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人事・労務
更新日:2025 / 12 / 19
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よくある労働相談とは?人事・労務が知っておきたい対策と相談先まとめ

労務管理を担当する人事・労務部門にとって、労働者とのトラブルは避けて通れない課題です。残業代の未払いやハラスメント対応、解雇手続きの不備など、労務リスクは年々複雑化しています。

こうした問題は、企業が意図せず“うっかり”発生してしまうケースも少なくありません。そのため、トラブルが起こった際にどこへ相談すべきか、また、そもそもトラブルを未然に防ぐにはどのように専門家と連携すべきかを担当者は事前に把握しておくことが重要です。

本記事では、企業の現場で実際に多く見られる「よくある労働相談」の具体的な内容、人事・労務ができる対応策、そして相談先の選び方までをわかりやすく解説します。

トラブルが起きる前の“備え”として、ぜひ最後までご覧ください。

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労働相談とは

 

「労働相談」とは、企業と労働者の間、あるいは企業と専門家の間で発生する労働に関するあらゆる事柄についての相談を指します。

具体的には、採用・解雇・雇止め・賃金・残業代・労働時間、ハラスメント、メンタルヘルス、就業規則・労働条件・福利厚生、社会保険・労働保険の手続きなど、労働者の入社から退職までに関わる幅広いテーマが対象です。

労働相談は「労働者から企業への相談」「労働者が外部に相談」「企業が専門家に相談」のように、立場や目的によって複数の形があります。

本記事では、企業が専門家に相談する労働相談に焦点を当てて解説します。

人事・労務担当者が外部の専門家に労働相談をすることで、労働時間の管理やハラスメントの対応、解雇の判断、就業規則の整備などについて専門的な視点からアドバイスや対応の支援を受けることができます。

近年は働き方改革やリモートワークの普及により、労働環境が多様化する一方で、企業に求められる法令遵守のハードルも高まっています。さらに、労働者の権利意識が強くなり、SNSなどでの情報発信力が高まっていることから、小さなトラブルが企業の評判リスクにつながるケースも増加しています。

このような背景から、問題が顕在化する前に適切な労働相談を行うことが重要です。

よくある労働相談の内容と背景

ここでは、企業の人事・労務担当者から実際に多く寄せられている代表的な労働相談のテーマと、その背景・注意点について解説します。

同様のリスクを抱えていないか、自社の状況と照らし合わせながらご確認ください。

賃金不払残業・労働時間管理に関する相談

労働時間が適切に管理されず、残業代が正しく支払われていない事例は、厚生労働省の調査でも報告されています。

たとえば、厚生労働省が公表する相談事例集では、勤怠管理システムの不具合で残業時間が記録されていなかったケースや、実労働時間に見合う割増賃金が支払われていなかったケースなどが紹介されています。

企業側に故意がなくても、実態として労働時間に応じた賃金が支払われていなければ労働基準法違反となります。そのため、制度の誤認や運用ミスがないかを点検し、就業規則や勤怠制度の見直し、さらには管理者への管理意識の向上を図ることが重要です。

ハラスメントへの対応

パワーハラスメント、セクシュアルハラスメント、妊娠・出産・育児休業等に関するハラスメントなど、ハラスメントに関する相談は増加傾向にあります。

令和4年4月からは、中小企業にもパワーハラスメント防止措置が義務化されており、職場でハラスメントを防止するための措置(相談窓口の設置・迅速な対応・再発防止策の整備など)を講じなければなりません。

以下の①~③の要素を全て満たす行為をパワーハラスメントと定義されています。

職場における「パワーハラスメント」の定義

  1. 優越的な関係を背景とした言動
  2. 業務上必要かつ相当な範囲を超えたもの
  3. 労働者の就業環境が害されるもの

※なお、客観的判断により、業務上必要かつ適正な業務指示や指導は該当しません。

出典:厚生労働省「パワーハラスメント防止措置

管理職による指導とパワハラの境界は明確ではなく、対応に悩むケースも少なくありません。

「自社の対応が適正だったか」「被害者・加害者にどう配慮すべきか」「再発防止策は十分か」など、不安や疑問があれば専門家と連携し、防止策の整備や相談窓口の設置を検討しましょう。

解雇・雇止め・配置転換などの相談

労働者を解雇する際には、「客観的に合理的な理由」と「社会通念上相当であること」が必要とされています(労働契約法第16条)。したがって、一方的な通告や、就業規則に明記されていない理由での解雇は無効となる可能性があります。

また、配置転換についても、業務上の必要性があるか、労働者に与える生活上の不利益が過大でないかといった観点から、判断の妥当性が問われます。実際に、業務と無関係な動機に基づく配置転換が「権利の濫用」とされ、無効と判断された裁判例もあります。

やむを得ず解雇や雇止めを行う場合や、業務上必要な配置転換を検討する場合には、事前に専門家に相談し、適法かつ適切な手続きをとることが重要です。

雇用契約書・就業規則の不備

「契約書に残業の取り決めがない」「就業規則が10年以上更新されていない」といった制度面の不備に起因する労務トラブルも多く見受けられます。

労働基準法では、常時10人以上の労働者を使用する場合、就業規則の作成と所轄労働基準監督署への届出が義務付けられています(就業規則を変更した場合も同様に届出が必要です)。ただし、労働者数が10人未満の企業であっても、トラブルを未然に防ぐ観点から実態に即した就業規則の整備・運用が推奨されます。

また、時間外・休日労働には労働基準法第36条に基づく労使協定(いわゆる「36協定」)の締結・届出が必要です。

企業規模を問わず、これらの規程や協定は定期的な点検と見直しが求められます。

関連記事:就業規則がないのは違法?10人未満でも作成する理由やリスクを解説

関連記事:労使協定とは?36協定などの種類と届出ルールを一覧表付きで徹底解説

人事・労務ができる労務トラブル対策

「問題が起きてからの対応」だけでなく、「トラブルを未然に防ぐ仕組みづくり」にも活用できます。

ここでは、人事・労務担当者が主体的に行えるトラブル対策を、4つの観点から紹介します。

就業規則などルールの整備

就業規則や賃金規程などの社内規程は、職場のルールを明文化するうえで重要な役割を果たします。

近年は、長時間労働の是正や働き方の多様化などを背景に法改正が相次いでいます。

内容が古いままでは気づかぬうちに法令違反につながるリスクもあるため、自社の実態と照らし合わせて定期的な見直しを行うことが大切です。必要に応じて、社労士と連携することも有効です。

社内相談窓口や通報制度の導入

職場でのトラブルを早期に把握するには、労働者が安心して相談できる体制づくりが欠かせません。

ハラスメント対策では、相談窓口の整備が法的に義務付けられています。外部機関と連携したホットラインを設ける企業も増えており、労働者の声を受け止められる仕組みを整えることが、信頼関係の構築にもつながります。

労務研修・管理職向け教育の実施

ハラスメントの防止や適切な労務管理のためには、企業全体の理解と管理職の判断力が不可欠です。

定期的な研修や情報共有の場を設けることで、組織全体の意識が高まり、トラブルの未然防止にもつながります。

特に管理職や現場の責任者には、「どこまでが適切な指導か」「何がハラスメントに該当するのか」といった線引きを正しく理解してもらうことが重要です。

研修を通じて全社で労務知識と意識を底上げすることが、健全な職場づくりの土台となります。

労働相談はどこにすればいい?主な相談先とその特徴

企業が労務トラブルを抱えている場合、トラブルの性質や段階によって、適切な窓口を使い分けることが大切です。

以下に、主な相談先の特徴を紹介します。

総合労働相談コーナー

総合労働相談コーナーは、労働条件や解雇、ハラスメントなど労務全般の悩みを無料で相談できる公的窓口です。

各都道府県の労働局や労働基準監督署に設置されており、企業の担当者も利用できます。

専門相談員が制度の概要や、どの機関に相談すべきかを案内してくれるため、「法的な問題かどうか判断がつかない」「まずは情報収集したい」といった初期対応に向いています。

ただし、具体的な法的判断や交渉の代行は行われない点には注意が必要です。

労働基準監督署

労働基準監督署は、労働基準法などに違反している可能性がある事案について対応する行政機関です。未払い賃金、長時間労働、解雇や労災などが対象で、企業からの相談にも応じています。

重大な法令違反があれば、立入調査や是正勧告などの行政指導が行われます。自社の労務管理に不備がないか確認したいときや、トラブルの是正が必要と感じた場合に活用するとよいでしょう。

相談前には、勤怠記録や雇用契約書などの関連資料を整理しておくとスムーズです。

参考:都道府県労働局(労働基準監督署、公共職業安定所)所在地一覧

弁護士

労働審判や訴訟のリスクがあるような深刻なトラブルが発生した際には、弁護士への相談が有効です。企業の対応が法的に適切かどうかを判断してもらえるほか、交渉や法的手続きの代理も依頼が可能です。

ただし、すべての弁護士が労働分野に精通しているわけではなく、特に社会保険制度や実務手続きについては対応外であるケースもあります。そのため、労働法務に強く、必要に応じて社会保険分野の知識も備えた専門弁護士を選ぶことが重要です。

予防的な相談よりも、訴訟リスクが高まった段階での活用が適しているといえます。

社会保険労務士(社労士)

社会保険労務士(社労士)は、労働法や社会保険制度に関する専門知識を持ち、企業の労務管理を実務面から幅広く支援する専門家です。

就業規則の整備や雇用契約、労働時間・残業代、休職・復職、解雇対応など、日常の相談はもちろん、法改正への対応やトラブルを未然に防ぐ制度設計にも対応できます。

労務トラブルの“予防”から“再発防止”までを一貫してサポートできる存在として、あらかじめ社労士と連携しておくことで、いざというときも安心です。

なお、労使間で法的な紛争に発展した場合には、労働者側とのあっせんや調停など、一定の手続きにおいて代理人として対応できるのは「特定社会保険労務士(特定社労士)」に限られます。

今後複雑化する可能性がある労務トラブルに関しては、特定社労士資格を持つ社労士に相談するのも選択肢の一つです。

関連記事:特定社会保険労務士(特定社労士)とは?一般的な社労士との違いや探し方を解説!

まとめ|労働相談は予防から再発防止まで社労士との連携が安心です

本記事では、企業の人事・労務担当者が直面しやすい「よくある労働相談」の内容とその背景、トラブルを未然に防ぐための対策、そして状況に応じた相談先について解説しました。

近年、労務トラブルは多様化・複雑化しており、「うっかり」法令違反となってしまうケースも少なくありません。制度や対応の誤りが大きなリスクにつながることもあるため、早い段階からの対策と適切な相談体制の整備が欠かせません。

こうしたなか、労働・社会保険の専門家である社労士は、就業規則や雇用契約の整備、ハラスメント対応、残業代や解雇に関する助言など、日常的な相談から制度設計、再発防止まで幅広くサポート可能です。

「いざ」というときだけでなく、トラブルを未然に防ぐ“備え”として、信頼できる社労士と日頃から連携しておくことが、企業にとって大きな安心につながります。

社労士に相談する

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初回相談が無料の社労士も多いため、事務所のスタンスや人柄をしっかり見極めたうえで依頼しましょう。

執筆者

中小企業福祉事業団 編集部

 
日本最大級の民間社労士団体として、社労士を介して中小企業を支援する活動を行っています。本サイト「社労士ナビ」は、課題を抱える中小企業が、課題を解決できる社労士を探して、巡り合えるように構築しました。「社労士ナビ」が中小企業の人事・労務課題を解決する一助になれば幸いです。

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