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人事・労務
更新日:2026 / 06 / 12
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【最新】“パート扶養がなくなる”は誤解?年収の壁一覧とポイント整理

近年、税制や社会保険制度の見直しが進むなかで、「パート扶養がなくなるのではないか」といった不安の声が聞かれるようになってきました。

この背景には、年収によって税金や保険料の負担が発生する「年収の壁」に関する制度変更があります。

たとえば、令和7(2025)年分からは、給与収入のみで年収200万円以下の場合、所得税がかかり始める目安が最大160万円に引き上げられました。さらに令和8・9年分は、最大178万円まで引き上げられています。

さらに、令和7(2025)年に年金制度改正法が成立し、令和8(2026)年10月には、社会保険の「月額8.8万円以上」という加入要件(いわゆる106万円の壁)が撤廃されます。この改正は、働き方や雇用管理にも大きな影響が及ぶ可能性があります。

こうしたなか、特にパート労働者を多く雇用している中小企業では、これまで「扶養内」で働いていた労働者が「今後もそのままの条件で働き続けられるのか」「どの法改正が自社に影響するのか」といった不安や疑問を抱える場面が増えているのではないでしょうか。

本記事では、「扶養制度がなくなる」という誤解されがちな情報の整理に加え、企業が押さえておくべき税制・社会保険の変更点と、実務に役立つ対応策をわかりやすく解説します。

ぜひご一読いただき、今後の対応にお役立てください。

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“パート扶養がなくなる”は誤解?年収の壁が変わってきた背景とポイントを整理

社会保険の適用要件の拡大や税制の見直しが続くなかで、「パート扶養がなくなるのでは?」という声が広まりました。ただし、扶養制度そのものが廃止されるわけではありません。

変わるのは、扶養内で働ける年収の基準と、社会保険に加入しなければならない対象の範囲です。

ここでは、特に注目を集めた所得税の壁「103万円」がどのような経緯で変わってきたかを整理します。

一時検討された「103万円→123万円」案の経緯

令和6(2024)年の年末に発表された自民党・公明党の「令和7年度税制改正大綱」は、所得税が発生する年収基準を103万円から123万円へ引き上げる案が盛り込まれました。これは、基礎控除、給与所得控除の金額をそれぞれ引き上げることで実現するものです。

具体的には以下のような見直しが検討されていました。

【所得税が発生する年収基準123万円の案】

 

控除 ~2024年 2025年以降(変更前との差)
基礎控除 48万円 58万円(+10万)
給与所得控除 55万円 65万円(+10万)
合計(非課税枠) 103万円 123万円

つまり、給与収入のみの場合、所得税がかかり始める目安が103万円から123万円に上がる仕組みです。

これにより、パート社員が就業時間を調整する目安となるラインが103万円から123万円にシフトすると想定され、多くのメディアでも「103万円の壁が緩和される」と注目されました。

しかし、最終的には所得税の課税最低限は123万円ではなく、令和7(2025)年分は160万円、令和8(2026)年分からは178万円へと、段階的に引き上げることが決まりました。

決定した改正内容|令和7年分は160万円、令和8・9年分は178万円へ

最終的に決定されたのは、基礎控除や給与所得控除を見直し、給与収入のみの場合に所得税がかかり始める目安を段階的に引き上げる税制改正です。

この改正により、給与収入のみで年収200万円以下の場合、令和7(2025)年分は最大160万円まで、令和8・9年分は最大178万円まで所得税がかからない仕組みとなっています。

【改正内容の変化(いずれも給与収入のみの場合の目安)】

項目 ~2024年 令和7(2025)年分 令和8・9年分(特別措置)
基礎控除 48万円 最大95万円※ 最大104万円※
給与所得控除(最低額) 55万円 65万円 74万円
合計(課税最低限) 103万円 最大160万円 最大178万円

※最大額はいずれも年収要件を満たす場合に適用されます。

基礎控除額は、低所得層への支援を手厚くするため、年収に応じて段階的に設定されています。すべての人に一律で最大額が適用されるわけではないため、企業が労働者へ説明する際は、「給与収入のみの場合の目安」として伝えることが大切です。

なお、令和8・9年分の178万円は「特別措置」として設けられたものです。令和10年分以降の扱いは、今後の税制改正で確定する予定です。

所得税の壁と社会保険の壁は別の制度のため、「178万円まで働ける」という情報だけが先行すると、社会保険の壁を見落とした就業調整が起きやすくなります。働き控えの解消や企業のシフト管理の安定のためには、労働者が誤解なく働き方を選べるよう、制度の違いを正確に伝えることが重要です。

参考:財務省|令和7年度税制改正大綱(PDF)

参考:財務省|令和8年度税制改正大綱(PDF)

参考:国税庁|源泉所得税改正のあらまし

【2026年最新|一覧表】年収の壁はどう変わる?(103万円・106万円・130万円・178万円など)

パートの働き方に影響する主な年収の壁は6つです。これらは税制と社会保険にまたがっており、改正のタイミングもそれぞれ異なります。

たとえば、103万円・160万円・178万円の壁は主に所得税に関わる基準である一方で、106万円・130万円の壁は社会保険の加入や扶養判定に関わる基準です。これらを混同すると、労働者への説明が不十分になったり、企業側の社会保険手続きに漏れが生じたりするおそれがあるため、正確な理解が欠かせません。

ここでは、主な年収の壁がどの制度に関係し、企業実務にどのような影響があるのかを、改正状況とあわせて整理します。

【年収の壁と発生する影響まとめ|2026年最新】
▼リンクをクリックすると、解説箇所にジャンプできます。

年収の壁/関係する制度 発生する影響 改正状況
103万円の壁(現123万円)/所得税制 税金上の扶養基準に関わる 【令和7(2025)年分】扶養親族・同一生計配偶者の対象となる所得要件が123万円へ見直し
【令和8・9年分】136万円へ引き上げ
106万円の壁/社会保険 勤務先での社会保険加入が必要になり、扶養から外れる場合がある 【令和8(2026)年10月~】賃金要件(月額8.8万円以上)が撤廃予定。ただし、撤廃後も週20時間以上の要件は残り、加入対象は拡大する見込み
130万円の壁/社会保険 社会保険の扶養から外れる目安になる 【現在】基準は引き続き130万円
【令和7(2025)年10月~】19歳以上23歳未満の家族(被扶養者)の年間収入要件が150万円未満へ引き上げ
160万円/169万円の壁/所得税制 配偶者特別控除を満額で受けられる上限に関わる 160万円/169万円の壁/所得税制
配偶者特別控除を満額で受けられる上限に関わる
【令和7(2025)年分】配偶者特別控除の満額適用ラインが150万円から160万円へ引き上げ
【令和8・9年分】満額適用ラインは169万円以下に見直し
178万円の壁/所得税制 本人に所得税がかかり始める 【令和8(2026)年分以後】所得税の課税最低限を178万円へ引き上げ
201.6万円の壁/所得税制 配偶者特別控除の対象外となる 【令和7(2025)年分まで】201.6万円
【令和8・9年分】207万円へ引き上げ

なお、配偶者特別控除(160万円・201.6万円の壁)は、扶養されるパート本人ではなく、扶養する側の納税者の所得税額に関わる制度です。社会保険の扶養とは別の制度のため、混同しないよう整理しておきましょう。

各壁の詳細や企業担当者が確認すべきポイントを、以下でそれぞれ解説します。詳しい壁の内容や企業・労働者への影響、実務対応を押さえたい方は、関連記事もあわせてご覧ください。

103万円の壁:扶養に入れる年収基準が123万円に(本人の所得税課税ラインは178万円へ)

令和7年度税制改正により、扶養親族・同一生計配偶者の対象となる所得要件が引き上げられ、給与収入のみの場合に配偶者控除・扶養控除の対象となる基準が103万円から123万円に変わりました(配偶者控除の控除額38万円は変更なし)。これまで103万円を意識して就業調整をしていた労働者にとって、働ける上限のラインが変わっています。

一方で、「103万円の壁」には、本人の所得税がかかり始めるラインという意味もあります。こちらは令和7(2025)年分に160万円へ、令和8(2026)年分からは178万円へ引き上げられているため、税金上の扶養基準とは分けて整理する必要があります。

なお、令和8・9年分については、物価上昇による税負担を調整するため、基礎控除額に一定の上乗せが行われています。ただし、この上乗せは令和8・9年分に限った時限措置です。令和10年分以後は物価指数に基づいて2年ごとに見直される予定です。

関連記事:103万円の壁とは?配偶者控除の仕組みと令和7年度税制改正のポイント・企業対応を解説

106万円の壁:賃金要件の撤廃により加入対象が拡大

令和8(2026)年10月に、106万円の壁に関わる賃金要件(月額8.8万円以上)が撤廃される予定です。

ただし、賃金要件の撤廃は「社会保険に加入しなくてよい」という意味ではありません。月額8.8万円以上という条件がなくなることで、これまで対象外だった短時間労働者も、週20時間以上の所定労働時間などの要件を満たせば、社会保険の加入対象となる可能性があります。

さらに、現在は厚生年金保険の被保険者数が51人以上の企業が対象ですが、この企業規模要件も以下のスケジュールで段階的に縮小されます。

  • 令和9(2027)年10月:36人以上の企業が対象
  • 令和11(2029)年10月:21人以上の企業が対象
  • 令和14(2032)年10月:11人以上の企業が対象
  • 令和17(2035)年10月:人数要件が撤廃(全ての企業が対象)

これまで対象外だった中小企業にも適用が広がるため、自社が対象となるタイミングを早めに把握しておきましょう。

関連記事:106万円の壁とは?社会保険の加入条件と2026年10月からの撤廃内容・企業への影響を解説

130万円の壁:社会保険の扶養基準は引き続き130万円

2026年時点でも、社会保険上の扶養から外れるかどうかを判断する年収の目安は、原則として130万円のままです。

ただし、関連する変更点として、19歳以上23歳未満の家族に関する扶養認定基準が見直されています。令和7(2025)年10月から、健康保険の被扶養者認定における年間収入要件が130万円未満から150万円未満に引き上げられました。

また、年収130万円未満であっても、週20時間以上の勤務など一定の条件を満たす場合は、勤務先で社会保険の加入対象となることがあります。企業は、「130万円未満なら必ず扶養内」と判断せず、対象者の年齢や勤務条件もあわせて確認することが大切です。

関連記事:130万円の壁とは?扶養認定の基準と制度改正のポイント・企業対応を解説

178万円の壁:本人の所得税に関わるライン

令和8(2026)年分から、所得税の課税最低限は178万円へ引き上げられています(令和7(2025)年分は160万円)。課税最低限とは、給与収入のみの場合に所得税がかかり始める年収の目安です。

ただし、178万円は所得税に関する基準であり、社会保険の加入要件や健康保険の扶養認定とは別の制度です。労働者が「178万円までなら社会保険の扶養内で働ける」という情報だけで働き方を変更すると、106万円・130万円の壁に関わる社会保険の加入要件を見落とすおそれがあります。

企業は、178万円の壁が所得税に関する基準であることを正しく共有し、労働者から相談を受けた際は、社会保険の加入要件もあわせて確認できるようにしておきましょう。

関連記事:178万円の壁とは?2026年の税制改正で何が変わる?企業と労働者への影響を解説

160万円/201.6万円の壁(令和8・9年分は207万円の壁):配偶者特別控除の適用ライン

令和7年度税制改正により、配偶者特別控除の満額適用ラインが150万円から160万円に引き上げられました。さらに、令和8・9年分は、給与所得控除などの見直しにより、配偶者控除・配偶者特別控除に関する各ラインが変更されています。

なお、令和10年分以降の各ラインは、物価指数に基づいて2年ごとに見直される予定です。

以下の表は、令和8・9年分における配偶者の年収による配偶者控除・配偶者特別控除の扱いの違いです。

配偶者の年収(令和8・9年分) 配偶者特別控除の扱い
〜136万円 配偶者控除の対象
136万円超〜169万円以下 配偶者特別控除が満額適用
169万円超〜207万円以下 控除額が段階的に減少
207万円超 控除なし

令和7年度の改正により、これまで150万円を意識して就業調整していたパート社員にとって、満額の控除が受けられる範囲が約160万円まで広がりました。

ただし、160万円・201.6万円の壁(令和8・9年分は207万円の壁)は配偶者特別控除に関する基準であり、社会保険の扶養基準とは異なります。労働者から勤務時間や年収調整の相談を受けた際は、所得税と社会保険を分けて確認することが大切です。

参考:国税庁|源泉所得税改正のあらまし

企業が正確な情報を共有することで、労働者が安心して今後の働き方を検討しやすくなります。説明会や個人面談などを活用し、個々の希望や勤務状況に応じた調整を進めていきましょう。

なお、各年収の壁の違いや企業担当者向けの確認ポイントは、以下の記事でも詳しく整理しています。あわせてご覧ください。

関連記事:【2026年最新】年収の壁一覧|担当者がおさえておきたい103万円・106万円・130万円・178万円の違いと整理ポイント

「扶養から外れる」と何が変わる?企業とパート社員それぞれの影響

年収の増加や社会保険の適用範囲拡大により、配偶者の扶養から外れ、自ら社会保険に加入するパート社員が増えつつあります。

この変化は、本人の働き方や企業の人件費管理にも影響を及ぼすため、企業側の理解と備えが重要です。

ここでは、扶養から外れた場合(労働者が自身で社会保険に加入する場合)のメリット・デメリットを、企業と労働者の両面から整理します。

企業側への主な影響

メリット

  • 長期雇用の促進や、福利厚生面での信頼感向上につながる
  • 福利厚生面での安心感が高まり、法令遵守・コンプライアンス面の強化につながる

デメリット

  • 社会保険料の事業主負担が増える
  • 勤務時間の管理や労働者への説明など、実務の負担が増える
  • 「扶養内で働きたい」という希望が強い場合、離職やシフト調整が難航する可能性がある

制度変更への対応には一時的な負担もありますが、結果的には職場の安定や法的リスクの回避につながります。労働者との対話を重ね、信頼関係を築くことが大切です。

パート社員への主な影響

メリット

  • 将来の年金受給額が増える
  • 医療保険の保障内容が扶養時より充実する

デメリット

  • 社会保険料の自己負担が発生し、短期的に手取り額が減る可能性
  • 制度が複雑で、自分がどの制度に該当するか不安になりやすい

扶養を外れることで、一時的な負担感がある一方で、将来への保障は強化される側面があります。そのため、労働者が制度を前向きに受け止められるよう、企業からの丁寧な説明やサポートが欠かせません。

人事・労務担当者がすべき実務対応とは?

年収の壁への対応では、特定の制度だけでなく、税制・社会保険・配偶者控除を横断して確認することが重要です。企業としては、次のような対応を進めておくとよいでしょう。

① 従業員の働き方と年収見込みを把握する

パート・アルバイトの勤務時間、月収、年収見込みを整理し、どの年収の壁に該当する可能性があるかを確認します。

② 税制と社会保険の違いを説明できるようにする

123万円・178万円のラインは所得税、106万円・130万円のラインは社会保険、160万円・201.6万円のラインは配偶者特別控除に関係します。なお、令和8・9(2026・2027)年分は特別措置によりラインがそれぞれ異なります。制度ごとの違いを社内で説明できるようにしておくことが大切です。

③ 社会保険加入の可能性がある従業員を早めに確認する

106万円の壁に関わる社会保険の適用拡大により、令和8(2026)年10月以降は、一定規模以上の企業で週20時間以上働く短時間労働者が加入対象となるケースが増えます。

④ 必要に応じて専門家へ相談する

社会保険や労務管理は社労士、税制は税理士に相談することで、自社の状況に合った対応を進めやすくなります。

また、国の「年収の壁対策」として、企業の負担を軽減するためのキャリアアップ助成金や保険料調整制度など、活用できる支援策も用意されています。こうした制度を組み合わせることで、コストを抑えながら対応を進められます。

実務対応の具体的な内容や活用できる支援策の詳細は、以下の記事をご確認ください。

関連記事:年収の壁への企業対応|複数の壁が絡む問題と活用できる支援策を解説

専門家との連携が安心|パート扶養問題の適切な対応をサポート

頻繁に見直される税制や社会保険制度に対応するためには、最新の制度に即した判断と正確な手続きが欠かせません。

社会保険制度は社労士へ相談するのがおすすめです。

たとえば、以下のような場面でサポートを受けられます。

  • 社会保険の適用基準の判断(加入対象者の特定など)
  • 制度変更に合わせた社内説明資料の作成や労働者説明のサポート
  • 就業規則や雇用契約書の制度対応に伴う見直し・修正
  • 行政機関への申請書類の作成、手続きのアドバイス・代行

特に中小企業では、人員や体制の面から、法改正への対応を社内だけで完結させるのが難しいこともあります。

そうした場合でも、専門家と連携することで、制度変更への対応を確実かつスムーズに進めることが可能です。

まとめ|今後の変化に備えて早めの対応を!

「パート扶養がなくなる」という言葉が注目を集めていますが、実際に変わるのは制度の廃止ではなく、その前提となる社会保険・税制のルールです。

年収の壁に関する制度改正は2024年以降段階的に進んでおり、企業側にも正確な対応が求められる場面が増えていきます。

保険料負担や労務管理、社内説明の準備など、現場対応は一時的に負荷となるかもしれません。しかし、それを制度への理解を深め、労働者との信頼関係を築くチャンスと捉えることで、より持続可能な組織づくりにつながります。

こうした変化への備えとして、専門家との連携は非常に有効な手段のひとつです。専門家のサポートを受けながら、自社にとって最適な対応を見つけていきましょう。

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初回相談が無料の社労士も多いため、事務所のスタンスや人柄をしっかり見極めた上で依頼しましょう。

執筆者

中小企業福祉事業団 編集部

 
日本最大級の民間社労士団体として、社労士を介して中小企業を支援する活動を行っています。本サイト「社労士ナビ」は、課題を抱える中小企業が、課題を解決できる社労士を探して、巡り合えるように構築しました。「社労士ナビ」が中小企業の人事・労務課題を解決する一助になれば幸いです。

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