【会社側】退職手続きの流れとは?必要な書類や注意点もわかりやすく解説!
従業員の退職時には、社会保険・雇用保険・税務処理など、さまざまな手続きが必要になります。
特に健康保険・厚生年金保険は退職日の翌日から5日以内、雇用保険は10日以内と短い期限が設定されており、正確な対応が必要です。
本記事では、退職の申し出から退職後の対応まで、会社側が行うべき退職手続きの流れを詳しく解説します。
あわせて必要な書類や実務上の注意点も整理していますので、最後までご覧ください。
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退職の申し出を受けたらまず確認すべきこと

退職の申し出を受けた時点で、会社として確認すべき事項はいくつかあります。最初の対応をしっかりしておくと、その後の手続きがスムーズに進みます。
退職日の確定
従業員の退職日は、「雇用契約が終了する日」となります。
民法第627条第1項では、期間の定めのない雇用契約の場合、いつでも解約の申入れをすることができ、退職の申し入れから2週間が経過すれば雇用契約が終了すると定められています。
就業規則に「退職の〇日前までに届け出が必要」などの定めがあっても、法的には民法の規定が優先されます。ただし、実務上2週間(14日)で新しい従業員の採用や引継ぎを行うのは難しいため、なるべくその定めに従って退職届を提出するよう促しましょう。
また、退職前に従業員が有給消化を行う場合には、最終出勤日と退職日が異なることにも注意が必要です。
退職日は社会保険料や源泉徴収の計算にも影響するため、正確な退職日を確認することが重要です。
離職理由の確認
退職する理由が「自己都合」なのか「会社都合」なのかも、この段階できちんと従業員本人に確認しておきましょう。
雇用保険の離職票に記載する「離職理由」が会社側と従業員側で相違がある場合は、ハローワークにおいて、事実関係を調査のうえ離職理由が判定されます。
スムーズな退職手続きを行うためにも、曖昧にせず、事前にしっかり確認しておくことが大切です。
有給休暇の残日数の有無
退職前に、年次有給休暇を消化したいという従業員は少なくありません。
有給休暇は従業員の権利であり、会社は原則として希望通りに取得を認める必要があります。そのため、有給休暇の残日数分を消化して退職する場合の退職日は、原則として「有給消化の最終日」となります。
まずは正確な残日数を把握し、「退職日」や「有給消化前に引継ぎのスケジュール」を確認しましょう。
会社側の退職手続きの流れ

退職日が確定したら、退職手続きを順次進めていきます。特に、公的手続きは期限が定められているため、優先順位をつけて対応しましょう。
退職届の受理
まずは、従業員から書面で退職届を提出してもらいます。
退職の意思表示は、民法上は口頭でも有効とされていますが、後々のトラブルを避けるためにも退職届を提出してもらうことをおすすめします。
社内の処理(貸与品の回収・最終賃金の精算)
退職日までに、貸与品の回収や以下の社内手続きを進めておくことが必要です。
- 社内備品(PC、IDカード、携帯電話、制服等)の返却確認
- 健康保険資格確認書(発行を受けている場合。本人・被扶養者分)
- 社内システムのアカウント停止・権限削除
- 未精算の立替金・交通費の確認
- 最終給与の確定と支払準備
退職する従業員自身が何を返却すべきかわかるよう、貸与品のリストを共有しておくとスムーズです。
健康保険被保険者証は、2025年(令和7年)12月2日以降使用できなくなりました。使用できなくなった健康保険証については、自身で廃棄することとされています。ただし、マイナンバーカードを取得していない方や、まだマイナ保険証の登録をしていない方に交付される「資格確認書」は返却が必要なため、退職日までに必ず回収しておきましょう。
社会保険に関する手続き(資格喪失届の提出)
従業員の退職日の翌日から5日以内に、健康保険・厚生年金保険の資格喪失届を提出する必要があります。
| 提出書類 | 健康保険・厚生年金保険 被保険者資格喪失届 添付書類:健康保険資格確認書、高齢受給者証等(交付されている場合) |
| 提出期限 | 退職日の翌日から5日以内 |
| 提出先 | 所轄の年金事務所(健康保険組合等に加入している事業所の場合は、それぞれの組合等にも資格喪失届の提出が必要です。) |
出典:日本年金機構「従業員が退職・死亡したとき(健康保険・厚生年金保険の資格喪失)の手続き」
なお、退職による健康保険・厚生年金保険被保険者の資格喪失日は、退職日の翌日となります。
ここで注意したいのが、月末退職の場合は退職月の保険料も発生する点です。
例えば、3月31日退職の場合、資格喪失日は4月1日となり、3月分の保険料を徴収することになります。企業担当者は、資格喪失届の提出期限や資格喪失日を正しく理解し対応しましょう。
雇用保険に関する手続き(資格喪失・離職票の交付手続き)
雇用保険に関する手続きは、退職日の翌日から10日以内に、以下の2点をハローワークに提出する必要があります。
| 提出書類 | 1.雇用保険被保険者資格喪失届 2.雇用保険被保険者離職証明書 |
| 提出期限 | 退職日の翌々日から10日以内 |
| 提出先 | 所轄のハローワーク |
出典:厚生労働省「事業主の行う雇用保険の手続き」
「雇用保険被保険者離職証明書」は、失業給付の申請や失業給付額の算定に必要な書類です。
以下の場合に交付が必要です。
- 59歳以上の退職者の場合:本人の希望に関わらず必ず交付
- 59歳未満の退職者の場合:本人が雇用保険被保険者離職証明書の交付を希望しない場合は、必要なし
離職票の交付手続きや記載方法など詳しい内容は、以下の記事で詳しく解説していますのであわせてご参照ください。
【企業向け】離職票とは?交付手続き・必要書類・記載ルールをわかりやすく解説
住民税の手続き(「給与所得者異動届出書」の提出)
給与から特別徴収(天引き)されている住民税を「普通徴収」に変更するため、会社側は「給与所得者異動届出書」を従業員が居住する市区町村に提出する必要があります。
| 提出書類 | 特別徴収に係る給与所得者異動届出書 |
| 提出期限 | 退職日の翌月の10日まで |
| 提出先 | 従業員が居住する市区町村 |
また、退職時期によって住民税の徴収方法が異なるため注意が必要です。1月1日から4月30日までに退職する場合、退職月以降の残りの住民税(5月分まで)を最後の給与や退職金から一括徴収することが義務付けられています。
6月1日から12月31日までに退職する場合は、退職月の住民税は最後の給与から特別徴収し、翌月以降の残りの税額については従業員本人からの申し出があれば一括徴収できます。
申出がない場合は普通徴収に切り替わり、従業員本人が直接納付することになります。
所得税の手続き(源泉徴収票の交付・郵送)
会社は従業員に対し、退職日から1ヶ月以内に「給与所得の源泉徴収票」を交付する義務があります(所得税法第226条)。
この書類は、従業員が転職先での年末調整や確定申告をする際に必要な書類です。
また、退職手当等を支払う場合には、原則として支払い時に所得税および住民税を源泉徴収し、退職日から1ヶ月以内に「退職所得の源泉徴収票・特別徴収票(以下、「退職所得の源泉徴収票等」と表記)」も別途交付しなければなりません。
| 提出書類 | 源泉徴収票 ・給与所得の源泉徴収票 ・退職所得の源泉徴収票等 (※退職手当等の支払いがある場合) |
| 提出期限 | 退職日から1ヶ月以内 |
| 提出先 | ・従業員 ・従業員が居住する市区町村 ・所轄税務署 |
出典:国税庁「退職所得の源泉徴収票」の提出範囲と提出枚数等」
なお、令和8年(2026年)1月1日以降は、役員だけでなく退職手当等を受給したすべての従業員の「退職所得の源泉徴収票等」を税務署と市区町村に提出する必要があります。
最新情報を確認しながら手続きを進めましょう。
従業員の退職後に発生する会社側の対応(書類・記録の保管義務)

退職手続きが完了した後も、会社には一定期間、書類や記録の保管義務があります。主な保管期間は以下のとおりです。
- 雇用保険の被保険者に関する書類:
雇用保険法施行規則第143条により4年間の保管が義務付けられています。 - 賃金台帳や労働者名簿、退職証明書の控え:
労働基準法第109条により労働者名簿、賃金台帳および雇入れ、解雇、災害補償、賃金その他労働関係に関する重要な書類は、5年間の保管が義務とされています。ただし、2020年の法改正時に設けられた経過措置として、当分の間は3年が適用されます。
参考:厚生労働省労働基準局「改正労働基準法等に関するQ&A(令和2年)」 - 年末調整に関する書類:
源泉徴収簿や給与所得者の扶養控除等申告書などの年末調整に関する書類は、所得税法により7年間の保管が必要です。
起算日は、提出期限の属する年の翌年1月10日の翌日となります。なお、税務署長から提出を求められた場合には、会社側が提出する必要があります。
退職者の記録も適切に管理できるよう、社内の保管ルールを整備しておくことが大切です。
参考:国税庁「給与所得者の扶養控除等申告書等の保存期間」
スムーズな退職手続きには社労士との連携が有効です

ここまでご紹介したとおり、退職手続きは期限が複数定められており、書類作成にも専門知識が必要です。特に、社会保険は5日以内、雇用保険は10日以内といった短い期限を守りつつ、正確に手続きを進めるには相応の業務負担がかかります。
社労士に依頼することで、手続きの時間を大幅に削減できるだけでなく、提出漏れや記載ミスといったトラブルを防ぐことができます。また、法改正への対応も社労士が最新情報をもとに適切にサポートしてくれるため安心です。
退職手続きにおける社労士のサポート例
- 資格喪失届や離職票の作成・提出代行、退職証明書の内容アドバイス、法令チェック、退職時のトラブル対応など、退職手続き全般のサポート
顧問契約ではなくても、必要なときだけ依頼できるスポット対応を行っている事務所も多いため、困ったら気軽に相談できる社労士を見つけておくとよいでしょう。
まとめ:今からできる退職手続きの備えを
本記事では、従業員の退職時に会社が行うべき手続きの流れを詳しく解説しました。
退職手続きは、従業員の新たなスタートが円滑に進むよう、滞りなく進めたいものです。とはいえ、日々の業務に加えて退職者の手続きを同時進行するのは容易なことではありません。
したがって、「この業務に不安がある」「手続きが煩雑だ」と感じた場合は、社労士などの外部専門家に依頼することも有効な選択肢の一つです。
退職手続きについて社労士に相談する
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初回相談が無料の社労士も多いため、事務所のスタンスや人柄をしっかり見極めた上で依頼しましょう。