問題社員への対応に行き詰まった病院 社労士が面談に同席した事例|社労士 村松 貴通の解決事例
<編集協力:社労士ナビ編集部>
解決した社労士
- 社会保険労務士 村松 貴通 氏(社会保険労務士法人村松事務所/静岡県浜松市)
※本記事は、実際の対応事例をもとに、企業等が特定されないよう一部内容を調整しています。
この記事を読んで分かること
- 問題社員への指導が進まなくなる組織の背景
- 社内だけで対応しきれないときに、専門家の支援が役立つ理由
- 社員への配慮と厳しい指導を両立させる考え方
問題社員への対応には、現場での指導が欠かせない
問題行動を起こす社員に対して、会社としてどこまで厳しく指導すべきか。社員とのトラブルを避けたいという思いから、対応に苦慮する企業は少なくありません。
今回相談を受けた病院も、社員との面談や行政機関への相談など、丁寧な対応を重ねていました。それでも問題が解決しなかったのは、実際の現場で厳しい指導に踏み込むことが難しかったからです。
労務問題では、法律や制度を知るだけでなく、その知識を現場でどう生かすかが問われます。 今回は、社労士が面談に同席し、具体的な指導を進めた事例です。
対象企業の情報
- 所在都道府県:東京都
- 業種:総合病院
- 従業員規模:120名
- 組織の特徴:М&Aで事業拡大を展開
厳しい指導に踏み切れなかった病院の事情
相談のきっかけは、上司に反発し、他の社員に会社の悪い点を吹聴するなど、職場に悪影響を与えている社員の存在でした。病院側は対応に困っていましたが、その背景には組織特有の事情もありました。
この病院はオーナー企業ではなく、社内から順番に経営者が交代していく組織です。社員に優しい社風がある一方で、経営者としての自覚や厳しさが足りないと感じられる面もありました。
さらに、親会社からは、訴訟問題や解雇事件を絶対に起こさないよう指示されていました。そのため、経営陣は問題行動があっても思い切った措置を取れずにいたのです。こうした姿勢は社員にも伝わり、経営陣が足元を見られる状況につながっていたと考えています。
面談や行政機関への相談でも解決できなかった
病院側が何もしていなかったわけではありません。社員との面談を行い、労働基準監督署にも相談するなど、かなり丁寧に対応していたと思います。
当時も他の社労士が関与していましたが、問題の解決には至っていませんでした。現場でどのように社員へ対応するかという実践的な支援が十分ではなく、結果として、机上の空論のような甘い対応にとどまっていたのです。
会社側は慎重に対応を続けていたものの、本人に対して必要な指導をどう実行するかというところで行き詰まっていました。
社労士が面談に同席し、直接指導
社長や人事担当者だけで問題社員と向き合っても、相手に押し切られてしまうのではないか。そうした判断から、問題社員との面談に社労士として同席することにしました。
面談では、他社での対応事例も交えながら、労務管理の専門家という立場から本人を厳しく指導しました。
会社側だけでは対応しきれなかった場面に第三者の専門家が加わり、本人への具体的な指導を支える。今回の対応では、知識を伝えるだけでなく、実際の面談の場に関わることが重要でした。
譴責処分の意味を伝え、承諾書を取得
面談では、問題となっていた言動について具体的に注意指導を行い、懲戒処分として譴責(けんせき)を実施しました。
ところが、本人は懲戒処分の意味を十分に理解していない様子でした。そこで、譴責は単なる口頭での注意とは異なり、会社からのマイナス評価であることを明確に説明しました。
さらに、今後も勤務態度が改善されず、再び問題行動を起こした場合には、より重い懲戒処分が下される可能性があることも伝えました。こうした注意指導と説明を経て、本人から承諾書を受け取ることができました。
労務問題には、現場を知る専門家の支援を
労務問題に直面したとき、インターネットや書籍で詳しく調べたり、労働基準監督署などの行政機関に相談したりすることは大切です。しかし、どれだけ知識を集めても、自社だけで対応することには限界があります。
今回の病院も、以前から他の社労士の支援を受けていました。それでも問題を解決できなかったことを考えると、専門家を選ぶ際には、法律や制度の知識だけでなく、現場での対応経験も重視していただきたいところです。
弊所(村松事務所)が今回行ったように、問題社員との面談に同席し、実際の指導まで支えることも社労士の役割の一つです。 会社だけでは対応が難しい場面だからこそ、客観的な第三者の視点と実践的な支援が役立つと考えています。
社員への優しさと、経営陣に必要な厳しさ
今回の事例では、社員に優しい企業風土が、結果として厳しい指導を難しくしていた面もありました。
もちろん、社員を大切にする姿勢は必要です。ただし、問題行動に対して適切に指導できなければ、社員から軽く見られ、会社としての規律を保つことも難しくなります。
社員を思いやる優しさと、問題行動には毅然と向き合う厳しさ。 経営陣には、その両方が求められると思います。
よくある質問
問題行動がある社員に、懲戒処分を行うことはできますか?
問題行動があっても、必ずしも懲戒処分が認められるわけではありません。
労働契約法第15条では、行為の性質や態様などに照らし、客観的に合理的な理由がなく、社会通念上相当と認められない懲戒処分は無効になるとされています。
処分を検討する際には、就業規則の定めや具体的な事情を踏まえて判断する必要があります。
社労士に問題社員との面談へ同席してもらうことはできますか?
対応できる範囲は社労士や依頼内容によって異なりますが、今回のように面談に同席し、労務管理の専門家として具体的な指導を支援する方法があります。
相談先を選ぶ際には、法令や制度の説明に加えて、実際の労務トラブルへの対応経験があるかも確認するとよいでしょう。
まとめ|問題社員への対応を自社だけで抱え込まない
社員への配慮を大切にすることと、問題行動を見過ごさないことは、どちらも会社に必要な姿勢です。丁寧に対応しても指導が進まないなら、現場を知る専門家の力を借りる選択肢もあります。
大切なのは、争いを避けることだけを優先せず、会社として必要な指導を実行することです。
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