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社会保険・労働保険
更新日:2025 / 08 / 07
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社会保険とは?概要から保険料の計算方法まで徹底解説!

企業が従業員を雇用する際、社会保険の加入は法律で義務付けられており、適切な対応が求められます。社会保険は、従業員の生活を守るだけでなく、企業の信頼向上や採用競争力の強化にもつながる重要な制度です。

一方で、適用条件を正しく理解せずに未加入のままにしていると、過去の保険料の請求や罰則が科されるリスクもあります。

さらに、2024年10月から従業員51人以上の企業でも、一定要件を満たしたパート・アルバイトに社会保険の適用が義務化されるなど、適用範囲が拡大しています。企業の労務管理担当者は、最新の法改正を把握し、適切な対応を行うことが不可欠です。

本記事では、企業が知っておくべき社会保険の仕組み、加入条件、手続きの流れについてわかりやすく解説します。

「自社の社会保険手続きを適切に進めたい」「加入条件を確認したい」という方は、ぜひ最後までお読みください。

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社会保険とは?

社会保険とは、病気・老後などの生活リスクに備える公的な保険制度です。日本の社会保険は、以下の5つの制度で構成されています。

  • 健康保険(医療費の補助)
  • 介護保険(要介護者の生活支援)
  • 厚生年金保険(老後・障害時の保障)
  • 雇用保険(失業・休業時のサポート)
  • 労災保険(業務中の事故・ケガの補償)

このうち、狭義の意味で、健康保険・介護保険・厚生年金保険の3つを「社会保険」、雇用保険・労災保険を「労働保険」と区別します。

本記事では、狭義の意味での「社会保険」について解説します。

労働保険についての詳しい解説は、以下の記事をご参考ください。
労働保険とは?労災保険・雇用保険との違いから加入条件をわかりやすく解説!

社会保険の種類

企業は、社会保険の制度を理解し、適切に運用することが求められます。

以下、社会保険の種類や特徴を一覧にまとめています。

【社会保険の種類と特徴】

制度名 対象者 保険料負担 主な給付・補償
社会
保険
健康保険
(医療保険)
従業員とその扶養家族 企業と従業員で折半
  • 医療費(自己負担は3割)
  • 傷病手当金(給与の3分の2)
  • 出産手当金
  • 高額療養費制度
介護保険 40歳以上の
健康保険加入者
企業と従業員で折半
(40歳以上のみ)
  • 介護サービス費用の一部補助
    ※要介護・要支援認定者が対象
厚生年金保険 企業の従業員
(一定の条件を
満たすパート・
アルバイト含む)
企業と従業員で折半
  • 老齢年金(老後の年金)
  • 障害年金、遺族年金
  • 国民年金よりも手厚い支給額

社会保険は、企業の経営安定と従業員の生活を支える制度です。適切な手続きを行うことで、企業の信頼性向上や人材確保につながります。

社会保険の目的と役割

社会保険の目的は、「従業員の生活を守りながら、企業の安定した経営を支援すること」です。適切に運用することで、企業・従業員の双方にメリットがあります。

企業にとってのメリット

  • 人材確保&定着率向上:社会保険が充実している企業は、採用や離職防止に有利
  • 法令厳守とリスク回避:適切な加入手続きを行うことで、法令違反のリスクを回避できる

従業員にとってのメリット

  • 安心して働ける:病気・ケガ・老後に備えられ、安定した就業が可能
  • ライフイベントをサポート:出産・介護などの給付金が受け取れる
  • 将来の年金が手厚い:厚生年金の加入で、国民年金だけよりも受給額が増え、将来の生活保障が充実する

社会保険は単なる義務ではなく、企業の持続的成長と従業員の生活を支える重要な制度です。

社会保険と国民健康保険の違いとは

「社会保険(健康保険)」と「国民健康保険」は、加入対象や保険料負担、給付内容に違いがあります。

項目 社会保険(健康保険) 国民健康保険
加入対象 企業に勤める従業員とその扶養家族 自営業者・フリーランス・
退職者や非雇用者(年金生活者など)
保険料 企業と従業員で折半(給与天引き) 全額自己負担
給付内容 傷病手当金・出産手当金あり 傷病手当金・出産手当金の制度は基本的になし
(※一部の国民健康保険組合では独自給付あり)
管轄 健康保険組合または協会けんぽ 市区町村または国民健康保険組合

社会保険(健康保険)は企業の従業員が対象で、保険料は企業と折半され、給与天引きで管理されます。

また、傷病手当金や出産手当金の給付があるため、従業員の生活を支える重要な役割を果たします。

一方、国民健康保険は自営業者やフリーランスなどが加入し、保険料は自己負担です。

傷病手当金や出産手当金の制度は基本的にないため、加入者の保障内容には差があります。

厚生年金と国民年金の違いとは

「厚生年金」と「国民年金」は、加入対象・保険料負担・受給額が異なります。

項目 厚生年金 国民年金
加入対象 会社員・公務員など 自営業・フリーランス・20歳以上の学生・
専業主婦など
保険料 企業と従業員で折半 全額自己負担
受給額 国民年金に加えて、給与額に応じた
「報酬比例部分」などが上乗せされる
定額制の基礎年金のみ
管轄 日本年金機構 日本年金機構

厚生年金は企業の従業員が対象で、保険料は企業と従業員が折半です。給与額に応じて受給額が決まる「報酬比例部分」などが加算され、国民年金よりも手厚い保障が受けられます。

国民年金は自営業者やフリーランスなどが対象で、保険料は全額自己負担です。受給額は「定額制」であり、厚生年金よりも受給額が低くなります。

企業には厚生年金の加入義務があり、特に法人企業は従業員の人数に関わらず加入が必須です。

特に昨今は「福利厚生の充実」を重視する求職者が増えており、社会保険・厚生年金を完備している企業は人材確保の面でも有利になります。

社会保険に加入する条件は?

企業が一定の条件を満たす場合、社会保険の加入が義務付けられます。特に、法人企業と個人事業主では適用基準が異なるため、注意が必要です。

企業の社会保険に加入する条件

  • 法人企業(株式会社、合同会社など):従業員が1人でもいれば加入義務あり
  • 個人事業主(自営業):常時5人以上の従業員を雇用する場合、加入義務あり(一部の例外業種を除く)

個人事業主(自営業)で社会保険の加入義務がない業種は、飲食業、理美容業、農林水産業、旅館業などです。

従業員の社会保険に加入する条件

従業員が社会保険に加入する条件は、雇用形態によって異なります。以下のいずれかを満たす場合、社会保険の加入が必要です。

正社員・契約社員の加入条件

  • 1週間の所定労働時間が正社員の3/4以上
  • 1か月の勤務日数が正社員の3/4以上

パート・アルバイト(短時間労働者)の加入条件

2024年10月から短時間労働者の社会保険の適用範囲が拡大されています。これまで「従業員101人以上の企業」が対象だったものが、「51人以上の企業」に変更され、中小企業の多くが新たに適用対象となりました。

パート・アルバイトも、以下のすべてを満たす場合、社会保険への加入が必要です。

  • 企業規模:従業員51人以上の企業(2024年10月から適用)
  • 労働時間:週20時間以上
  • 月額賃金:8.8万円以上(残業代、交通費は含まない)
  • 雇用見込み:2か月以上

社会保険の加入義務については、以下の記事でわかりやすくまとめています。あわせてご覧ください。
(関連記事:社会保険の加入義務とは?パートの適用拡大と企業の対応ポイントを解説

社会保険料の計算方法と負担額

社会保険料は、企業と従業員が分担して負担する仕組みです。

企業が支払う保険料は、給与の約30%が目安とされています。徴収した社会保険料は、年金事務所などの管轄機関に納付します。

社会保険料の計算方法

社会保険料は、「標準報酬月額」をもとに計算されます。

標準報酬月額とは、毎月の給与(基本給+手当など)を一定の等級に当てはめた金額のことです。この標準報酬月額に、各保険の料率を掛けて社会保険料を算出します。

〈計算式〉
標準報酬月額✕各保険の料率(企業+従業員負担分)=総社会保険料

総社会保険料を企業と従業員で折半し、それぞれが負担します。

社会保険料の決定タイミング

定時決定(年1回)

  • 毎年4月~6月の給与平均額をもとに9月に標準報酬月額を決定
  • 翌年8月まで適用(原則として年度内は変更なし)

随時改定(給与変動時)

  • 昇給・降格などで、給与が標準報酬月額等級の2等級以上変動(約2万円~4万円の増減)した場合に適用
  • 変動後3ヶ月間の給与平均をもとに標準報酬月額を再計算
  • 変更は4ヶ月目の給与から適用される

標準報酬月額に対する社会保険料の割合(全国平均)

企業が負担する社会保険料の割合は、地域・業種・保険制度によって異なります。以下は全国平均の目安です。

■ 標準報酬月額に対する社会保険料の割合(全国平均:2025年3月時点)
保険の種類 給与に対する
割合
(全国平均)
企業負担 従業員
負担
備考
健康保険
(協会けんぽの場合)
約10% 約5% 約5% 都道府県ごとに
異なる
介護保険
(40歳~64歳まで)
(協会けんぽの場合)
1.59% 0.8% 0.8% 全国一律
40歳から64歳までの
被保険者
厚生年金保険 18.3% 9.15% 9.15% 全国一律
合計 約29.89% 約14.95% 約14.95% 地域によって
若干異なる

参考:健康保険介護保険厚生年金保険
介護保険は40歳~64歳までの被保険者が対象で、40歳未満の従業員には適用されません。

例えば、35歳で標準報酬月額30万円の従業員の場合:
社会保険料の総額:約84,900円
企業負担:約42,450円
従業員負担:約42,450円
40歳~64歳までの被保険者は、介護保険料(1.59%)が追加されます。
(全国平均:2025年3月時点)

地域ごとの保険料の違い

企業が負担する社会保険料は、都道府県ごとの健康保険料率などによって異なります。

料率は毎年改定されるため、事業計画や予算策定に影響を及ぼさないよう、最新の情報を事前に確認することが重要です。

健康保険料(都道府県別)


引用:協会けんぽ

健康保険料率は都道府県ごとに異なり、2025年度の料率では、最も高い佐賀県(10.78%)と、最も低い沖縄県(9.44%)の間に1.34%の差があります。

健康保険は、「協会けんぽ」と「健康保険組合」の2種類があり、それぞれの運営状況や地域によって料率が決まります。

社会保険の手続きの流れと必要書類

企業が適切に社会保険を運用するためには、以下の2つの手続きを正しく行う必要があります。

  • 適用事業所の新規届出(企業の加入手続き)
  • 従業員の資格取得(従業員の加入手続き)


引用:日本年金機構(健康保険・厚生年金保険被保険者資格取得届)

手続きを怠ると、過去の保険料を遡って請求されるだけでなく、罰則の対象となる可能性があります。

企業にとって大きなリスクにつながるため、正しい手順で速やかに手続きを進めることが重要です。

加入手続きに必要な書類と提出期限

企業が新たに社会保険を適用する場合や、従業員を加入させる場合には、定められた期限内に手続きを行う必要があります。

以下に、必要な手続きと提出期限をまとめています。

加入手続きに必要な書類と手続き期限・提出先
手続き 必要書類 提出先 提出期限
適用事業所の届出 健康保険・
厚生年金保険新規適用届
年金事務所 事業開始から5日以内
従業員の資格取得 健康保険・
厚生年金保険被保険者資格取得届
年金事務所 入社日から5日以内
扶養家族の登録 健康保険被扶養者(異動)届 年金事務所 扶養変更があった日から5日以内
社会保険料の納付 納付書 金融機関、年金事務所 対象月の翌月末日までに納付

加入手続きの際は、提出先の最新情報を必ずご確認ください。

期限を守らなかった場合のリスク

社会保険の手続きを期限内に行なわない場合、以下のようなリスクが発生します。

1、過去に遡って保険料を請求される

未届け期間がある場合、企業は過去2年分の社会保険料を遡って支払う義務が生じます。(健康保険法第197条・厚生年金保険法第102条)

2、罰則の対象になる

意図的な未加入や虚偽申請があった場合、6か月以下の懲役または50万円以下の罰金が科せられる可能性があります。(健康保険法第208条・厚生年金保険法第163条)

3、従業員の不利益につながる

未加入期間中に病気やケガをした場合、保険給付を受けられず、高額な医療費を自己負担する可能性があります。その結果、従業員からの信頼を損なう恐れがあります。

4、行政指導が入る可能性がある

社会保険未加入が発覚すると、日本年金機構が是正指導を行い、企業に加入を求めます。状況によっては、調査が入ることもあります。

社会保険の手続きには、専門的な知識が必要な場面も多く、特に新規適用時や複雑なケースでは、社労士に相談することで手続きをスムーズに進められます。

退職時に利用できる健康保険の任意継続制度とは

従業員が退職後に検討すべき選択肢の1つが、健康保険の「任意継続制度」です。

この制度を利用すると、退職後も最大2年間、在職時と同じ健康保険に加入でき、医療費の負担を軽減できます。

特に、再就職までの期間が空く場合や、扶養家族がいる従業員にとって、医療費負担の軽減に役立ちます。

ただし、保険料は全額自己負担(社会負担分も含む)となるため、国民健康保険との比較が重要です。

退職後も健康保険を継続するための条件と注意点
項目 内容
対象 退職前に健康保険に継続して2ヶ月以上加入していた従業員
申請期限 退職日の翌日から20日以内(期限を過ぎると加入不可)
保険料 在職時の約2倍(企業負担分も自己負担となるため)、上限額あり(2024年度は30万円)
加入期間 最長2年間(途中で国民健康保険へ切り替え不可)
支払い方法 毎月の銀行振込・口座振替(1日でも遅れると資格喪失のリスクあり)
申請者 従業員本人(企業ではなく、個人が申請する必要がある)
申請先 協会けんぽ、または加入している健康保険組合

企業側が知っておくべきポイント

  1. 退職時に「任意継続の手続きは本人が行う」と明確に伝える
  2. 申請期限(退職後20日以内)を周知し、早めの対応を促す
  3. 従業員が迷わないよう、申請先(協会けんぽ、または健康保険組合)を確認して案内する

従業員のためにも、企業側が制度を理解し、適切に対応することが重要です。

よくある質問

以下、社会保険について、特に多く寄せられる質問を解説します。

社会保険の扶養が外れる条件は?

年間の見込み収入が130万円以上になると、原則として健康保険の扶養から外れます。ただし、加入先の健康保険組合によっては、130万円未満でも扶養を外れるケースがあるため注意が必要です。

また、学生を除き、従業員51人以上の企業では、一定の条件を満たすと年収106万円以上(月額8.8万円以上)でも社会保険の加入が義務化されます。

  • 週20時間以上の勤務
  • 2ヶ月以上の勤務見込み

企業は、従業員の勤務時間や給与を管理し、扶養の適用条件を事前に確認することが重要です。

社会保険の扶養の条件については、以下の記事でわかりやすくまとめています。あわせてご覧ください。
(関連記事:【2025年最新】“パート扶養がなくなる”は誤解?年収の壁一覧とポイント整理

社会保険の加入は義務ですか?

法人企業は、従業員が1人でもいる場合、社会保険の加入が義務付けられています。

個人事業主も、常時5人以上の従業員を雇用する場合、原則として社会保険の適用対象となります。ただし、農林水産業・飲食業・理美容業など一部の業種は適用除外になるケースも。

企業規模や業種によって適用範囲が異なるため、新規事業を立ち上げる際や、従業員数が増えるタイミングで、加入条件をしっかり確認しましょう。

社会保険に未加入だった場合ペナルティはある?

企業が社会保険に未加入の場合、以下のペナルティがあります。

  • 未加入が発覚すると、日本年金機構から是正指導を受け、加入を求められる
  • 過去2年分の社会保険料を遡って支払う義務が生じる
  • 悪質と判断されると、6か月以下の懲役または50万円以下の罰金の対象となる

未加入によるペナルティを回避するためにも、早めの対応が必要です。適切な対応を行うために、社労士や年金事務所に相談することをおすすめします。

まとめ:社会保険の適切な管理には社労士の活用が重要

本記事では、社会保険の基本から加入条件、未加入のリスクまで詳しく解説しました。

社会保険の適切な運用は、企業の信頼性向上や従業員の定着率アップなど、経営面でも大きなメリットをもたらします。

適切な手続きを行うことで、法令遵守を徹底し、従業員が安心して働ける環境を整えられます。

しかし、社会保険の手続きや制度の最新情報を把握するのは容易ではなく、企業の負担となるケースも少なくありません。

「社会保険の手続きに不安がある」「適用条件を正しく知りたい」とお考えの方は、早めに社労士に相談するのが有効です。

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初回相談が無料の社労士も多いため、事務所のスタンスや人柄をしっかり見極めた上で依頼しましょう。

執筆者

中小企業福祉事業団 編集部

 
日本最大級の民間社労士団体として、社労士を介して中小企業を支援する活動を行っています。本サイト「社労士ナビ」は、課題を抱える中小企業が、課題を解決できる社労士を探して、巡り合えるように構築しました。「社労士ナビ」が中小企業の人事・労務課題を解決する一助になれば幸いです。

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