能力不足の社員への対応を、指導記録と配置転換で整理した小規模サービス業|社労士 日隈 久美子の解決事例
<編集協力:社労士ナビ編集部>
解決した社労士
- 社会保険労務士 日隈 久美子(とどろき社会保険労務士法人/東京都豊島区)
※本記事は、実際の対応事例をもとに、企業等が特定されないよう一部内容を調整しています。
この記事を読んで分かること
- 能力不足や業務ミスが続く社員への対応を整理する考え方
- 感覚的な注意ではなく、事実と指導記録を残す重要性
- 配置転換など次の対応を検討する際の進め方
能力不足の社員への対応は、感覚ではなく事実と記録を基準に整理する
社員の業務ミスが続き、周囲にも影響が出てくると、会社としては「このまま雇用を続けるべきか」「配置転換や解雇まで検討すべきか」と判断に迷うことがあります。
しかし、本人に悪意がないケースでは、印象や感情だけで対応を決めることは適切ではありません。どのような問題が起き、これまで会社がどのような注意や指導をしてきたのかを、事実と記録に基づいて整理することが重要です。
今回のケースでも、配置転換や解雇という結論を先に決めるのではなく、面談や指導記録を通じて対応を段階的に整理していきました。
対象企業の情報
- 所在都道府県:東京都
- 業種:その他サービス業
- 従業員規模:8名
- 組織の特徴:フラット、小規模ならではのアットホームな感じ
業務ミスが増え、周囲の社員の士気にも影響が出ていた
相談の対象となったのは、数年勤務している社員でした。業務上のミスが増え、現場から不満が出るようになっていました。
本人に悪意があるわけではありませんでしたが、注意を受けても改善が見られず、仕事へのやる気も十分とはいえない状態でした。その影響は本人だけにとどまらず、周囲の社員の士気も下がり始めていました。
背景には、小規模でアットホームな職場ならではの事情もありました。「自分がやらなくても誰かがやってくれる」という甘えが生まれやすく、それが本人の仕事への向き合い方にも影響していたと考えられます。
現場責任者はそれまでにも口頭で注意を行い、その記録も残していました。ただ、会社には就業規則がなく、懲戒処分を前提とした対応を進めにくい状況でした。そのため指導も次第に甘くなり、本人にも、自分が置かれている厳しい状況が十分に伝わっていませんでした。
こうした状態が続く中で、会社から「配置転換や解雇を検討できないか」という相談を受けました。
配置転換や解雇を検討する前に、面談と指導記録で事実を整理
このケースで行ったのは、面談、指導記録の作成、配置転換という順で対応を進めることでした。
能力不足や仕事への姿勢が問題になっている場合、「やる気がない」「ミスが多い」といった評価だけでは、会社として次の対応を判断しにくくなります。そこで、本人との面談を行ったうえで、どのような点を指導したのかを記録として残しました。
大切なのは、問題が起きるたびにその場で注意するだけではなく、指導の経過を会社として把握できる状態にすることです。そうすることで、本人に何を求めているのかも明確になり、その後の対応を検討する際にも事実を基準に考えられるようになります。
そのうえで、この会社では配置転換を行いました。いきなり解雇という結論へ進むのではなく、これまでの指導経過を整理しながら、段階を踏んで対応したことがポイントでした。
配置転換後に本人が退職し、解雇トラブルを避けて解決
配置転換を行った後、本人は退職しました。
結果として、会社が解雇という形で雇用終了に踏み切ることなく、解雇をめぐるトラブルを避けながら問題を解決することができました。
今回の結果だけを見れば退職によって問題が収束した形ですが、重要なのは退職そのものではありません。それまでの注意や指導を曖昧なままにせず、面談や記録を通じて会社として対応を整理したことにあります。
問題が起きてから感覚で対応しないために、指導を記録に残す
この事例を通じて企業に伝えたいのは、問題が起きてから感覚的に対応するのではなく、体系的な指導ができるよう、事実と記録を整理しておくことの重要性です。
特に、小規模でフラット、アットホームな職場では、社員同士の距離が近いからこそ、注意や指導が曖昧になってしまうことがあります。それ自体は職場の良さでもありますが、業務上の問題が続いている場面では、会社として求める水準や指導内容を明確にしておく必要があります。
能力不足や勤務姿勢の問題が表面化してから、配置転換や解雇といった選択肢だけを考えるのではありません。それ以前から、何が問題なのか、どのような指導を行ったのかを積み重ねておくことが、その後の判断の土台になります。
よくある質問
能力不足や業務ミスが続く社員に対して、会社はまず何を整理すべきですか?
まず、どのような業務ミスが起きているのか、これまでどのような注意や指導を行ってきたのかなど、客観的に確認できる事実を整理することが重要です。
本人に対する印象だけで判断するのではなく、指導内容とその経過を記録として残し、会社として体系的に対応できる状態をつくることが次の判断につながります。
能力不足の社員について配置転換や解雇を検討する場合、どのように進めるべきですか?
具体的な対応は個別の事情によって異なりますが、最初から配置転換や解雇という結論だけを考えるのではなく、それまでの指導状況や本人への説明、問題となっている事実を整理しながら検討することが大切です。
今回のケースでは、面談を行い、指導記録を作成したうえで配置転換へ進みました。
まとめ
能力不足や業務ミスが続く社員への対応では、その社員だけを見るのではなく、これまで会社がどのように指導してきたのか、職場環境がどのように影響しているのかも含めて整理する必要があります。
特に重要なのは、問題が大きくなってから感覚的に対応するのではなく、日頃から事実と指導経過を記録し、体系的に対応できる状態をつくることです。
その積み重ねが、配置転換をはじめとする次の対応を検討する際の判断材料になります。
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