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社会保険・労働保険
更新日:2025 / 12 / 26
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【最新情報!】2028年10月1日施行。雇用保険が「週10時間」以上に適用拡大!企業への影響と求められる対策とは

2024年5月の国会で雇用保険の適用拡大を含む改正雇用保険法が可決されました。雇用保険の適用拡大では、雇用保険の加入条件の1つである1週間の所定労働時間が「20時間以上」から「10時間以上」へと変更されます。雇用保険の適用拡大は、2028年10月1日の施行となるため、まだ猶予はありますが、企業としては改正による影響を想定したうえで、導入に向けた対策を始める必要があるでしょう。

本記事では、雇用保険法改正のポイントや雇用保険の適用拡大の具体的内容に触れたうえで、改正が企業に与える影響や企業が行うべき対策をわかりやすく解説します。雇用保険の適用拡大に向けて、何から始めるべきかとお悩みの方は、ぜひ最後までご覧ください。

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雇用保険の適用拡大とは?雇用保険法改正のポイント

雇用保険の拡大は、2024年5月に成立した改正雇用保険法における主たる内容の1つです。改正雇用保険法は、順次施行され、雇用保険の拡大は2028年10月1日の施行となります。

まずは、雇用保険の拡大とは何か、雇用保険法が改正された経緯・背景について解説します。

雇用保険の加入条件が「週20時間」以上から「週10時間」以上へ拡大

現在の雇用保険法では、雇用保険の加入条件は、1週間の所定労働時間が20時間以上の労働者とされています。改正雇用保険法では、これが週10時間以上となり、これまで雇用保険の対象外であった短時間のパート・アルバイトの労働者にも雇用保険への加入が義務付けられることとなりました。

雇用保険の適用拡大により、短時間労働者は安心して就労できるようになり、企業にとっては幅広い人材の確保や労働力の拡充といった効果が期待できるでしょう。

雇用保険法改正の経緯・背景

雇用保険法改正の趣旨は「多様な働き方を効果的に支える雇用のセーフティネットの構築、「人への投資」の強化等のため、雇用保険の対象拡大、教育訓練やリ・スキリング(新たな職業スキルの習得)支援の充実、育児休業給付に係る安定的な財政運営の確保等の措置を講ずる。」ことにあります。

参考:雇用保険法等の一部を改正する法律(令和6年法律第26号)の概要|厚生労働省

改正雇用保険法の内容は、次の4つです。

  • 雇用保険の適用拡大
  • 教育訓練やリ・スキリング支援の充実
  • 育児休業給付に係る安定的な財政運営の確保
  • その他雇用保険制度の見直し

この中でも、雇用保険の適用拡大は、改正雇用保険法の主たる内容として注目されています。

雇用保険事業月報によると、2025年10月末時点の雇用保険の被保険者数は、約4,537万人です。一方、総務省の「労働力調査」によると2023年における週間就業時間が20時間未満の雇用者数は約734万人とされています。週間労働時間が20時間未満の雇用者数は、10年前の2013年には約494万人であったものが年々増加を続けており、今後も多様な働き方の整備が進むことにより雇用者数も増加することが想定されます。

現在の雇用保険法では、1週間の所定労働時間が20時間未満の労働者は雇用保険の適用対象外とされており、増加を続ける短時間労働者のセーフティネットとしては機能しない状況となっていました。雇用保険の適用拡大は、こうした短時間労働者のセーフティネットとしての役割を期待されているのです。

雇用保険の適用拡大により、短時間労働者も雇用保険の各種給付を受けられる環境が整備されると、より多くの人が労働市場に参加することが期待できるでしょう。

先ほどの、総務省の「労働力調査」では、令和5年における週間就業時間が20時間未満の雇用者数約734万人のうち、10時間以上20時間未満の者は約506万人となっています。改正雇用保険法が施行されると、短時間労働者の大半が雇用保険の適用対象となることが予測されます。

雇用保険の適用拡大の具体的内容

雇用保険の適用拡大により、雇用保険の加入条件とともに短時間労働者が不利にならないよう被保険者期間の算定基準や失業認定基準などの見直しも行われます。

ここでは、雇用保険の適用拡大の具体的な内容を解説します。

雇用保険の加入条件

現行法における雇用保険の加入条件は、1週間の所定労働時間が「20時間以上」であること、および31日以上の雇用見込みがあることです。改正雇用保険法では、これが1週間の所定労働時間が「10時間以上」であること、および31日以上の雇用見込みがあることに拡大されます。

そもそも、1週間の所定労働時間とは、雇用契約書や就業規則で定められた、通常の週における労働者の勤務時間(休憩時間を除く)のことです。たとえば、毎週月曜から金曜の13時から16時までの3時間(休憩なし)で勤務しているパートタイム労働者の場合、1週間の所定労働時間は15時間となります。

変形労働時間制により1週間の所定労働時間が固定されていない場合には、1か月や3カ月などの一定期間を単位として、週の平均労働時間を計算します。そのため、ある週の所定労働時間が5時間であっても、1か月の単位で週の平均労働時間が10時間を超えるときには、雇用保険の加入条件を満たすこととなるのです。

なお、当初は31日未満の雇用を予定していた場合でも、契約更新により31日以上雇用されるときには、その31日以上の雇用見込みとなった日から雇用保険の加入対象となります。

各種基準の改正

雇用保険の適用拡大により、週20時間の所定労働時間を基準に設定されていた各種基準も改正されます。

具体的な改正内容は、次のとおりです。

現行法 改正法
被保険者期間の算定基準 賃金の支払いの基礎となった日数が11日以上
または
賃金の支払いの基礎となった労働時間数が80時間以上ある場合
を1月とカウント
賃金の支払いの基礎となった日数が6日以上
または
賃金の支払いの基礎となった労働時間数が40時間以上ある場合
を1月とカウント
失業認定基準 1日の労働時間が4時間未満にとどまる場合は失業日と認定 1日の労働時間が2時間未満にとどまる場合は失業日と認定
1.法定の賃金日額の下限額
2.最低賃金日額
1.給付率が80%となる点の額の2分の1
2.最低賃金で週20時間を働いた場合と基礎として設定
1.給付率が80%となる点の額の4分の1
2.最低賃金で週10時間を働いた場合と基礎として設定

参考:雇用保険法等の一部を改正する法律(令和6年法律第26号)の概要|厚生労働省

雇用保険の被保険者期間は、失業給付(基本手当)の受給要件として重要なものです。たとえば、一般の離職者の場合、離職日以前の2年間で被保険者期間が通算で12か月以上なければ失業給付を受給できません。

雇用保険の適用拡大にともない被保険者期間の算定基準が緩和されることで、短時間労働者であっても、失業給付の受給要件を満たしやすくなります。

失業認定基準や賃金日額の下限額についても、適用拡大の改正により短時間労働者が不利に扱われることがないよう、基準が見直されています。

雇用保険の適用拡大による企業への影響

雇用保険の適用拡大は、パートやアルバイトなどの短時間労働者を多く抱える中小企業に大きな影響を与えることが想定されます。

雇用保険の適用拡大による企業への影響としては、次のようなものが挙げられます。

  • 雇用保険料の負担額が増加する
  • 雇用保険手続きのための事務負担が増える
  • 雇用の拡大が期待できる

雇用保険料の負担額が増加する

当然のことですが、これまでに雇用保険未加入であった労働者が雇用保険に加入すると、企業として雇用保険料の企業負担分が増加します。

ここでは、1週間の所定労働時間が15時間で月額8万円の賃金を支払っているパートタイム労働者を例として、雇用保険料の負担額をシミュレーションしてみます。

一般の事業での2025度の雇用保険料率は、14.5/1000(1.45%)です。そのうち、事業主負担は9/1,000(0.9%)となっています。つまり、月額8万円の賃金を支払っている場合、事業主の雇用保険料の負担額は720円となります。

参考:令和7(2025)年度 雇用保険料率のご案内|厚生労働省

月額で720円の負担は、大きなものではないと考える方もいらっしゃるでしょう。しかし、適用拡大により加入対象となる労働者の数が多くなると、雇用保険料の負担は無視できないものとなります。

たとえば、さきほどと同条件のパートタイム労働者が20人いる場合には、月額の負担額は1万4,400円となり、年間では17万2,800円となります。

雇用保険料の負担は、1人1人を対象に考えると大きなものではないかもしれません。しかし、多くの短時間労働者を雇用している中小企業にとっては、多大な負担となる可能性があるため注意が必要です。

雇用保険手続きのための事務負担が増える

雇用保険料の負担増加以上に問題となり得るのが、事務手続きの増加です。雇用保険の適用拡大により加入者(雇用保険資格取得者)が増えると、その分だけ事務手続きの負担も大きなものとなります。

雇用保険への加入者が増えることで必要となる事務手続きとしては、主に次のものが挙げられます。

  1. 新たに加入対象となる従業員の把握
  2. 雇用保険の加入手続き
  3. 雇用保険料の計算

まずは、雇用保険の適用拡大により、新たに雇用保険の加入対象者となる従業員を洗い出さなければなりません。具体的には、雇用保険未加入の従業員の中から、週間の所定労働時間が10時間以上20時間未満の従業員を漏れなく把握する必要があります。

加入対象となる従業員を把握したら、雇用保険被保険者資格取得届を準備して資格取得日の翌月10日までにハローワークへ提出します。加入対象となる従業員の数が多くなると、書類の準備にも多く人員と時間を割くことになるでしょう。

雇用保険に加入すると、毎月の給与計算において雇用保険料の計算もしなければなりません。加入手続きとは異なり給与計算は毎月のことなので、従来の体制では対応できなくなる可能性もあります。その場合には、給与計算のための人員を増員する、新たに勤怠管理・給与計算システムを導入するなどコストのかかる施策が必要です。

さらに、入れ替わりの激しい短時間労働者を多く雇用している企業では、雇用保険の加入手続きだけでなく喪失手続きも度々発生する事務作業となるため、事務負担はさらに大きなものとなるでしょう。

雇用の拡大が期待できる

雇用保険の適用拡大が与える影響は、企業にとって悪いものばかりではありません。雇用保険の適用拡大が始まると、より多くの人の労働市場への参加が期待されます。雇用保険の適用拡大は、人員不足に悩む企業における雇用拡大のチャンスとも言えます。

そもそも、雇用保険法改正の趣旨は、多様な働き方を効果的に支える雇用のセーフティネットを構築することです。これまで、雇用保険の対象外となる短時間労働者は、失業のタイミングや育児・介護が必要となったときに雇用保険による給付が受けられませんでした。雇用保険の適用拡大により短時間労働者でも安心して就労できる環境が整えば、より多くの人材が労働市場に参加して、企業側にとって安定した労働力の確保につながるでしょう。

雇用保険の適用拡大が労働者に与える影響

雇用保険の適用拡大により、1週間の所定労働時間が10時間から20時間未満の労働者が新たに雇用保険の加入対象となります。その数は2023年の調査で約506万人とされており、2028年10月1日の施行時にも数百万人が新たに雇用保険の加入対象となるのは間違いありません。

労働者が雇用保険に加入する最大のメリットは、失業手当の給付(求職者給付)が受けられることです。短時間労働者の中には、会社都合や自己都合で退職・再就職を余儀なくされる方も多くいます。失業手当には、短時間労働者が退職を選択せざるを得なくなったときのセーフティネットとしての役割が期待されます。

さらに、雇用保険に一定期間加入していると、育児休業給付や介護休業給付を受け取ることも可能です。それにより、短時間労働者でも出産のタイミングで会社を辞めるのではなく、育休を取ったうえで復帰するという選択もしやすくなります。

また、教育訓練やリ・スキリング支援の充実は、改正雇用保険法のテーマの1つです。雇用保険には「教育訓練給付制度」が設けられており、雇用保険の加入対象となれば短時間労働者でも、雇用保険からの給付金を受けながらスキルアップや資格取得を目指すことが可能となります。

雇用保険の適用拡大により雇用保険の被保険者や受給資格者となる方については、再就職・転職・スキルアップを支援する求職者支援制度の除外対象とならないのも労働者のメリットです。

ただし、雇用保険へ加入することで、労働者の手取り額は少々減ってしまいます。一般の事業での2025年度の雇用保険料率は、14.5/1000(1.45%)で、労働者負担は5.5/1000(0.55%)です。賃金の月額が5万円の場合、雇用保険料の負担額は275円となります。

参考:令和7(2025)年度 雇用保険料率のご案内|厚生労働省

雇用保険の適用拡大により労働者は雇用保険料の負担が発生しますが、雇用保険の各種給付を受けられるようになることは、短時間労働者にとって大きなメリットのある改正と言えるでしょう。

雇用保険の適用拡大に向けて企業が行うべき対策

雇用保険の適用拡大は、2028年10月1日に施行されます。施行までに時間はありますが、改正にスムーズに対応するには事前の準備が重要です。現状で1週間の所定労働時間が10時間以上20時間未満の短時間労働者を雇用していない企業では、改正の影響をそれほど心配する必要はないでしょう。逆に、短時間労働者を多く雇用している企業では、改正に向けて十分な準備をすべきです。

雇用保険の適用拡大に向けて、今から企業が行うべき対策としては次のものが挙げられます。

  • 現状の把握と改正による影響の予測
  • 雇用契約書や就業規則の見直し
  • 事務手続きの負担増加への対策
  • 既存の従業員への周知

それぞれの対策について、具体的な内容を見ていきましょう。

現状の把握と改正による影響の予測

改正に備えて最初に行うべきことは、従業員の現状を把握したうえで改正による影響を予測することです。

まずは、現在の従業員のうち、新たに雇用保険の加入対象となる可能性のある短時間労働者の数を確認します。そのうえで、新たに雇用保険に加入する際の会社のコストを試算したり対象者への通知案内を作成したりします。

その結果、改正の影響が大きいと判断されるなら、早い段階から対象者への周知や事務手続きの増加に向けた対策を進める必要があるでしょう。改正までの間に現在の従業員や新規雇用する従業員の労働時間を調整できれば、改正のタイミングで1度に多くの事務作業を抱える心配もなくなります。

雇用契約書や就業規則の見直し

現在、1週間の所定労働時間が10時間以上20時間未満の短時間労働者を雇用している、または雇用を予定している企業では、雇用契約書や就業規則の記載を改正に対応したものに見直す必要があります。

たとえば、雇用契約書では、雇用保険加入の有無、所定労働時間などの記載について見直しが必要となるでしょう。改正に対応するため、賃金体系の見直しを行う場合には就業規則の見直しも必要です。

雇用契約書や就業規則の記載を改正法に対応した適切なものにするには、専門家である社労士に相談することをおすすめします。

事務手続きの負担増加への対策

新たに雇用保険の加入対象となる短時間労働者を多く抱えている企業では、事務手続きの負担増加への対策が必須となります。準備なく改正を迎えると、事務担当者に過大な負担を与えることになるでしょう。

年間を通して短時間労働者の入退社が多い企業では、事務担当者の増員を検討することも対応策のひとつです。毎月の給与計算に加えて、雇用保険被保険者資格取得届や喪失届の作成作業も多くなるため、現状の人員では対応できなくなる可能性があります。

勤怠管理・給与計算システムを導入していない場合には、この機会にシステムを導入するのも1つの方法です。

既存の従業員への周知

従業員に不安を与えないため、既存の従業員に対しては早い段階から周知活動を行う必要があります。

新たに雇用保険の加入対象となる短時間労働者の中には、雇用保険料を負担することに不安を抱えている方もいます。実際に保険料の負担が始まるまでに、雇用保険料の金額や加入のメリットなどを丁寧に説明することで、加入対象者の不安を和らげることができるでしょう。

1週間の所定労働時間が10時間未満の短時間労働者については、雇用保険に加入するメリットを伝えることで、労働時間の増加に応じてくれる可能性もあります。既存の従業員の労働時間が増えると新規雇用よりも教育コストを下げられるため、従業員への周知活動は安定した労働力の確保を求める企業にとっても有益な施策と言えるでしょう。

まとめ|雇用保険の適用拡大に向けた事前の準備を進めよう

本記事では、雇用保険法改正のポイント、雇用保険の適用拡大の具体的内容、改正が企業や労働者に与える影響、企業が行うべき対策について解説しました。

2028年10月1日に施行される雇用保険の適用拡大は、短時間労働者を多く抱える中小企業にとって、特に大きな影響を与えることが予測されます。改正への対応を適切に行うには、現状を把握したうえで、雇用契約書や就業規則の見直し、従業員・加入対象者への周知や事務負担の増加に向けた対策を進めていくことが重要です。

雇用契約書や就業規則の見直しが必要な場面では、人事・労務の専門家である社労士に相談することをおすすめします。

社労士を探す際には、全国6,000以上の事務所(全国の依頼可能な社労士の20%)の社労士が登録する、中小企業福祉事業団の「社労士ナビ」をご活用ください。

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初回相談が無料の社労士も多いため、事務所のスタンスや人柄をしっかり見極めた上で依頼しましょう。

執筆者

中小企業福祉事業団 編集部

 
日本最大級の民間社労士団体として、社労士を介して中小企業を支援する活動を行っています。本サイト「社労士ナビ」は、課題を抱える中小企業が、課題を解決できる社労士を探して、巡り合えるように構築しました。「社労士ナビ」が中小企業の人事・労務課題を解決する一助になれば幸いです。

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