、雇用形態で漏れが出やすいため、給与システムや勤怠管理のデータをもとに全員分を確認しましょう。
役員報酬は原則として賃金総額に含まれない
労災保険は労働者を対象とした制度のため、企業の経営を担う役員は原則として対象外です。そのため、役員に支払う報酬は賃金総額に含まれません。ただし、役員であっても、労働者としての職務を兼ねる「兼務役員」の場合は、労働者としての職務に対する賃金部分は賃金総額に含まれます。
兼務役員がいる事業の場合は、報酬のうち労働者としての職務に対応する賃金部分に該当する金額を事前に整理しておくと、賃金総額の集計漏れを防ぎやすくなります。
出向社員と派遣社員では取り扱いが異なる
出向社員は、原則として出向先企業の指揮監督のもとで働くため、出向先の労災保険が適用されます。一方、派遣社員は派遣元との雇用関係に基づいて働くため、派遣元の労災保険が適用されます。
取り扱いに不明点がある場合は、所轄の労働基準監督署へ確認すると安心です。
まとめ|労災保険料率の理解と適切な手続きが重要です

本記事では、労災保険料率の仕組みと計算方法、メリット制や特別加入制度の概要、年度更新による申告・納付の流れについて解説しました。
労災保険は、原則として労働者を使用する事業が適用対象となり、保険料は企業が全額負担します。業種ごとに料率が異なるうえ、賃金総額の集計やメリット制の適用確認、年度更新の期限管理など、対応すべき項目は多岐にわたります。
計算ミスや申告漏れがあると、追徴金や保険料の過不足につながる可能性もあるため、正確な制度理解と適切な手続きが重要です。
労災保険料の計算や年度更新の手続きは、社労士に任せることでミスのリスクを大幅に軽減できます。専門家に相談することで制度への理解も深まり、安心して労務管理を進められるでしょう。
労災保険料率について社労士に相談する
社労士を探す際には、全国6,000以上の事務所(全国の依頼可能な社労士の20%)の社労士が登録する、中小企業福祉事業団の「社労士ナビ」をご活用ください。
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会社が負担する社会保険料の種類と負担割合をまとめて確認したい方は、以下の記事をご参照ください。