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就業規則
更新日:2025 / 12 / 04
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在宅勤務制度とは?導入・運用の注意点と社労士と連携するメリットを解説

在宅勤務制度は、働く場所や時間を柔軟に選択できる仕組みとして、多くの企業に定着しつつあります。

一方で、勤怠管理・人事評価・費用負担など、運用ルールがあいまいなままでは法令違反や労使トラブルにつながるおそれがあり、運用面で企業が抱える課題も少なくありません。

本記事では、在宅勤務制度の基本的な仕組みから、導入・運用時の課題や注意点、そして社労士と連携して制度設計・運用をスムーズに進める方法までをわかりやすく解説します。

在宅勤務制度をこれから導入したい企業の担当者や、制度の見直しを検討している方は、ぜひ参考にしてください。

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「在宅勤務制度」とは

在宅勤務制度は、テレワーク※の一形態であり、所属オフィスに出勤せず自宅を就業場所として業務を行う勤務形態です。

※テレワークとは:情報通信技術(ICT)を活用し、労働者が通常の勤務場所とは異なる場所で業務を行う働き方です。テレワークは、勤務する場所により以下の3つに分けられます。

  1. 在宅勤務:自宅で勤務する
  2. サテライトオフィス勤務(施設利用型勤務):自宅近くや通勤途中に設けられた、サテライトオフィス(テレワーク専用の作業スペースなど)で勤務する
  3. モバイル勤務:移動中の交通機関の車内や、カフェなどで勤務する

出典:厚生労働省|テレワークの適切な導入及び実施の推進のためのガイドライン

国土交通省の「テレワーク人口実態調査(令和6年度)」によると、勤務先にテレワーク制度を導入している企業は33.1%、そのうち約97%が在宅勤務です。コロナ禍の反動でやや減少傾向にあるものの、在宅勤務は依然としてテレワークの中心的な働き方となっています。

在宅勤務の場合、出社・顧客訪問・会議参加などの外出を伴わず、1日の業務がすべて自宅で完結します。そのため、通勤の負担が軽減でき、時間を有効活用できる点が特徴です。

在宅勤務制度における企業の4つの課題

在宅勤務制度は、働き方の柔軟性を高め、労働者の満足度や生産性向上にもつながる制度です。

一方で、運用を誤ると組織のコミュニケーション低下や労働時間管理の不備、公平性を欠いた人事評価の傾向など、企業運営に深刻な影響を及ぼす可能性があります。

ここでは、在宅勤務制度を導入・運用する際に企業が直面しやすい4つの主な課題を整理します。

1.円滑な社内のコミュニケーションの確保

在宅勤務では、物理的に離れた環境で業務を行うため、情報共有の遅れや生産性の低下、心身の不調に気づきにくいなどの問題が生じやすくなります。

特に、新規採用や異動直後の労働者は、業務の進め方を上司や同僚に確認する機会が限られるため、不安やストレスを感じやすい傾向があります。

企業がすべき主な対策は次のとおりです。

  • 職場と同じようにコミュニケーションが取れる環境を整備する(オンライン会議ツールやチャットなどの活用)
  • 健康相談体制の整備をする
  • 対面での打ち合わせや面談の機会を意識的に設ける

こうした取り組みを継続することで、労働者が安心して働ける環境づくりとチーム全体の一体感の維持につながります。

2.勤怠状況の記録方法と運用ルールの明確化

在宅勤務では労働者の勤務実態を直接確認できません。そのため、勤怠状況の正確な把握が難しい点が課題です。

厚生労働省「労働時間の適正な把握のために使用者が講ずべき措置に関するガイドライン(以下、適正把握ガイドライン)」では、テレワーク中の労働時間を「原則として、客観的な記録(PCログや入退室記録)をもとに把握することが望ましい」としています。

一方で、やむを得ず労働者の自己申告による勤怠管理を行う場合には、次のような運用ルールを明確にしておく必要があります。

  • 事前に適正な申告方法や記録の取り方について十分な説明を行うこと
  • 実際の勤務状況と自己申告内容に乖離がないかを確認すること
  • 必要に応じて、客観的な記録(パソコンの稼働状況など)をもとに補正を行うこと

勤怠状況を正確に把握する仕組みの整備が、労使トラブルの予防に欠かせません。

3.労働時間の適正な管理方法と長時間労働防止

勤怠状況の把握と併せて注意すべき点は、テレワーク特有の働き方によって曖昧になりやすい労働時間の適正な管理です。

テレワークでは、中抜け時間・移動時間を含む部分的な在宅勤務・休憩時間の取り方など、勤務形態が柔軟になる一方で、労働時間の区切りが不明確になりやすい傾向があります。

その結果、業務の指示や報告が時間帯を問わず行われ、長時間労働や過重労働につながるおそれがあります。

こうした事態を防ぐためには、企業が次のような対策を講じることが大切です。

  • 勤務時間外のメール・電話連絡などの使用基準を設ける
  • 業務システムのアクセスを、勤務時間内に制限する
  • 時間外・休日労働の手続きを明確にする
  • 長時間労働者へ注意喚起を行う
  • 勤務間インターバル制度(※)の活用をする
    ※勤務終了から次の勤務開始まで一定時間を確保する仕組み

在宅勤務制度を導入する際は、労働者の健康を守りながら、仕事と生活のバランスを保つための仕組みづくりが求められます。

4.公平な人事評価制度

在宅勤務では、上司が部下の勤務態度や仕事の進め方を直接観察しにくく、評価の公平性が損なわれやすいという課題があります。

不公平感をなくし、公正な人事評価を行うためには、以下のような工夫が必要です。

  • 評価基準を具体的に示し、全員が理解できるようにする
  • 達成状況や課題を確認する、面談などのフィードバックの機会を定期的に実施する
  • 評価者が対面機会の少ない環境でも公平に判断できるよう、教育・訓練を行う

労働者がライフスタイルに応じた働き方を安心して選択できるよう、企業は勤務場所を問わず、成果・能力・姿勢などの評価基準を統一することが大切です。

就業規則に定めるべき在宅勤務制度の項目と注意点

在宅勤務であっても、労働基準法・最低賃金法・労働安全衛生法などの労働基準関係法令は原則としてすべて適用されます。そのため、在宅勤務制度の導入を進める際には、就業規則に内容やルールを明文化しておく必要があります

厚生労働省の「テレワークモデル就業規則」で提示されている、テレワーク勤務導入時に就業規則に定める項目は次の3つです。

  • テレワーク勤務を命じることに関する規定
  • テレワーク勤務用の労働時間を設ける場合、その労働時間に関する規定
  • 通信費などの負担に関する規定

※引用:厚生労働省|テレワークモデル就業規則

これらの項目を明確に定めていない場合、長時間労働や未払い残業、評価の不公平、費用精算の紛争など、労使トラブルや法令違反に発展するおそれがあります。

ここでは、在宅勤務制度を整備するうえで、就業規則に定めるべき主な項目と注意点を解説します。

1.就業の場所に関する事項

企業は労働契約を締結する際、労働者に対して就業の場所に関する事項を明示する義務があります(労働基準法第15条)。

テレワークは本来、労働者が働く場所を柔軟に選べる働き方です。一方で、企業には労働時間や安全を管理する責任があるため、勤務可能な場所をあらかじめ定めておくことが求められます。

在宅勤務の場合、就業場所は労働者の「自宅」、もしくは会社が認めた「自宅に準ずる場所(例:親の介護を行うための実家など)」に限定するのが一般的です。

勤務場所を制限する理由は、主に次の3つです。

  • セキュリティ対策・情報漏えい防止のため
  • 勤怠管理を正確に行うため
  • 労働災害発生時に適切に対応するため(※テレワーク中の業務災害も対象)

これらの観点から、勤務を認める場所の範囲は、就業規則で明確に定めておくことが重要です。

2.勤怠管理に関する事項

在宅勤務中の労働時間や休暇の取得状況は、オフィス勤務と同様に適正に管理する義務があります(労働基準法第32-36条)。

そのため、就業規則には勤務開始・終了時の報告や、時間外労働の申請、離席時の対応方法など、勤怠に関わるルールを明確に定めておく必要があります。

勤怠管理で定めておくべき主な項目は、次のとおりです。

  • 始業及び終業の時刻の報告・記録の方法(電話・電子メール・勤怠管理システムなど)
  • 休憩時間・所定休日の取扱い
  • 時間外労働・休日労働・深夜労働を防ぐ取り決め
  • 中抜け時間(定められた休憩時間以外に労働から離れる場合)の取扱い
  • 労働時間の把握方法(原則、客観的なデータを用いる。勤務実態を直接確認しづらい場合には、自己申告制を取り入れるケースもある)

これらのルールがあいまいな場合、過重労働や虚偽申告などで労使トラブルを招くおそれがあります。勤怠管理の方法や手続きは、就業規則に具体的に明示しておくことが大切です。

3.柔軟な労働時間に関する事項

テレワークは、働く時間帯が異なる職種や業務の性質に合わせて、柔軟な労働時間制度を導入しやすい働き方です。

労働者の業務内容に応じて適切な制度を選び、就業規則に明確に定めておくことで、在宅勤務制度を円滑に運用することができます。

以下は、現場で採用されている労働時間制度の一例です。

  • 通常の労働時間制度
    1日8時間、週40時間以内で勤務する一般的な制度です(労働基準法第32条)。テレワークであっても、オフィス勤務と同様に始業・終業時刻や休憩時間を定めて運用します。
  • フレックスタイム制
    清算期間(最長3か月)内で週40時間以内となるよう総労働時間を定め、労働者が始業・終業時刻を自ら決定できる制度です。家庭や生活リズムに合わせた勤務が可能で、在宅勤務と相性が良い仕組みです。
  • 裁量労働制(特定の業務・職種に導入可能)
    みなし労働時間制の一種で、労働者が業務遂行の手段や時間配分を自ら決めて働く制度です。取材・編集を行う専門職や事業の企画職などに適しており、「専門業務型」と「企画業務型」の2種類があります。
  • 事業場外みなし労働時間制(労働時間の算定が困難な場合に導入可能)

使用者(事業主等)の指揮監督が及ばず労働時間を算定することが難しい場合に適用できる制度です。実際の労働時間ではなく、所定労働時間働いたものとみなします。上司の具体的な指示を受けずに自律的に業務を進める業務を担う場合に活用されます。

各制度の利用には、満たすべき要件や手続きが定められています。導入を検討する際は、法令上の条件や自社の実態を踏まえ、適切な制度設計を行うことが必要です。

なお、採用する労働時間制度については就業規則で定めるほか、フレックスタイム制・裁量労働制に関しては、労使協定の締結が必要です。労使協定については、以下の記事で詳しく解説しています。

関連記事:労使協定とは?36協定などの種類と届出ルールを一覧表付きで徹底解説

4.通信費などの費用負担に関する事項

在宅勤務では、通信費やパソコンなどの情報通信機器、文具・備品など、自宅での業務に伴う費用が発生する場合があります。

こうした費用については、自宅で勤務する労働者が一部を負担する場合があるため、就業規則に取り扱いを明確に定めておくことが必要です。

特に、労働者に情報通信機器や作業用品などの費用を負担させる場合には、就業規則に必ず規定しなければなりません。これは、労働基準法第89条第5号に基づく義務であり、記載がないまま運用すると法令違反となるおそれがあります。

在宅勤務に関しては、次のような費用項目を明示しておくと安心です。

  • 通信回線使用料(インターネット利用料、Wi-Fiなど)
  • 電話料金(業務用通話にかかる費用)
  • 文具・消耗品(紙・インク・筆記具など)

企業が費用を負担する場合は、上限額や支給基準、請求・精算方法を、就業規則または在宅勤務規程に具体的に記載しましょう。

また、情報通信機器・パソコンなどの備品を貸与する場合は、セキュリティガイドラインを設け、管理・返却ルールを厳しく定めておくことも重要です。

テレワークの就労規則作成に関する詳細や就業規則の記載例は、厚生労働省|テレワークモデル就業規則もご確認ください。

5.交通費や在宅勤務手当に関する事項

在宅勤務をおこなう労働者に対し、使用した通信回線使用料や電話料金、水道光熱費に相当するものとして在宅勤務手当を支給することがあります。また、一時的に企業に出社させた場合に交通費を支給することもあります。

この場合の手当や交通費は、社会保険料や労働保険料等の算定基礎となる「報酬」・「賃金」に該当するかどうかを事前に把握しておくとよいでしょう。

テレワーク総合ポータルサイトによると交通費と在宅勤務手当について次のように記載されています。

  • 交通費…労働日における労働契約上の労務の提供地で判断します
    ・労働契約上の労務の提供地が自宅の場合 報酬・賃金に含めない
    ・労働契約上の労務の提供地が企業の場合 報酬・賃金に含める
  • 在宅勤務手当…実費弁償に対応するかで判断します
    ・業務遂行に必要な費用に対応するものと認められる場合 報酬・賃金に含めない
    ・上記以外の場合、一律の金額を支給する場合など 報酬・賃金に含める

給与計算の際に戸惑わないよう、事前に担当者と共有しておくことでスムーズな運用に繋がります。

在宅勤務制度を社労士と協力して整備する3つのメリット

在宅勤務制度は柔軟な働き方を実現できる一方で、導入・運用には法令遵守や勤怠管理、人事評価など複数の課題が絡むため、慎重な設計が求められます。

ここでは、社労士と協力して在宅勤務制度を整備する3つの主なメリットを紹介します。

1.法的リスクを回避できる

労働基準法上の労働者は、どのような勤務形態であっても、労働基準法や労働契約法など複数の法令が関係します。

社労士はこれらの法律や、厚生労働省が示すテレワークに関するガイドラインに精通しており、法令遵守の観点から制度全体をチェック・助言できる専門家です。

就業時間の設定や光熱費・通信費の負担先など、法的判断が分かれる項目についても、社労士と協力することで法令違反のリスクを未然に防ぐことができます。

2.自社に合った制度を設計できる

在宅勤務の対象者や働き方、業務の進め方は、企業によって大きく異なります。

社労士は、企業の業種・職種・組織体制を踏まえ、現場で実際に運用しやすい制度を設計します。

評価制度や勤怠管理の方法なども、法律に沿いつつ実務に即した形で整備できるため、形だけの制度ではなく、機能する仕組みを構築できる点が大きなメリットです。

3.就業規則や労使協定の整備を任せられる

在宅勤務制度を導入・改定する際には、就業規則の変更や労使協定の締結、労働基準監督署への届出などが必要です。

これらの手続きには、法令の理解だけでなく制度設計や労務リスクへの配慮など、専門的な知識が欠かせません。

社労士に依頼することで、法的要件を満たした手続きや書類作成をスムーズに進めることができ、企業担当者の負担を軽減できます。

在宅勤務制度の導入・調整をしたい企業にとって、社労士との協力は「法的リスクを回避しながら自社に合った現実的な運用ルールを構築できる」大きなメリットがあります。

まとめ|在宅勤務制度の設計・運用は社労士と連携するのが安心です

本記事では、在宅勤務制度の概要から、導入時に企業が直面しやすい課題、就業規則に定めるべき項目、そして社労士と協力して整備するメリットについて解説しました。

在宅勤務制度は、働く場所や時間が柔軟になる一方で、勤怠管理や労働時間の把握が難しくなり、人事評価や費用負担などの取り扱いが不明確になりやすいという特徴があります。

曖昧な制度設計のまま運用した場合、長時間労働の発生や評価の不公平感、費用精算をめぐるトラブルにつながるおそれがあります。

こうしたリスクを防ぎ、法令を守りながら適切に制度を整えるには、労務管理と法令に精通した社労士との連携が有効です。

在宅勤務制度について社労士に相談する

社労士を探す際には、全国6,000以上の事務所(全国の依頼可能な社労士の20%)の社労士が登録する、中小企業福祉事業団の「社労士ナビ」をご活用ください。

この企業と社労士をつなぐ日本最大級のポータルサイトでは、地域や得意分野などを指定して社労士を探せるので、自社のニーズに合った社労士が簡単に見つかります。

初回相談が無料の社労士も多いため、事務所のスタンスや人柄をしっかり見極めた上で依頼しましょう。

執筆者

中小企業福祉事業団 編集部

 
日本最大級の民間社労士団体として、社労士を介して中小企業を支援する活動を行っています。本サイト「社労士ナビ」は、課題を抱える中小企業が、課題を解決できる社労士を探して、巡り合えるように構築しました。「社労士ナビ」が中小企業の人事・労務課題を解決する一助になれば幸いです。

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