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更新日:2026 / 02 / 16
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178万円の壁とは?2026年の税制改正で何が変わる?企業と労働者への影響を解説

令和8年度税制改正大綱では、所得税における基礎控除や給与所得控除の見直しにより、課税されない年収の目安(課税最低限)を段階的に引き上げる方針が示されました。この改正によって注目されているのが、いわゆる「178万円の壁」です。

この改正により、年収の壁を意識した働き控えが起こりにくくなるほか、中間所得層では手取り収入の増加が期待されます。

一方で、社会保険の加入判定や扶養の考え方の基準となる106万円・130万円の壁は変わっていません。そのため、年収だけで働き方を判断しないよう、所得税と社会保険の違いを踏まえた正確な制度理解が必要です。

本記事では、制度改正の全体像から、106万円・130万円の壁との違い、178万円の壁が企業と労働者にどのような影響を与えるのかまで、実務の視点で整理します。

制度改正を正しく理解し、人事・労務対応をスムーズに進めるために、ぜひ最後までご覧ください。

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178万円の壁とは

「178万円の壁」とは、所得税における基礎控除や給与所得控除の見直しにより、所得税がかからない年収の目安を178万円相当※まで引き上げる税制改正の通称です。2026年分以降(令和8年分以降)の所得税から、段階的な引き上げを経て適用される予定です。

この課税最低限は、近年の税制改正を通じて、年度ごとに次のように段階的に引き上げられています。

  • 2024年分:103万円(基礎控除48万円+給与所得控除55万円)
  • 2025年分:160万円(基礎控除95万円+給与所得控除65万円)
  • 2026年分以降:178万円相当※(基礎控除62~104万円+給与所得控除74万円)

※給与所得の水準によって適用額が調整されるため、「178万円相当」と表記しています。

以下では、制度が改正された背景、実施期間、対象者の範囲を詳しく解説します。

制度改正の背景

「178万円の壁」への引き上げが本格的に議論されるようになったのは2024年のことです。背景には、課税されない年収の目安(いわゆる課税最低限)の水準が長年据え置かれてきた一方で、最低賃金は大きく上昇を続けてきたというズレがあります。

たとえば、103万円の壁が始まった1995年当時、全国の最低賃金は平均611円でしたが、30年を経た2025年には1,121円と、約1.83倍に上昇しました。

このような状況下では、同じ時間働いても年収が上がりやすくなり、103万円を超えないよう労働時間を調整する、いわゆる「働き控え」が広がる結果となりました。制度本来の趣旨とは逆行する、現実との乖離が強まっていたのです。

こうした実態を是正するため、最低賃金の上昇にあわせて課税最低限を見直し、2026年分以降の所得税制度において、178万円相当への引き上げが決定されています。

いつから適用される?開始時期と実施期間

178万円への引き上げについては令和8年度税制改正大綱に盛り込まれており、2026年の通常国会で関連法案が成立した場合、2026年分の所得税から適用される見通しです。既に、2026年1月の給与で所得税額が変わったことに気付いている人もいらっしゃるかもしれません。

制度としては、基礎控除および給与所得控除の額を一時的に加算する「特別措置」が設けられ、2026年分・2027年分の2年間に限り適用される予定です。なお、2028年以降については、物価上昇や経済状況、生活保護基準額の推移などを踏まえ、控除額の再検討が行われる方針が示されています。

対象となる所得層の範囲

「178万円の壁」は、すべての労働者に一律で同じ影響が及ぶ制度ではありません。今回の措置は、主に中低所得層を対象とした制度設計です。

具体的には、基礎控除の上乗せ措置は年収665万円以下の労働者を主な対象としており、これは全納税者のおよそ8割に相当します。

一方、年収665万円を超える層については、控除額が段階的に縮小される仕組みとなっています。そのため、所得水準によっては、178万円相当の非課税枠の恩恵を十分に受けられない場合がある点にも注意が必要です。

178万円の壁と106万円・130万円の壁の違い

178万円の壁とあわせて語られることの多い、106万円の壁・130万円の壁は、関係する制度が異なります。これらを混同してしまう労働者も多く、企業には正確な説明が求められます。

これらの壁の主な違いは、以下のとおりです。

178万円の壁

  • 金額の目安:178万円相当
  • 関係する制度:所得税
  • 制度上の位置づけ:所得税の課税最低限を示す年収の目安
  • 補足:実際の課税の有無は、所得の種類や控除の適用状況によって異なる

106万円の壁

  • 金額の目安:約106万円
  • 関係する制度:社会保険
  • 制度上の位置づけ:社会保険の加入対象となるかどうかの判定基準
  • 補足:従業員51人以上の企業で、週20時間以上勤務、月収8.8万円以上などの要件を満たす場合に適用

130万円の壁

  • 金額の目安:130万円
  • 関係する制度:社会保険(扶養)
  • 制度上の位置づけ:社会保険の扶養に入れるかどうかの判定基準
  • 補足:扶養に入っている場合、この金額を超えると一般的には扶養から外れる

このように、178万円の壁は所得税に関する制度です。社会保険の加入や扶養判定には直接影響しないため、106万円・130万円といった社会保険の壁は引き続き意識する必要があります。

社会保険の詳しい仕組みや要件については、以下の記事でわかりやすくまとめています。あわせてご覧ください。

(関連記事:社会保険はいつから?入社日や設立時の加入開始日・要件・手続きまとめ

178万円の壁が労働者に与える影響

178万円の壁の見直しにより、労働者の働き方や手取りに対する考え方にも変化が生じますが、すべての労働者に同じ影響があるわけではありません。

ここでは、178万円の壁によって与える影響を、労働者の視点で整理します。

所得税を理由とした「働き控え」の緩和

課税されない年収の目安が178万円相当まで引き上げられることで、所得税を理由とした働き控えは起こりにくくなります。

特に、年末にシフトを減らすなど、所得税を理由に就業調整を行っていた労働者には、より柔軟に働ける環境が整うでしょう。また、就業時間が増えることで業務への習熟度が上がり、将来的に就業機会や働き方の選択肢が広がることも考えられます。

所得税の壁を気にせず必要な分だけ働きやすくなる点は、労働者にとって大きなメリットといえます。

中間所得層では手取り増加

中間所得層については、基礎控除や給与所得控除の引き上げによってこれまで課税されていた所得の一部が非課税となります。

特にアルバイトやパートで働いていた方は影響が大きく、2026年からは社会保険料等控除後の給与が105,000円未満であれば所得税が0円となります。

例えば、社会保険料等控除後の給与が10万円だった人は、2025年12月までは所得税720円が徴収されていましたが2026年1月からは0円となりました(参考:給与所得の源泉徴収税額表(令和7年分)|国税庁

年収階級によって差はあるものの、年収665万円以下の人は基礎控除が104万円まで引き上げられるため、家計への直接的な恩恵として、手取り収入の増加を実感する層も少なくありません。

社会保険の壁の存続

注意したいのは、178万円の壁が引き上げられても、社会保険の壁は変わらないという点です。

年収が130万円を超えると、扶養から外れ国民健康保険や国民年金の保険料を自ら納める必要があります。また、就労している人は企業規模や労働時間など一定の要件を満たす場合には、106万円を超えた時点で社会保険への加入が求められます。

社会保険料は、健康保険料や厚生年金保険料などが毎月の給与から一定割合で差し引かれるため、所得税と比べて負担を実感しやすい点が特徴です。その結果、社会保険に加入した場合、社会保険の負担が所得税の軽減分を上回り、「手取りが思ったほど増えない」「以前より減った」と感じるケースも少なくありません。

労働者は、所得税だけでなく、社会保険を含めた全体像を踏まえて、働き方を判断することが重要です。

世帯全体で見た場合の注意点

労働者本人の収入が増えた場合でも、世帯全体で見て必ずしもプラスになるとは限りません。

年収が一定額を超えることで、配偶者の扶養から外れるだけでなく、企業の家族手当・扶養手当の支給要件から外れるケースもあります。この場合、本人の手取りは増えても、世帯全体の手取りでは減少する可能性もあります。

そのため、178万円の壁を意識して働き方を見直す際には、本人の収入だけでなく、世帯全体の収支を踏まえて判断する視点が大切です。

178万円の壁が企業に与える影響

178万円の壁の見直しは、企業にとっても無関係ではありません。労働力確保の面では前向きな変化が期待される一方で、人件費や実務負担の増加といった対応課題も生じます。

ここでは、178万円の壁によって企業側でどのような影響が想定されるのかを整理します。

労働力確保における選択肢の拡大

所得税がかかりにくくなることで、年収の壁を意識して働き控えをしていたパート・アルバイト労働者が、労働時間を増やしやすくなると考えられます。

その結果、企業側では、以下のような点で実務上の柔軟性が高まると考えられます。

  • 繁忙期にシフトを組みやすくなる
  • 突発的な欠員への対応力が高まる
  • サービス品質や業務の安定につながる

既存の業務に慣れた労働者の稼働時間が増えることで、新規採用や教育にかかるコストや手間を抑えやすくなる点も、企業にとって現実的な変化といえるでしょう。

人件費・社会保険料などのコスト増加

労働時間が増えることは、企業にとってのコスト増加にも直結します。

具体的には、以下の点に注意が必要です。

  • 労働時間の増加に伴う給与総額の増加
  • 最低賃金の引き上げと重なることによる時給水準の見直し
  • 労働時間が増加し社会保険の加入対象者が増えることによる、保険料の企業負担

特に、これまで扶養内で働いていた労働者が106万円・130万円の壁を超えて社会保険に加入する場合、企業は社会保険料の事業主負担分(概ね半分)を負担することになります。

これは、実質的な人件費が大きく増加する可能性がある点として、事前に把握しておく必要があります。

人事・労務の実務負担の増加

178万円の壁への対応は、コスト面だけでなく、実務面での変化も伴います。

たとえば、以下のような業務負担の増加が想定されます。

  • 給与計算や年末調整における所得税額計算の変更対応
  • 労働者からの制度に関する問い合わせへの対応
  • 社会保険の加入・喪失に関する手続き

労働者側が「178万円まで大丈夫」「どこまで働けるのか」といった点を誤解している場合、企業側には丁寧な説明と整理が求められます。

制度変更に伴う実務対応を円滑に進めるためにも、早めに社内体制を整理しておくことが重要です。

178万円の壁に向けて担当者が進めるべき準備

178万円の壁に備えるには、制度理解だけでなく、現場対応を見据えた準備が欠かせません。

ここでは、人事・労務担当者が今から進めておきたい準備を整理します。

労働者の現状把握と意向確認

まずは、自社で働く労働者の状況把握が欠かせません。特に、パート・アルバイトなどの短時間労働者は、年収の壁や社会保険の壁を意識して働いているケースが多く見られます。

そのため、次のような点をアンケートや面談を通じて確認しておくことが有効です。

  • 年収の壁を意識して就業調整をしているか
  • 所得税の非課税枠が広がった場合、労働時間を増やしたいと考えているか
  • 社会保険料の負担が発生しても、働き方を変えたいか

こうした意向を事前に把握しておくことで、今後のシフト設計や人員配置を、より現実的に検討しやすくなります。

短時間労働者の扶養・社会保険については、以下の記事でわかりやすくまとめています。あわせてご覧ください。

(関連記事:パート扶養はなくなる?2025年以降の年収の壁と社会保険の考え方

社内規定や給与システムの見直し

制度改正にあわせて、就業規則といった社内ルールや給与計算システムの見直しも必要になります。

たとえば、家族手当や扶養手当の支給条件を収入金額で定めている場合は規定の見直しが必要です。所得税上の扶養(2026年より160万円から178万円)か、社会保険上の扶養(130万円)とするかなどについて検討しましょう。

また、基礎控除や給与所得控除の見直しにより、年末調整の計算方法も変わります。現在使用している給与計算や年末調整の仕組みについて、制度改正に対応しているかを確認しておくことが大切です。

システム改修が必要な場合は、早めの対応が求められます。

労働者への周知と丁寧な説明

制度改正において特に注意したいのが、「178万円まで所得税がかからない」という情報だけが先行してしまうことです。

社会保険料の負担や扶養の考え方を十分に説明しないまま労働時間が増えると、後から「聞いていなかった」「思っていたのと違う」といったトラブルにつながりかねません。

そのため、説明会や社内資料などを通じて、所得税と社会保険の違いや年収が変わった場合の手取りの考え方を説明する必要があります。今回の改正では、個々の状況によって影響が異なるため、その点を整理して伝えましょう。

制度への誤解によるトラブルを防ぐため、社内で対応方針を共有し、担当者間で認識を揃えておくことが重要です。

178万円の壁対策で社労士に相談できること

178万円の壁への対応では、所得税と社会保険の両面を整理する必要があるため、専門家である社労士の支援が有効です。

ここでは、社労士に相談・依頼できる主な支援内容を整理します。

社会保険の加入・変更手続き

年収の壁を超えた場合には、健康保険や厚生年金への加入、扶養からの削除手続きなどが必要です。これらの社会保険の手続きは、要件の判断や書類作成が複雑になりやすく、対応を誤るとトラブルにつながる可能性もあります。

社労士に相談することで、最新の制度内容を踏まえた正確な手続きを任せられ、実務負担を軽減できます。

制度変更に伴う社内ルールの見直し

178万円の壁への対応では、家族手当や扶養手当の基準、短時間労働者の働き方など、社内ルールの見直しが必要になるケースも少なくありません。

社労士に依頼すれば、法令を踏まえた形で就業規則や賃金規程を整理でき、労働者との認識のズレやトラブルを防ぐことにつながります。

人手不足とコストを踏まえた人員計画の支援

社労士は、手続きだけでなく、企業の状況に応じた人員配置や賃金制度の考え方について助言できます。

178万円の壁によって労働時間が増える場合、人手不足の解消につながる一方で、人件費や社会保険料の負担も増える可能性があります。

社労士の助言を受けることで、企業のコスト管理と労働者の手取り確保のバランスを踏まえた、現実的な人員計画やシフト設計を検討しやすくなるでしょう。

まとめ|178万円の壁への備えは社労士との連携が安心

本記事では、178万円の壁について、制度改正の背景から労働者・企業への影響、実務対応のポイントまで整理しました。

所得税の課税最低限(いわゆる非課税枠)が引き上げられる一方で、社会保険の壁は引き続き残るため、単純に年収だけで判断できる制度ではありません。企業としては、労働力確保の可能性と人件費・実務負担の増加を踏まえ、労働者への丁寧な説明と社内体制の整理が求められます。

早めに社労士と連携し、制度に合わせた社内ルールの見直しや実務対応を整理していくことが有効です。専門家のサポートがあれば、トラブルを避けながら、自社の実情に合った形で制度改正に対応できます。

178万円の壁について社労士に相談する

社労士を探す際には、全国6,000以上の事務所(全国の依頼可能な社労士の20%)の社労士が登録する、中小企業福祉事業団の「社労士ナビ」をご活用ください。

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初回相談が無料の社労士も多いため、事務所のスタンスや人柄をしっかり見極めた上で依頼しましょう。

執筆者

中小企業福祉事業団 編集部

 
日本最大級の民間社労士団体として、社労士を介して中小企業を支援する活動を行っています。本サイト「社労士ナビ」は、課題を抱える中小企業が、課題を解決できる社労士を探して、巡り合えるように構築しました。「社労士ナビ」が中小企業の人事・労務課題を解決する一助になれば幸いです。

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