企業が押さえるべき年金制度と実務対応のポイントを徹底解説
年金は、老後の生活を支えるだけでなく、病気やケガで働けなくなった場合や、被保険者が亡くなった際の家族の生活を保障する、重要な社会保障制度です。
日本の公的年金制度は「国民年金」と「厚生年金」の2階建て構造で、企業で働く労働者が加入する厚生年金は、企業が適切に手続きを行うことで成り立っています。
しかし、入社・結婚・出産育児など、状況に応じて必要となる年金手続きは多岐にわたります。手続き漏れやミスがあると、将来の年金額に影響し、労働者とのトラブルに発展するおそれがあるため、担当者は制度の正確な理解と迅速な対応が必要です。
本記事では、年金制度の基本構造、老齢・障害・遺族年金の仕組み、企業が対応すべき厚生年金の実務、よくあるトラブル、そして社労士に相談するメリットまで分かりやすく解説します。
場面ごとの必要書類・提出期限の一覧も掲載していますので、年金実務の正確な理解と企業リスクの防止に、ぜひお役立てください。
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年金制度の基本

日本の年金制度には、「公的年金」と「私的年金」の2種類があります。
公的年金は、国が運営する社会保障制度の1つです。特徴として生涯にわたって受給できる点があります。老後の生活を社会全体で支えあうだけでなく、病気・ケガによる障害や死亡といった万が一の場面を所得保障として支援する役割もあります。労働者の将来の生活を支える最も基本的な仕組みであり、企業の実務にも深く関わる制度です。
一方、私的年金※は、企業や金融機関が任意で提供する、公的年金に上乗せする保障制度です。主に、豊かな老後を過ごす目的で導入されます。
※企業型確定拠出年金(DC)、確定給付企業年金(DB)、個人年金保険などが該当
ここでは、企業の実務として最も重要な「公的年金」の仕組みについて、詳しく解説します。
公的年金の仕組み|国民年金と厚生年金の2階建て構造
日本の公的年金制度は、「1階部分の国民年金」と「2階部分の厚生年金」で構成される、2階建て構造となっています。
【1階部分:国民年金(基礎年金)】
1階部分の国民年金(基礎年金ともいう)は、日本国内に住所を有する20歳以上60歳未満のすべての人が加入する制度です。
加入者は、職業や扶養の状態で、以下の3区分に分けられます。
- 第1号被保険者:自営業者・学生・無職者・後述の第2号被保険者、第3号被保険者とならない方など
- 第2号被保険者:70歳未満の企業に雇用される労働者・公務員など
- 第3号被保険者:第2号被保険者に扶養されている20歳以上60歳未満の配偶者(年収130万円未満かつ被保険者の年収の1/2未満)
国民年金の保険料は定額(令和7年度は1カ月あたり17,510円)で、所得などの状況に応じて免除や納付猶予制度が設けられている点が特徴です。
【2階部分:厚生年金】
2階部分の厚生年金は、企業に雇用される労働者(国民年金の第2号被保険者)が加入する制度です。報酬額(給与や賞与)によって保険料と将来の年金額が決まり、国民年金に上乗せして給付が行われます。
厚生年金には以下のような特徴があります。
- 企業が算出した標準報酬月額をもとに保険料が決定される
- 保険料は報酬より徴収され労働者と企業が折半で負担する
- 加入期間が長く、報酬額が高いほど将来の年金が増える(報酬比例)
- 産前産後休業・育児休業中は申請により保険料が労働者・企業ともに免除される
このように厚生年金は、報酬額に応じて保険料や給付額が変動し、企業と労働者が共同で支える制度である点が大きな特徴です。
労働者は「国民年金(基礎年金)+厚生年金」の2つの年金制度に加入しており、企業はそのうち「2階部分:厚生年金」に関する重要な実務を担う立場にあります。
【比較表】国民年金と厚生年金の違い(対象・加入区分・保険料など)
ここでは、加入対象者や保険料の負担方法、手続き主体など、国民年金と厚生年金の制度的な違いを一目で比較できるように整理しました。
企業が担う実務の違いにも注目しながら確認しておきましょう。
| 比較項目 | 国民年金(基礎年金) | 厚生年金保険 |
|---|---|---|
| 加入対象となる人 | 日本国内に住所を有する20歳以上60歳未満のすべての人 | 企業に雇用される労働者(適用基準を満たすパートを含む) |
| 被保険者区分 | 第1号・第2号・第3号被保険者にわかれる | 第2号被保険者のみ |
| 保険料の計算方法 | 定額(毎年改定) | 報酬比例(標準報酬月額×保険料率) |
| 保険料負担割合 | 本人が全額負担 | 企業と労働者が折半で負担 |
| 保険料の納付方法 | 本人が市区町村へ納付 | 給与賞与から天引きし、企業が年金事務所へ納付 |
| 手続きの主体 | 本人 | 企業(資格取得・喪失、報酬決定など) |
| 受け取れる年金の種類 | 老齢・障害・遺族の基礎年金 | 老齢・障害・遺族の基礎年金と、老齢・障害・遺族の厚生年金(上乗せ部分) |
国民年金は原則として本人が手続き・納付を行う自助的な制度であるのに対し、厚生年金は企業が届出や保険料納付を担う制度です。手続きの負担や管理主体が異なる点は、企業実務に大きく関係します。
一方で、いずれも老後・障害・死亡というリスクに備える基礎的な社会保障である点は共通です。
次章では、これらの年金給付が具体的にどのような仕組みになっているのかを、企業が理解しておくべきポイントとあわせて解説します。
老齢年金・障害年金・遺族年金の基礎知識

公的年金は、国民の生活に生じる3つの大きなリスクに備える保険制度です。
- 老後の生活を支える「老齢年金」
- 病気や事故で生活や仕事に制限が出た場合に受け取れる「障害年金」
- 本人が亡くなった場合に残された家族の生活を守る「遺族年金」
これらはすべて、労働者とその家族の生活を支える重要な仕組みです。受給申請そのものは本人や遺族が行いますが、必要な記録は企業の届出に基づくため、企業実務とも深く関わります。
ここでは、企業が理解しておきたい3つの年金の仕組みを、それぞれ整理します。
老齢年金|老後の保障
老齢年金は、原則65歳から生涯にわたり受け取ることができる年金です。
加入している年金の種類によって、支給される年金が異なります。
- 国民年金のみ加入していた人:「老齢基礎年金」
- 国民年金+厚生年金に加入していた人:「老齢基礎年金+老齢厚生年金」
いずれも、保険料を納付した期間が長いほど年金額は増えます(老齢基礎年金は納付月数が480月で満額となります)。
老齢基礎年金・老齢厚生年金を受け取るには、10年以上の「受給資格期間」が必要です。この資格期間には、保険料納付済期間のほか、保険料免除期間や合算の対象になる期間(カラ期間※)などが含まれます。
※カラ期間とは、主に制度改正前の公的年金に加入できなかった期間が対象で、年金額の計算には含めないが、受給資格期間には含めてもよい期間を指します。
また、受給開始時期は加入者の請求により変更が可能です。いずれも一度選択すると生涯その増額率・減額率で計算された金額で受け取ることになります。
- 繰上げ受給(60歳から65歳の間に請求する):年金額は減額(最大24%減額)
- 繰下げ受給(66歳から75歳の間に請求する):年金額は増額(最大84%増額)
老齢年金は、将来多くの労働者が受給する重要な制度です。標準報酬月額の届出や資格取得手続きなど、企業の対応が年金額に直結するため、正確な管理が求められます。
障害年金|病気やケガにより生活や仕事に制限が出る場合の保障
障害年金は、病気やケガが原因で生活機能や働く能力が低下した場合に支給される年金です。精神疾患や内臓疾患など、外見で分かりにくい障害の方も対象です。
老齢年金と同様に、加入している年金の種類によって、支給される年金が異なります。
- 国民年金のみ加入していた人:「障害基礎年金」
- 国民年金+厚生年金に加入していた人:「障害基礎年金+障害厚生年金」
また、障害厚生年金に該当するより軽い障害の場合は「障害手当金(一時金)」が支給される制度もあります。
障害厚生年金や障害手当金を受け取るには、初診日の前日において、以下のいずれかの「保険料納付要件」を満たしている必要があります。
- 初診日の前々月までの被保険者期間があり、そのうち保険料の納付済期間と免除期間の合計が3分の2以上あること
たとえば、初診日が9月の場合、7月まで被保険者であって被保険者期間が15か月あり、そのうち保険料の納付済期間+免除期間が12か月以上あれば、本要件を満たします。 - または初診日が2026年4月1日前にあるとき、初診日時点で65歳未満であり、初診日の前日において初診日がある月の前々月までの1年間に保険料の未納がないこと
たとえば、初診日が2025年12月1日の場合、11月30日時点で2024年11月から2025年10月分の保険料に未納が無ければ、本要件を満たします。
なお、障害基礎年金のみ、初診日が20歳前であれば公的年金に加入できない時期であるため、保険料納付要件は適用されません。
障害年金の支給額は、障害認定日における障害の程度で決まります。障害基礎年金は1級・2級、障害厚生年金は1級・2級・3級が対象です。
障害年金は企業が申請する制度ではありませんが、加入歴や納付記録が支給の可否を左右するため、労働者の資格取得・喪失などの記録管理が極めて重要です。
遺族年金|本人が亡くなった際の家族の生活保障
遺族年金は、被保険者が亡くなった際、その方によって生計を維持されていた遺族の生活を支えるための年金です。
加入していた年金制度により、受け取れる年金と支給対象が異なります。
- 国民年金のみ加入していた人:「遺族基礎年金」
支給対象:子のいる配偶者または子 - 国民年金+厚生年金に加入していた人:「遺族基礎年金+遺族厚生年金」
支給対象:配偶者・子・孫・父母など一定の親族
遺族基礎年金や遺族厚生年金を受け取るには、亡くなった日の前日において、以下のいずれかの「保険料納付要件」を満たしている必要があります。
- 死亡日の前日において亡くなった月の前々月までの被保険者期間において、保険料の納付済期間と保険料免除期間の合計が3分の2以上あること
- 亡くなった時点で65歳未満であり、亡くなる日のある月の前々月までの1年間に保険料の未納がないこと(令和18年(2036年)3月末日までの特例)
万が一の際に遺族への給付が適切に行われるよう、制度の理解と正確な実務対応が求められます。
厚生年金の基本ルール

企業が日常の労務管理で理解しておくべきルールが、厚生年金の「加入義務」「被保険者の範囲」「保険料の仕組み」です。
ここでは、制度の基本ポイントを整理します。
厚生年金の加入義務(適用事業所)
厚生年金保険は、事業所ごとに適用され、事業の内容や規模によって「強制適用事業所」と「任意適用事業所」に分けられます。
【強制適用事業所】
以下のいずれかに該当する事業所
- 従業員が1人以上いるすべての法人事業所
- 常時5人以上の従業員を雇用する個人事業所
(※ただし農林業・水産業など一部の事業を除く)
【任意適用事業所】
強制適用事業所に該当しない事業所でも、労働者の半数以上の同意+厚生労働大臣の認可により、厚生年金の適用を受けることができます。
加入対象となる労働者とは
厚生年金保険の加入対象者は、原則「企業に常時雇用される、昼間学生でない70歳未満のすべての労働者(正社員・契約社員・パート・アルバイト・役員(報酬がある場合)を含む)」です。
国籍や雇用形態に関係なく、加入要件を満たす労働者はすべて被保険者です。特に、短時間労働者についての加入要件は細かく定められているため、正しい理解が必要です。
【短時間労働者(パート・アルバイト)の加入基準】
- 所定労働時間・日数が正社員の4分の3以上
- 所定労働時間・日数が正社員の4分の3未満であっても、以下の条件を満たす労働者
・企業規模:従業員51人以上の企業
・労働時間:週20時間以上
・月額賃金:8.8万円以上(残業代、通勤手当等は含まない)
・雇用見込み:2か月以上
【70歳以上労働者の扱い】
70歳以上の労働者であり、以下の条件に該当する方は「70歳以上被用者」となります。
- 70歳以上である
- 過去に厚生年金保険の被保険者期間がある
- 適用事業所に使用されており、厚生年金の加入除外要件に当てはまらない労働者である
該当する従業員がいる場合は70歳に到達する月の前月に日本年金機構から企業へ「70歳到達届」の用紙が送付されます。これは老齢年金の受給額を調整するための届です。70歳以上被用者に関する詳細は日本年金機構の「従業員が70歳になったとき」をご確認ください。
厚生年金保険の保険料
厚生年金の保険料は、労働者が受け取る報酬に基づき決定されます。
保険料の計算方法は以下のとおりです。
- 毎月の保険料:標準報酬月額※1×18.3%
- 賞与の保険料:標準賞与額※2×18.3%
※1:標準報酬月額とは、基本給・手当(通勤手当・残業手当等)を含む総支給額を一定の等級に当てはめたもの
※2:標準賞与額とは、実際の税引き前の賞与の額から1,000円未満を切り捨てた額(上限150万円/1回、同じ月に2回以上支給されたときは合算)
保険料は企業と被保険者が折半で負担し、企業がまとめて日本年金機構もしくは年金事務所へ納付します。
未加入のリスク
厚生年金への加入漏れは、企業に以下のような大きな負担をもたらします。
- 最大2年分の未納保険料を遡って納付する必要がある(厚生年金保険法92条)
- 行政指導や報告命令の対象となる
- 悪質な場合は「6か月以下の拘禁刑または50万円以下の罰金」が科される可能性もある(厚生年金保険法102条)
- 年金を受け取れなくなった労働者から、企業へ損害賠償を求められるおそれがある
企業の手続き漏れは、法令違反だけでなく、労働者の将来の保障にも直接影響します。加入要件の確認と正確な届出が欠かせません。
あわせて読みたい:社会保険とは?概要から保険料の計算方法まで徹底解説!
年金手続きが必要な場面

企業は、労働者の雇用や家族構成の変化に応じて、厚生年金保険の届出を行う必要があります。これらの手続きは労働者本人ではなく企業が担うもので、届出の遅れや誤りは標準報酬月額の決定や将来の年金額や納付要件に影響します。
ここでは、「どの場面で」「企業が何を行うべきか」を整理します。
入社|資格取得手続き・標準報酬月額の決定
新規採用者が厚生年金保険の加入要件を満たす場合、企業は「被保険者資格取得届」を年金事務所へ提出します。扶養家族がいる場合は、「健康保険被扶養者(異動)届」の提出も必要です。
また、月々の保険料の基礎となる標準報酬月額の決定もあわせて行います。
退職|資格喪失手続き・退職者への案内
被保険者が退職した場合、「被保険者資格喪失届」を提出します。扶養家族がいる場合は、「被扶養者(異動)届」により扶養喪失の手続きを行います。
退職後に再就職しない場合、国民年金への切替が必要となるため、基礎年金番号の確認や手続きの案内を行うと親切です。
結婚|扶養認定・氏名変更などの届出
被保険者が配偶者を扶養に入れる場合、企業は以下の書類を日本年金機構へ提出します。
- 健康保険被扶養者(異動)届
- 国民年金第3号被保険者関係届
扶養認定は、配偶者の収入や生計維持要件に基づいて判断されます。
また、氏名や住所が変わる場合は変更届が必要です。ただし、マイナンバーと基礎年金番号が結びついている労働者については、原則届出は不要です。
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離婚|扶養喪失と各種変更手続き
被保険者が離婚した場合、扶養に入れていた配偶者について、「被扶養者(異動)届」により扶養喪失の手続きを行います。
氏名や住所の変更がある場合は、結婚時と同様に変更届が必要です。ただし、マイナンバーと基礎年金番号が紐付いている場合は届出不要です。
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出産・育児|保険料免除の手続きと期間管理
被保険者が産前産後休業や育児休業を取得する場合、休業中の厚生年金保険料(企業・労働者双方の負担分)は、企業の申請により免除されます。
免除対象期間は以下のとおりです。
【産前産後休業】
- 産前休業:出産予定日の42日前〜出産日前日(多胎妊娠は98日前〜)
- 産後休業:出産翌日〜56日までの間
【育児休業】
- 育児・介護休業法による育児休業の期間
産前産後休業の免除申請は出産予定日を基準に行いますが、実際の出産日と前後した場合は、休業期間の延長や短縮など追加の届出が必要です。育児休業についても、予定より早く終了する場合は、速やかな終了届が求められます。
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【一覧表つき】育児・介護休業法の2025年改正内容と企業対応ポイントまとめ
【一覧表】企業が行う年金手続きの必要書類・提出期限

ここでは、企業が行う年金手続きについて、「どのタイミングで何を提出するのか」を一覧で整理します。
※本一覧は、日本年金機構(協会けんぽ)の手続き内容をもとにしています。健康保険組合加入企業は、組合ごとに届出先や書類が異なる場合があるため、必ず個別に確認してください。
【企業が行う年金手続きの必要書類・提出期限一覧】
| 場面 | 必要書類 | 提出時期 |
|---|---|---|
| 入社 | 健康保険・厚生年金保険 被保険者資格取得届/厚生年金保険 70歳以上被用者該当届 | 資格取得日(入社日)から5日以内 |
| 退職 | 健康保険・厚生年金保険 被保険者資格喪失届/厚生年金保険 70歳以上被用者不該当届 | 資格喪失日(退職日の翌日)から5日以内 |
| 扶養に入れる(認定)・扶養から外す(削除) | 健康保険 被扶養者(異動)届(国民年金第3号被保険者関係届) ※続柄・収入確認のための書類が必要(戸籍謄本、住民票、収入証明など) |
認定:事実発生日から5日以内 削除:速やかに |
| 産前産後休業の保険料免除(取得) | 健康保険・厚生年金保険 産前産後休業取得者申出書/変更(終了)届 | 休業期間中または終了後1か月以内 |
| 産前産後休業の保険料免除(変更・終了) | 健康保険・厚生年金保険 産前産後休業取得者申出書/変更(終了)届 | 速やかに |
| 育児休業の保険料免除(取得・延長) | 健康保険・厚生年金保険 育児休業等取得者申出書(新規・延長)/終了届 | 休業期間中または終了後1か月以内 |
| 育児休業の保険料免除(終了) | 健康保険・厚生年金保険 育児休業等取得者申出書(新規・延長)/終了届 ※予定より早く終了する場合に提出 |
速やかに |
| 報酬が大幅に変動したとき(随時改定) | 健康保険・厚生年金保険 被保険者報酬月額変更届/厚生年金保険 70歳以上被用者月額変更届 | 速やかに |
| 年1回の定時決定(算定基礎届) | 健康保険・厚生年金保険 被保険者報酬月額算定基礎届/厚生年金保険 70歳以上被用者算定基礎届 | 毎年7月10日まで(10日が土曜または日曜の場合は翌営業日が提出期限) |
【補足事項】
- 提出先:日本年金機構の事務センター、または所轄の年金事務所
- 提出方法:電子申請、電子媒体(CDまたはDVD)、郵送、窓口持参など
届出の誤りや遅れは、保険料計算の誤りや年金記録の欠落につながるため、企業の管理体制が重要です。手続きが必要となる場面ごとに、社内マニュアルなどで整理しておくと安心です。
各種届書様式は日本年金機構(協会けんぽ)|健康保険・厚生年金保険主な届書様式の一覧からダウンロード可能です。申請の方法や添付書類などの詳細は、日本年金機構のページからご確認ください。
年金実務上でのよくあるトラブル3選

年金の届出は種類が多く、期限も細かく定められているため、企業の実務では思わぬところでミスが起こりやすい分野です。
ここでは、企業が日常業務で特に発生しやすいトラブルを3つ取り上げ、その内容と影響を解説します。
1.パート採用だからと資格取得届を出さなかった
厚生年金の加入対象は、企業に雇用される「加入要件を満たすすべての労働者」です。パートやアルバイトであっても、労働時間・賃金などの基準を満たせば加入が必要です。
加入対象者であるにもかかわらず資格取得漏れがあった場合、以下のようなトラブルを引き起こす可能性があります。
- 年金加入記録が欠落し、将来の老齢年金額が減る
- 障害・遺族年金の支給要件を満たさず、不支給となる
- 企業に対し、最大2年分の保険料の追徴が発生する
採用区分ではなく実際の労働条件で判断することが大切です。
2.産前産後・育児休業中も保険料を納めてしまった
産前産後や育児休業の期間中は、企業が申請を行えば、労働者・企業ともに保険料が免除されます。なお、この免除期間は保険料を納めた期間として扱われます。
申請を行わずに保険料を納め続けた場合、以下のようなトラブルが発生する恐れがあります。
- 労働者から「払い損」への不満や指摘を受ける
- 保険料免除申請と労働者への還付手続きが必要となり、企業側の負担が増える
申請が遅延した場合でも保険料の徴収時効である2年間であれば遡及することができます。企業は産前産後休業・育児休業に関する届出を正確に管理し、手続き漏れを防ぐ体制を整えることが重要です。
3.標準報酬月額(年金の計算基礎)を正しく更新しなかった
標準報酬月額は、給与が大きく変動した際に行う「随時改定」、または年1回の「定時決定(算定基礎届)」によって更新されます。
この手続きに誤りがあると、以下のような影響が生じます。
- 誤った保険料が徴収される(過大・過小)
- 標準報酬月額を元に計算される傷病手当金や年金等が誤って計算されるおそれがある
- 労働者とのトラブルや遡及修正により企業側の事務負担が発生する
標準報酬月額の計算ルールは複雑なため、企業単独では誤りが生じやすい分野です。随時改定の要件を正しく判断し、適切なタイミングで届け出ることが重要です。
手続きの誤りや漏れは、労働者の年金記録に直接影響し、老齢・障害・遺族年金の受給額や受給資格に結びつくこともあります。そのため、企業は年金制度を正しく理解し、申請が必要な場面ではスムーズな手続きが求められます。
社労士から受けられるサポート

年金実務は複雑で、企業の担当者だけでは対応が難しい場面が多くあります。スムーズに業務を進めるためには、社会保険や年金制度に精通した社労士と連携すると安心です。
ここでは、企業が社労士から受けられる、主な支援内容を紹介します。
年金手続きの正確性チェックと申請代行
厚生年金の実務では、資格取得・喪失、標準報酬月額の決定、産前産後・育児休業の保険料免除など、多くの手続きが必要です。内容も期限も複雑なため、漏れや誤りがあると、企業の追徴や労働者の年金額に影響する可能性があります。
社労士は、専門知識を用いてこれらの手続きを制度に基づいて正確にチェックし、企業に代わって申請まで行います。手続きミスを防ぎながら、担当者負担の大幅な軽減が可能です。
制度改正への対応と実務運用のアドバイス
年金制度は、適用拡大や標準報酬制度の見直しなど、毎年のように改正が行われます。企業担当者が制度改正を常に把握し、必要な対応を判断することは負担が大きい領域です。
社労士は、制度改正の内容を踏まえ、加入判定や就業規則の見直しなど実務で必要となる対応を具体的に助言します。常に最新の制度に沿った運用ができるため、法令違反のリスクを避けながら、安定した労務管理を実現できます。
労働者からの年金相談への対応(説明会の開催・資料作成など)
年金制度は複雑で、扶養の要件、育児休業中の保険料、将来の受給見込みなど、労働者からの相談に企業の担当者だけで対応することは容易ではありません。説明が難しい項目も多く、対応に時間がかかることもあります。
社労士は、年金に関する労働者からの相談に専門家として対応し、企業向けの説明資料作成も行うことがあります。説明のばらつきや誤解を防げるため、労働者とのトラブル回避につながり、企業内の安心感向上にも役立ちます。
まとめ|年金制度の理解と社労士活用で企業のリスクを最小限に抑えよう
本記事では、公的年金制度の基本から、厚生年金の加入ルール、ライフイベントごとに必要な手続き、実務で起きやすいトラブル、そして社労士が提供できるサポートまでを解説しました。
年金手続きは、資格取得、標準報酬月額の決定、産前産後・育児休業の保険料免除など、正確さと期限管理が求められる業務です。誤りや漏れは、企業への追徴だけでなく、労働者の将来の年金額にも影響します。
企業がすべてを自力で管理するには限界があります。年金実務のリスクを最小限に抑えた労務管理のためには、専門知識を持つ社労士のサポートを活用すると安心です。
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