退職勧奨後のユニオン対応を社労士が支援した自動車部品製造業の事例|社労士 市川 博昭の解決事例
<編集協力:社労士ナビ編集部>
解決した社労士
- 社会保険労務士 市川 博昭 氏(社会保険労務士法人人事サポートセンター/東京都渋谷区)
※本記事は、実際の対応事例をもとに、企業等が特定されないよう一部内容を調整しています。
この記事を読んで分かること
- 退職勧奨後にユニオン対応へ発展したとき、会社が整理しておきたいこと
- 日頃の注意・指導記録が、退職トラブルへの対応で重要になる理由
退職勧奨後のトラブルでは、経緯を整理できる記録が重要になる
社員への退職勧奨をきっかけに、退職後も会社との間で紛争が続くことがあります。そうした場面では、その時点での対応だけを見るのではなく、会社がそれまでどのような注意や指導を行い、どのような経緯をたどって退職に至ったのかを整理することが重要です。
今回の企業では、退職した社員が合同労組(ユニオン)に加入し、慰謝料を求める状況になりました。会社だけでは対応に苦慮していたため、私はこれまでの労務管理上の経緯や双方の主張を整理し、面談の場にも同席しながら、会社が事実関係を踏まえて対応できるよう支援しました。
対象企業の情報
- 所在都道府県:東京都
- 業種:自動車部品製造
- 従業員規模:160名
- 組織の特徴:業歴長く、技術もトップクラス
退職勧奨への不満から、元社員がユニオンに加入
相談のきっかけは、退職した社員が合同労組(ユニオン)に加入したことでした。
この社員は入社から1年に満たず、会社は能力不足を理由として退職勧奨を行っていました。しかし、本人はその対応に不満を持ち、退職後に慰謝料を求めるようになりました。
会社も、それまで何も対応していなかったわけではありません。社長は本人に対して複数回、口頭で注意をしていました。
問題は、その経緯が十分な記録として残っていなかったことです。いつ、何について注意し、その後本人がどのような対応をしたのかを後から確認できる資料が十分ではありませんでした。
退職後に認識の違いが表面化したことで、会社としても、これまでの経緯を改めて整理しながら対応を考える必要がありました。
ユニオンとの面談に同席し、会社が判断できるよう経緯を整理
ユニオンとの面談では、会社と元社員側でそれぞれ異なる主張がありました。
こうした場面で重要なのは、相手の要求に対してその場で反応することではありません。これまで何があったのか、会社はどのような対応をしてきたのか、相手は何を問題としているのかを整理したうえで、会社としてどのように対応するのかを判断できる状態にする必要があります。
私は面談にも同席し、労務管理上の経緯や双方の主張を整理しながら、会社側が状況を把握し、自ら対応方針を判断できるよう支援しました。
話し合いが長期化すれば、会社にとって時間的・人的な負担が大きくなることも考えられます。一方で、早く終わらせることだけを優先すればよいわけでもありません。
そのため、これまでの経緯や相手方の主張を踏まえつつ、長期化した場合の負担やリスクも含めて、会社としてどこまでなら受け入れられるのかを検討していきました。
会社として受け入れ可能な範囲を検討し、金銭解決へ
こうした整理を踏まえ、会社は対応方針を検討しました。
最終的には、会社として受け入れ可能な範囲で一定額の和解金を支払い、金銭解決によって話し合いを終結させました。
ここで重要なのは、「和解金を支払った」という結果だけを見ることではありません。紛争が続いた場合の負担も考慮しながら、それまでの経緯と相手方の主張を整理し、会社として受け入れられる範囲を判断したうえで解決したことに意味があります。
そして、この対応を振り返ると、もう一つ大きな課題が見えてきます。それが、社員への注意や指導を日頃から記録しておくことです。
「人事ノート」で注意・指導の経緯を残しておく
今回の事例を通じて、私が企業に勧めているのが「人事ノート」の作成です。
社員に注意や指導をしたときは、日時だけではなく、何について注意したのか、その後本人がどのような対応をしたのかまで、できる限り具体的に記録しておきます。
口頭で複数回注意していても、記録がなければ、時間が経ってから当時の状況を正確に整理することは難しくなります。退職後に認識の違いが表面化すれば、なおさらです。
記録を残す目的は、将来の紛争を前提に社員を管理することではありません。会社が行った人事・労務上の対応を後から事実として確認できる状態にしておくことにあります。
日々の注意や指導をその都度記録しておくことが、問題が大きくなったときに、会社が状況を整理し、次の対応を判断するための土台になります。
よくある質問
退職した社員がユニオンに加入した場合、会社はまず何をすべきですか?
まず、それまでの経緯と双方の主張を事実ベースで整理することが重要です。
相手の要求にすぐ回答するのではなく、退職に至るまでに会社がどのような対応をしていたのか、現在どの点について認識が食い違っているのかを確認します。
そのうえで、話し合いが長期化した場合の負担なども含め、会社としてどのような対応が可能なのかを検討していくことがポイントです。
社員への注意・指導では、どのような記録を残しておくとよいですか?
日時、注意・指導した内容、その後の本人の対応まで、できるだけ具体的に残しておくことがポイントです。
「何度も注意した」という記憶だけでは、後から経緯を正確に説明することが難しくなります。
今回の事例では、こうした情報を「人事ノート」として継続的に記録しておくことを勧めています。
まとめ
退職勧奨をきっかけとしたトラブルが、退職後のユニオン対応へ発展することもあります。
そうした場面では、相手方とのやり取りだけに目を向けるのではなく、これまでの事実関係を整理し、会社として何を判断できるのかを明確にすることが重要です。
そして、その判断を支えるのが日頃の記録です。
注意や指導を行ったときに、その日時、内容、その後の対応を積み重ねて残しておく。こうした日常の労務管理が、問題が大きくなったときに会社の状況を整理し、適切な対応を考えるための重要な土台になります。
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