会員社労士 6,833名
社労士を探す
社会保険・労働保険
更新日:2026 / 03 / 06
記事画像

2026年4月在職老齢年金制度見直しとは?~支給停止調整額が51万円→65万円に~ 制度見直し内容と企業の対応

令和7(2025)年6月に成立した年金制度改正法により、令和8(2026)年4月より年金を受給しながら働く高齢者に関わる在職老齢年金制度が見直されることになりました。

在職老齢年金制度は賃金と年金の合計額が一定額以上の方の老齢厚生年金の支給額を減らす制度ですが、この制度が高齢者の「働き控え」につながっているとの指摘があります。

一方で働き続けることを希望する高齢者は増えており、企業側でも人材確保の難しさや、技術継承の必要性から高齢者に対するニーズが高まっています。

このような実情を踏まえ、令和8(2026)年4月より在職老齢年金制度が見直され、老齢厚生年金が支給停止になる基準額を高くなります。これにより、老齢厚生年金を受給しながら働き、より多くの賃金を得たとしても老齢厚生年金が減額されなくなるため、高齢者の「働く意欲」に応えられるようになります。

本記事では、在職老齢年金制度の見直し内容とその背景を確認し、制度の見直しに合わせて各企業の人事労務担当者が検討し、取り組むべきことについてわかりやすく解説しますので、ぜひ最後までご覧ください。

自社にぴったりの社労士が見つかる!

企業と社労士をつなぐ日本最大級のポータルサイト「社労士ナビ」は、地域や得意分野を指定して、自社のニーズに合った社労士を簡単に見つけられます。

在職老齢年金制度とは

会社員や公務員として働いていても原則65歳で老齢厚生年金を受け取れますが、賃金と老齢厚生年金の合計額が一定額以上になると老齢厚生年金の一部が支給停止(減額)されます。この制度を「在職老齢年金制度」と言います。つまり、働いて一定額以上の収入があると老齢厚生年金が減ってしまうのです。なお、老齢基礎年金(国民年金)は減額されません。

2025年度時点の在職老齢年金制度では、老齢厚生年金の月額が

基本月額※1+総報酬月額※2―令和7年度支給停止調整額(51万円)で計算した額の2分の1

減額されます。

※1 基本月額=加給年金を除く老齢厚生年金(報酬比例部分)の年額÷12

※2 総報酬月額=毎月の賃金(標準報酬月額)+年間の賞与(標準賞与額)÷12

(例)総報酬月額が46万円、老齢厚生年金の基本月額が10万円の場合
(46万円+10万円―51万円)×1/2=2.5万円

が減額されるため、受け取れる老齢厚生年金の月額は7.5万円になります。

在職老齢年金制度の見直し内容

ここでは、前章で説明した在職老齢年金制度の見直し内容について説明します。

令和7(2025)年6月に成立した年金制度改正法に基づき、令和8(2026)年4月より在職老齢年金制度が見直されることになりました。

この見直しで、老齢厚生年金の一部が支給停止となる基準額(支給停止調整額)が、51万円から65万円と大幅に引き上げられることになりました。

前章の例では、

総報酬月額46万円+老齢厚生年金月額10万円=56万円<支給停止調整額65万円

となるため、老齢厚生年金の支給は停止されず、満額である10万円を受け取れることになります。制度見直し前と比較して、受け取れる老齢厚生年金は月額で2.5万円、年額で30万円増えることになります。また、総報酬月額があと9万円増えても減額されません。

老齢厚生年金を受け取りながら働く方が、これまで以上の賃金を支払われても老齢厚生年金が減額されなくなるため、その働きたい意欲に応え、高齢者の活躍を後押しする制度見直しと言えるでしょう。

出典:厚生労働省リーフレット「2026年4月スタート 年金の減額を意識せずより多くの収入が得られるようになります

在職老齢年金制度見直しの背景

在職老齢年金制度はなぜ見直されることになったのでしょうか。

ここでは、在職老齢年金制度見直しの背景を紹介します。在職老齢年金制度見直しの背景を確認することで、企業として今後実施すべきことのヒントが見えてきます。

高齢者の就業率の上昇

65歳以上の就業率が伸び、働く高齢者が増えています。

総務省の「労働力調査」によると、65~69歳の高齢者の就業率は

1990年 38.7%

2025年 54.5%

であり、直近では65~69歳の高齢者のうち半数以上が就業しています。

この背景には高齢者雇用に関する法改正が考えられます。2012年の高年齢者雇用安定法の改正により、企業に65歳までの雇用確保措置(定年延長、定年廃止、継続雇用)を義務付けられ、さらに2021年の改正では70歳までの就業確保が努力義務として定められました。

少子高齢化の進展による生産年齢人口の減少を受け、働く意欲のある高齢者が活躍できる環境整備に向けた法整備が進んでいるのです。

平均寿命・健康寿命の延び

平均寿命や健康寿命の延びも見逃せません。

65歳時点の平均余命の変化は以下の通りです。

1990年 男性:16.22歳 女性:20.03歳

2070年(推計)男性:23.14歳 女性:28.36歳

また、健康寿命については以下の通りです。

2001年 男性:69.40歳 女性:72.65歳

2019年 男性:72.68歳 女性:75.38歳

いずれも大きな延びとなっており、健康で働くことができる高齢者が増えていることを表しています。

66歳以上における就業意欲の高まり

働く高齢者の方の就業意欲の高さも顕著です。

内閣府の調査結果によると、65~69歳の高齢労働者の方のうち約6割が66歳以降も、約3割が71歳以降も働き続けたいと考えています。

高齢者本人の意向もありますが、企業側も昨今の人材確保の難しさから、高いスキルや経験を持つ高齢労働者の確保に動いていることが背景として考えられるでしょう。

在職老齢年金制度を意識した就業者の多さ

在職老齢年金制度を意識した高齢労働者の多さも明らかです。

内閣府の調査結果によると、65~69歳の高齢労働者のうち約3割が受け取れる年金額が減らないように調整して働きたいと考えています。

実際に労働時間を調整している高齢労働者も見られるようです。

平均寿命、健康寿命の延びや、就業意欲の高さと法整備により働く高齢者の雇用環境が整ってきたことで高齢労働者が増えています。一方で、在職老齢年金制度を踏まえて労働時間を調整する高齢労働者も一定程度見られ、高齢労働者の意欲により一層応え、その活躍を推進するためにも在職老齢年金制度の見直しが必要と言えます。

出典:厚生労働省「在職老齢年金制度の見直しについて

在職老齢年金制度見直しにより企業に求められる対応

前章では、働く意欲が高い高齢労働者が増える一方で、その意欲に十分に応えることができない状況を改善するため、在職老齢年金制度の見直しに至ったことが理解できたのではないでしょうか。

少子高齢化による生産年齢人口の減少は進んでおり、企業の人材確保は今後ますます困難になる可能性があります。また、せっかく採用した若手労働者が短期間で離職する一方、高齢労働者が定年を迎え、その貴重な知識、技術、経験やノウハウなどの継承に苦慮することも多いでしょう。

そのような中、意欲のある高齢労働者の活躍を求めることは、企業にとって大変重要です。在職老齢年金制度の見直しにより、年金を受け取りながら働く高齢労働者がこれまで以上の賃金を得ても、受け取る年金の額が減額されなくなります。企業にとっては高齢労働者の働く意欲に応えて人材確保につなげることができるチャンスです。

このチャンスを活かして、高齢労働者が意欲を持って働けるように自社の制度の見直しを検討したいものです。

以下では、自社の高齢労働者の雇用についての現状を再点検し、制度見直しの検討を進める方法について紹介します。

高齢者雇用の現状

前述の通り、高年齢者雇用安定法により2012年より65歳までの雇用確保措置(定年引上げ、継続雇用、定年廃止)義務が、2021年の改正法により70歳までの就業機会確保措置の努力義務が企業に課されています。

2025年の厚生労働省の調査結果によると、65歳までの雇用確保措置については、従業員数21人以上の企業では99.9%とほぼ全ての企業で実施しています。その内容は継続雇用が約65%、定年延長が約31%、定年廃止が約4%と、継続雇用が全体の3分の2弱を占めています。

また、70歳までの就業機会確保措置については、全体の34.8%で実施されていますが、中小企業では35.2%、大企業では29.5%となっており、中小企業の方が高齢者の就業を積極的に進めている現状が確認できます。内訳については65歳までの雇用確保措置同様に継続雇用の占める割合が高くなっています。

まずは高齢者雇用の現状を踏まえ、それに対して自社がどのような状況かを把握することが重要です。

意欲ある高齢労働者の自社での活用を考えると、中小企業でも導入が進んでいる70歳までの就業機会確保措置導入はもちろん、在職老齢年金制度の見直しを踏まえて現時点で浸透していない定年延長や定年廃止なども視野に入れる必要がありそうです。

出典:厚生労働省プレスリリース「令和7年高年齢者雇用状況等報告の集計結果を公表します

自社の従業員(要員)の年齢構成や就業意向等の現状把握

自社の高齢の従業員の活用に向けた制度の検討に先立って、自社の従業員(要員)の年齢構成や就業意向等の現状把握を進めることが大変重要です。

自社の従業員の年齢構成を把握することで、どの年齢層に弱点があり補強が必要なのかということや、50歳代前後の定年が近い従業員が多い場合の若年層への技術継承の必要性などを明らかにすることができます。若年層や中堅層の従業員が少なく、技術継承がスムーズに進められない場合には、引き続き高齢の従業員に活躍を求めることも検討する必要があるでしょう。

また、高齢の従業員の就業意向についても確認する必要があります。65歳以降の就業意向はもちろん、年齢とともに感じる体力の低下や家庭の事情などにより、従業員ごとの多様性が増す世代でもあるため、その内容をしっかり把握し、どのような働き方が求められるのかを丁寧に確認する必要があります。

従業員に関する現状把握をふまえて、今後どのような制度を導入すべきかを検討します。

現状把握を踏まえた高齢者雇用のあり方検討

どの世代でも同じですが、やりがいのある仕事や役割を与えることが大変重要です。高齢の従業員の知識、技術、経験、ノウハウなどの継承こそが、企業の継続的な発展に必要であるため、それが可能な業務や役割を与える必要があります。

前述の通り、体力的な負担を気にする従業員も少なくありません。職場環境の配慮はもちろんですが、在宅勤務や時差出勤、短時間勤務など、様々な働き方に対応できる制度の検討が必要です。短時間勤務は単にパートタイムとするだけでなく、勤務形態を多様化するなどの工夫も必要です。多様な勤務形態を準備することで、育児を行う従業員の業務を高齢の従業員が引き継ぐことも可能になり、多くの世代が働きやすい職場づくりにもつながります。

また、在職老齢年金制度の見直しに伴い、これまでは受け取れる年金が減ることを気にしていた高齢の従業員も、より多くの賃金を得られる働き方を選ぶことが希望する可能性があります。パートタイムで働いていた従業員のフルタイムへの復帰や、職務内容に応じた報酬体系、評価制度、高齢の従業員向けのキャリアパスの設計などにより、高齢の従業員が活躍しやすい制度づくりが求められます。

次章の通り、法律により65歳以上の高齢の従業員については様々な就業機会の確保が求められていますが、自社の従業員の現状把握を踏まえた適切な制度とすることが重要です。

70歳までの就業機会確保措置

前述の通り、令和3(2021)年の改正高年齢者雇用安定法では70歳までの就業機会確保措置が企業の努力義務とされています。その内容は以下の通りです。

  1. 70歳までの定年引上げ
  2. 70歳までの継続雇用制度(再雇用制度、勤務延長制度)の導入
  3. 定年制の廃止
  4. 創業支援等措置
    ・70歳まで継続的に業務委託契約を締結する制度導入
    ・0歳まで継続的に事業主自らが実施する社会貢献事業、事業主が委託・出資等をする団体が行う社会貢献事業に従事できる制度導入

なお、②の継続雇用制度については、65歳までの雇用確保措置義務とは異なり、自社や特殊関係事業主(自社の子会社など)だけでなく、他の事業主による継続雇用によることも可能です。

また、④の創業支援等措置導入は自社での雇用を前提にしない制度で、フリーランスとして独立した人などと業務委託契約を結んだり、自社や自社の出資先の企業などでの社会貢献事業に従事させたりすることができます。導入にあたっては創業支援等措置の実施に関する計画を作成し、過半数労働組合または過半数代表者の同意を得る必要があります。

高齢の従業員を活かすためには、70歳までの就業機会確保措置について念頭に置く必要があります。

具体的な手続き

これまで述べてきたように、高齢の従業員を活かすためには、様々な制度改正が必要になります。在職老齢年金制度見直しを活かす形での制度改正であれば、賃金制度の見直しが重要ですが、これは会社・従業員双方に重要な問題です。そのため、制度改正に向けて労働者代表などとの協議を重ね、その理解が得られる形で進める必要があります。

なお、前述の通り創業支援等措置(自社での雇用を前提とせず、業務委託契約を締結するなどにより就業機会を確保する)を導入する場合は、過半数労働組合または過半数代表者の同意が必要です。

制度の内容が確定した後は、就業規則、嘱託規程や雇用契約書などの見直しを進めます。これにあわせて、制度についての従業員に対する説明会を実施します。この際に在職老齢年金制度の見直しについても説明するとよいでしょう。制度の説明は高齢の従業員に対して実施することはもちろんですが、その上司にあたる管理職や、周囲の従業員に対しても制度趣旨や高齢の従業員の役割などを分かりやすく伝え、理解を求めることも重要です。

個別の事情を抱える高齢の従業員への配慮という観点から、制度に関する個別相談の場を設けるのもよいでしょう。制度への理解を深められるだけでなく、自らの働き方を再確認できる場になり、よりよい形での活躍を促すことができます。

出典:独立行政法人高齢・障害・求職者雇用支援機構「70歳雇用推進マニュアル

助成金の活用

65歳以上への定年引上げや継続雇用、雇用管理制度の整備、高年齢者の有期雇用労働者を無期転換させた事業主に対して助成を行う65歳超雇用推進助成金の活用も検討することができます。

制度の規定にあたり専門家等に就業規則の作成または相談等を依頼し、経費を支出したことや、制度を規定した就業規則または労働協約の整備など、支給要件が詳細に定められています。社労士等の専門家に高齢者雇用に関する制度の規定について相談、依頼することにあわせて、助成金の活用についても相談することができます。

なお、支給額や要件等の詳細は以下のリーフレットをご参照ください。令和8年度分は現時点で正式な内容が公表されていませんが、助成額拡充等が予定されています。助成金の活用を検討する際は最新の情報をご確認ください。

出典:厚生労働省リーフレット「令和7年度65歳超雇用推進助成金のご案内

社会保険労務士(社労士)の活用

社会保険労務士(社労士)は、労働法や社会保険制度に関する専門知識を持ち、企業の労務管理を実務面から幅広く支援する専門家です。

これまで述べてきた諸手続きを進めるにあたり、高齢者雇用に関する制度設計、就業規則や雇用契約の見直し、労働者代表との協議などを遺漏なく進めなければなりませんが、その際に専門家としてのサポートが期待できます。また、従業員への制度説明や個別相談を社労士と連携して進めることも可能です。

高齢者雇用に関する法律や諸制度は非常に複雑ですので、在職老齢年金制度の見直しという機会を活かしてスムーズに業務を進めるためにも社労士の活用をおすすめします。

まとめ|在職老齢年金制度見直しを高齢者を活かす戦略立案の契機に

本記事では、在職老齢年金制度の見直し内容とその背景、制度見直しを受けて人事労務担当者が検討し、取り組むべきことについて解説しました。

在職老齢年金制度の見直しは、意欲の高い高齢労働者の「働き控え」を防ぎ、その活躍を支えることにつながります。

昨今、人材確保が大きな課題となっている中、高齢労働者の知識、技術、経験、ノウハウなどを活かすためにその活躍を促すことは企業にとって大変重要です。

在職老齢年金制度の見直しは、自社の高齢の従業員を活用するための人事戦略の立て直しの好機とも言えます。

労働法や社会保険制度の専門家である社労士のサポートを受けながら、この好機を活かして迅速かつスムーズに進めましょう。

在職老齢年金制度について社労士に相談する

社労士を探す際には、全国6,000以上の事務所(全国の依頼可能な社労士の20%)の社労士が登録する、中小企業福祉事業団の「社労士ナビ」をご活用ください。

この企業と社労士をつなぐ日本最大級のポータルサイトでは、地域や得意分野などを指定して社労士を探せるので、自社のニーズに合った社労士が簡単に見つかります。

初回相談が無料の社労士も多いため、事務所のスタンスや人柄をしっかり見極めた上で依頼しましょう。

執筆者

中小企業福祉事業団 編集部

 
日本最大級の民間社労士団体として、社労士を介して中小企業を支援する活動を行っています。本サイト「社労士ナビ」は、課題を抱える中小企業が、課題を解決できる社労士を探して、巡り合えるように構築しました。「社労士ナビ」が中小企業の人事・労務課題を解決する一助になれば幸いです。

人気のタグ

人気の記事

人気のタグ

人気の記事

Loading

LOADING